概要
以下は、サイド・ヘッドロックについて説明する。
ロックアップ(カラー・アンド・エルボー)の体勢から繰り出すことができ、派生技・連絡技・返し技も数多く存在するため、プロレスにおいては基本技の一つとされている。極まった場合こめかみ、あるいは頚部が圧迫され激痛を伴う。
第二次世界大戦前のプロレスではエド・ルイスらがフィニッシュ・ホールドとして使用していた。ルイスの弟子であるルー・テーズがフィニッシュ・ホールドとして愛用していたバックドロップは、相手にヘッドロックをかけさせた状態から相手の背後へ回り込み反り投げるものであった。ヘッドロックを仕掛ければ相手も同じ技で応戦したがるため、テーズ自身もバックドロップの布石としてのこの技の仕掛けを研究していたという逸話が伝えられている。
しかし、1970年代以降は試合序盤での基本技、またはつなぎ技として使われることが多くなり、フィニッシュ・ホールドとして使われることは少なくなっていった。時々全日本プロレスで、小橋建太が渕正信をヘッドロック・ホールドでそのままピンフォールを奪ったり(1994年)、秋山準が志賀賢太郎からヘッドロックでギブアップを取ったこと(2000年)があった。
また、総合格闘技においても時折使用される。戦極 〜第三陣〜において吉田秀彦はモーリス・スミスに対し袈裟固からのグラウンドヘッドロックでタップアウトを奪った。吉田が経営している吉田道場の門下生で同じく総合格闘家の中村和裕が語るところによれば、吉田のヘッドロックは極める部位や体重移動などに彼独自のコツがあり、無理に堪えればそのまま絞め落とされる可能性もあるという。
その他の種類
サイド式以外のヘッドロックには以下のものがある。
グラウンド・ヘッドロック
グラウンド上で横に倒れた体勢でサイド・ヘッドロックを仕掛けるもの。
フロント・ヘッドロック
がぶり状態からヘッドロックを仕掛けるもの。立った状態でかける時と座った状態でかける時がある。 この体勢からネックブリーカーに移行するパターンもある。
類似技に喉あるいは頸動脈を絞めるフロント・スリーパー・ホールド(フロント・ネックロック、フロント・チョーク)や、首関節を攻撃するフロント・ネックチャンスリー(フロント・ネックロックとも)がある。
ブルドッギング・ヘッドロック
単にブルドッグともいう。相手の頭をヘッドロックしたままリングを走り、ジャンプして倒れこみ相手の顔面を地面に叩きつける。
この場合のブルドッグは犬種のことではなく、動詞のBulldog(牛や鹿の角を掴みねじり倒す)から由来している。誤った表記ではあるが日本ではブルドッキングという名称が使われることもある。
カウボーイが牛を捕える動作をプロレスに応用した技として、カウボーイ・ボブ・エリスが考案して日本で初公開する。その後もブラックジャック・ランザ、ボビー・ダンカン、スコット・ケーシーなどカウボーイ・ギミックの選手が使用した。日本人ではラッシャー木村、越中詩郎、中西学などがその使い手である。また菊タローはこの技を仕掛けようとするものの、ジャンプしたときに相手の頭がすっぽ抜けてしまい、一人で尻餅をついて痛がるというムーブをお約束としている。
相手をヘッドロックせず髪の毛や後頭部を掴んで顔面から叩きつけるとワンハンド・ブルドッグ、もしくは日本ではフェイスクラッシャー(顔面砕き)とも呼ばれる。クリス・ジェリコやジョン・シナ、武藤敬司などが主な使い手である。
連絡技
スタンディングで相手をヘッドロックの体勢に捕らたとしても、完全に相手を制圧した体勢ではないため、フライング・メイヤーなどの投げ技に移行する場合も多い。初代タイガーマスクは相手をヘッドロックに捕らえた体勢からフックを解いて自分の体を錐揉み状に回転させて後方へ移動し、最後は相手をカニ挟みで倒すタイガー・スピンという技を得意としていた。
類似技
スリーパーホールド(裸絞) - 相手の背面からの首締め。その名の通り「相手を眠らせる」と言う意の技。
フェイスロック - 相手の背面から顔面の輪郭を覆う様にロックする。
チンロック - チンとは「顎(あご)」の意で顎と上頭部をフックし首を捻る技。上背とかなりの握力がないと使用は難しい。
返し技
ヘッドロックには多様な返し技が存在する。以下に一例をあげる。
ラテラル - バックドロップを狙う体勢から、座り込みながら相手の足を払い倒す。柔道の抱分の類似技。
強引に首を抜いてバックを取る
強引に首を抜きながら相手をロープに振る
ワンハンド・バックブリーカー