王子の必殺技は、キン肉バスター、キン肉ドライバー、超人絞殺刑と数かずあるが、ボクの好きなのはそのどれでもない
…ボクが王子の技の中で一番のお気に入りは、地味だが決まった瞬間に描かれる曲線が美しい
バックドロップだーっ!!
概要
20世紀最高と讃えられるプロレスラー、「鉄人」ことルー・テーズ。
彼は自ら編み出したの必殺技について、こう語ったとされる。
『バックドロップはヘソで投げる』
つまり…相手を後ろから抱え込みヘソを支点にしてブリッジし、相手を後頭部から叩きつける!
当時、それは革命的な恐るべき技であった…
相手は背中から肩口、首、後頭部にかけてダメージを受けることになる。
別名「岩石落とし」。
歴史の古い技であるため、数多くのレスラーがそれぞれにアレンジを加えている。上記の基本形とは異なる体勢になることもある。
例
- 捻り式
- 横抱きの状態から瞬発力を利かせて反り投げる。「サイトー・スープレックス」とも。
- 抱え式
- 相手の脚を抱えてブリッジをあまり利かせず投げる。上背の大きなレスラーが好む。
- 雪崩式
- トップロープに相手を座らせた状態から放つ、非常に落差の大きいバックドロップ。
開発者:鶴見五郎
- バックドロップホールド
- バックドロップで投げた後、ブリッジの姿勢を崩さずそのままフォールに移行する。
因みに和名の「岩石落とし」だが、かつてはブロックバスターの和名であった。
代表的な使い手
ルー・テーズの他にジャンボ鶴田・渕正信・川田利明・アントニオ猪木・後藤達俊・永田裕志・蝶野正洋にスティーブ・ウィリアムスなどが挙げられる。
ルー・テーズをトレーナーとする蝶野も大一番で使用する。対GHC戦にて小橋建太へ対し危険な角度のバックドロップを三連発で見舞った。
また猪木が対ウィレム・ルスカ戦で放ったバックドロップ三連発も有名。ちなみに蝶野や猪木のバックドロップはゲームでは低空バックドロップと言われることもある。ただしテーズ式は低空高速式が基本で、鶴田も当初は猪木らのように低く素早く投げる低空式だった。また、渕もこの低空高速式である。
ジャーマンスープレックスとの違い
プロレスに詳しくない人が見ると、どっちがどっちか分からないバックドロップとジャーマンスープレックス。大きな違いは、アマレスのグレコローマンスタイルとフリースタイルの違いに起因する。
グレコローマンスタイルでは、腰から下に対しての攻撃がルールで禁じられているため、相手を抱え込むときに、できるだけ胸に近い位置に手を回すことになる。ただし、真後ろから相手の胸に手を回して抱え込むと、投げたときに自分の肩が先にマットにつく(フォールされる)恐れがある。
そこで、相手の脇の下に頭をねじ込んで胸に近い位置で抱え込み、相手の重心を自分の肩に乗せるような形で投げることになる。
バックドロップは、グレコローマンスタイルの技であり、こちらの形の投げ方である。自分の軸と、相手の軸が少しずれている。
対して、フリースタイルでは、腰から下に攻撃しても良いので、相手の腰回り(ベルトまわり)に手を回して、相手の重心を自分の胸から腹の上にのせるようにして投げることになる。
ジャーマンスープレックスは、フリースタイルの技であり、こちらの形の投げ方である。バックドロップと違い、自分の軸と相手の軸が一直線上に並ぶ。
もっとも、これは体重別にクラス分けされ、体格の近いもの同士が戦うアマレスでの話である。
プロレスの場合や、絵にする場合は体格差等を考慮するため、バックドロップとジャーマンスープレックスの違いは、手を回した位置の違いよりも両者の重心や軸の位置の違いに依存することになる。
創作のネタとしては表現に限界がある2D格ゲーではバックドロップが、リングの奥行きを再現出来る3D格ゲーではジャーマンスープレックスが投げ技として採用されると考えれば良い。
危険性
弾力性の強いリング上であってもジャーマンスープレックスと同様、受け身を取り損なえば大ケガを負う危険な大技である。ましてや弾力性の低いコンクリート・土・木などの上で行えばたとえ玄人であってもよほどの受け身の達人でない限り生死にかかわる大けがを負う可能性が高い。絶対に素人がプロレスごっこで使用してはならない。
主な危険な実例として
・元レスラーで現石川県知事の馳浩(はせひろし)が新日本プロレスに所属していた頃、後藤達俊にこの技をかけられて受け身を取り損ない、試合後に一時心肺停止・臨死体験をしたことがある。ちなみに馳はスコット・スタイナーのSSDも食らったことがある。
現在でもその後遺症により時折、目の焦点が定まらなくなることがあるという。この事件を契機に新日では、常設リングドクターの設置や所属レスラーの定期検診が定着した。
・また、2009年に三沢光晴が死亡した原因でもある(対戦相手の齋藤彰俊のバックドロップを受けてまもなく亡くなった)。
しつこいようですが…絶対に良い子は真似しないで下さい
バックドロップはヘソで投げる
バックドロップの考案者ルー・テーズが己の必殺技の秘訣として伝えたとされる名言。
しかし「ヘソで投げろ」と言われてもプロレスをしたことがない一般人はどうすればいいかわからない(※しつこいようですが本当に投げちゃダメです)。
そこで晩年のテーズが来日した際、とある日本人ライターがどうやって人をヘソで投げるのか説明を求めた所、テーズはこう答えた。
「何それ?面白いね」(爆笑)
と答えたという。
どうやらこの話、日本でしか知られていない作り話らしい。
本来テーズは「投げるときに、常に支点・力点・作用点を意識するように、と教えている」と言う。テーズに師事した多くのプロレスラーも凡そそう教わったと語っていて、ヘソによる投げ方なんて冗談でも指導されていない。
テーズ自身が知らなかった通り、このセリフを日本以外で話しても「どういう意味?」と全く通じない。下手に言葉の壁に遮られたら「ヘソという名のスープレックスマシーンがいるのか」と勘違いされるだろう。
ただしテーズ自身はこの表現を後になってから大変気にいったようで、鶴田や渕にバックドロップを直接指導した際「ブリッジを利かせて、ヘソで小さく円を描くように投げるのがコツだ」とアドバイスしている。
また、渕は海外遠征から帰国した頃は長州やマサのような捻り式バックドロップをジャンプしながら放っていたものを「ジャンピングバックドロップ」という名称で使用していたが、テーズから「バックドロップに必要なのは叩きつけるスピード、高さは関係ない」とアドバイスされた事も、ブリッジを利かせて低空で素早く叩きつける方式に変えた一因になったという。実際テーズは捻り式について『あんなのバックドロップじゃない』とかなり否定的である。
アトミック・ドロップ
別名「尾てい骨割り」。
相手のバックを取って大きく持ち上げ、自分の膝を立てて、そこに臀部を打ち付ける技。
相手の選手を抱え上げるまでの動作が抱え式バックドロップと一緒なので、「バックドロップと見せかけて~」と言う繰り出し方も多い(逆パターンもあり)。
この技の名手だった坂口は相手選手の体重によって、技の切り替えを行っていた。
ちなみに、相手と向かい合った状態でこの技を使った場合は「リバース・アトミック・ドロップ」または「マンハッタン・ドロップ」という名前になる。
こちらも同様に尾てい骨にダメージを与えるが、角度を調整すれば股間への急所攻撃にもなる。
もうひとつ
ライブの際、会場後方の壁に貼り付けるバンドの旗をバックドロップということもある。
関連イラスト
関連タグ
裏投げ…柔道家のショータ・チョチョシビリが猪木をKOした技で馳や(ヒールターン前の)飯塚高史の得意技。柔道の裏投げは類似技だが、反り返りながら投げてはいけないところが違う。