概要
室町時代前後に全盛を誇った巨大武器の一種大太刀を扱いやすくするため、刀身の後部を柄としたもの、あるいは柄を長くとったもの。外見的には鍔が武器全体のほぼ中央に来るのが特徴である。形状からは竿状武器とも捉えられるが、その成り立ちと用法から考えれば刀剣類となる。
運用
この武器は長大な大太刀を振るい易いよう、刀身の中程まで革紐などを巻きつけた中巻野太刀から発展し、その後柄そのものを長く造るようになり、現在の形に落ち着いたとされる。
刃の部分を長くとり柄の長さが足りなくなったものは、薙刀と同様の形態で柄が継ぎ足されることもある。このためすべての長巻に長い茎が存在するわけではない。
柄が長くなるほど、形状や運用は槍である薙刀と似通い、逆に薙刀の刀身を長く柄を短縮したタイプも存在している。
薙刀との違い
- 本来長い刀身であったものを柄とするため、茎の部分が長くそれに伴い重い。
- 薙刀は切っ先が極端に太くなる事があるが、長巻はそれが緩やかか、ほぼ無い。
などが挙げられる。
長い茎は重く、刺突や携帯に向かず、体力と十分な修練を必要とするものの、カウンターウェイトとなって重心を柄側に近づけるため、通常の大太刀よりも振るい易くなる。
また槍や薙刀と比べて、柄の中により長く鋼鉄が挿入されていることになるので、しなりが小さく、打ち下ろしや薙ぎ払いの威力が増し、柄による防御時に柄が破損しにくくなるという利点が存在する。
利用の衰退
しかしそもそも集団戦において運用しやすい槍や火縄銃ほどメジャーな存在ではなかったことに加え、江戸時代には「長すぎる刀を持ったらダメ」と禁止令が出され、当時現存していた長大な長巻の多数は「長巻直し」と呼ばれる刀に造り直されてしまった。
一方で刀身・柄ともに短めの長巻は諸藩の有事用として江戸期にも生産されており、また初めから「長巻直し」風に造られた日本刀( 長巻直し造り )も存在している。
研究上の問題
上記の経緯よりこの兵器は本来の形で現存しているものが少なく、他の種類の日本刀ほど正確な分類・研究が進んでいないこともあり、銃刀法、および銃砲刀剣類登録上の分類として「長巻」は規定されておらず、すべてが「なぎなた」扱いとなっている。
