-それは、端末世界に蔓延る、顕在化せし邪なる影人形-
概要
テキストの様式刷新やペンデュラムゾーンの新設など、様々な新要素を引っ提げて開始した第九期、その記念すべき通常ブースターパック第一弾「THE DUELIST ADVENT」から収録された。
「シャドール」という名前は「シャドー(Shadow:影)」+「ドール(Doll:人形)」から。
融合体「エルシャドール」の「エル(el)」はヘブライ語の「神」を意味することから、「エル・シャダイ(El Shaddai:全能の神)」とも掛けていると言われている。
「影依」の漢字表記をあてられることも。
「依」という文字には、神霊の出現を媒体する「依代」という意味が込められている。人形は中でも、「形代」と呼ばれ人間の霊を宿す依代とされる場合がある。
他にも「堕ちる」「影」などの用語が、カテゴリに関するカード名に多用される。
融合を主戦術とするテーマで、各モンスターが個々で強力な効果を持つ強カテゴリ。
登場当初は、その性能もさることながら当時の環境に対して強烈なメタを張ることができた為、一時期環境を独占したこともあった。
詳細
大まかに分けて、メインデッキに搭載され融合素材としての役割を持つ「シャド-ル」効果モンスターと、それらを素材としてエクストラデッキより降臨する「エルシャドール」効果モンスターに大別される。
また、「CROSSOVER SOULS」より新たに二体のPモンスターが登場するが、通常のシャドールモンスターとは毛色が異なっている。
シャドール
メインデッキから搭載でき、融合素材としての役割を持つモンスター達。
全てが闇属性・魔法使い族の「リバースモンスター」で、レベル5の「シャドール・ビースト」を除き全員が下級(レベル4以下)。
- 「(カード名)」の①②の効果は1ターンに1度、どちらか1つしか発動できない。
- ①:このカードがリバースした場合に発動できる。(固有の効果)する。
- ②:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。(固有の効果)する。
という3つの効果を共通して持っている。
一部を除き「シャドール」カードのサーチ・展開を補助する効果を持っているため、プレイングにもよるが、融合しながら手札が増えるという、程度の差こそあれまるで意味がわからんぞ!な動きを可能としている。
主に利用されるのは②の効果。だが、この「効果で墓地へ送られた場合」と言うのがクセモノで、「場合の任意」と呼ばれる「無効にされない限り確実に発動できる」類の効果である上に、融合テーマな事から融合素材になっても発動できるのである。
早い話「手札を増やすために融合する」というプレイングが起こり得るとでも言えばその強さは大体お分かり頂けるだろうか。
エルシャドール
カテゴリーの核となる融合モンスター。
- 「シャドール」モンスター+○属性モンスター
- このカードは融合召喚によってのみエクストラデッキから特殊召喚できる。
というルール効果と、
- このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の「シャドール」魔法・罠1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。
という「場合の任意」効果を共通して持っている。
シャドール以外の融合素材が属性指定であるため、属性融合HERO同様融合召喚が容易い。
さらに、前述の通りメインデッキの「シャドール」モンスターは融合素材となることでアドバンテージを稼げる上、融合体自身も墓地へ送られた場合にタイミングを逃さず墓地の専用サポートを回収できる。当然各種専用融合魔法も全て回収対象内である。つまりアフターケアもばっちり。
融合体の優秀さと、その素材指定の緩さから、一部の下級シャドールと各種「融合」魔法と共に、いわゆる「出張要員」になることもある。
特に出張役として有名なのは地属性エルシャドール、「エルシャドール・シェキナーガ」辺りであろうか。
出張させる素材は「ドラゴン(リバースでバウンス、墓地送りで魔法・罠除去)」か「ビースト(リバースで手札交換、墓地送りで1ドロー)」が多いようだ。それ以外は効果がカテゴリ内で完結していることもあり、どちらかというと「シャドールデッキに○○が出張」という体を様してくる。
各モンスターの詳細は後述。
「シャドール」魔法・罠
「影依」という漢字を筆頭に、「シャドール」のルビを持つ専用サポート魔法・罠。
特に専用融合魔法「影依融合(シャドール・フュージョン)」が色々ヤバい。何がヤバいかというと、条件を満たすことで「デッキから融合」ができる。そしてその条件とは「相手フィールド上にエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいること」。
「シャドール」出現当時はゼアルが終了したばかり。つまりエクシーズ全盛期。それでなくともエクストラデッキのモンスターは強力かつ汎用性の高い物が多く、それら全てが「シャドール」のデッキ融合の格好の獲物となり、アドバンテージの暴力と二体の融合モンスターの前に沈んでいった訳である(ただ、全盛期でもこのカテゴリーが一強に居座り続けるほど無双していたわけではなく、ごくたまにスピリットや帝などのアドバンス召喚をこなすカテゴリーが、エクストラメタをすり抜け、対抗することもあった。)。
他にも、安価で使い勝手の良いもう一種類の専用速攻融合魔法「神の現し身との接触(エルシャドール・フュージョン)」や、利便性の高い効果を備える永続罠「影依の原核(シャドールーツ)」などが存在する。
また、「シャドール」魔法・罠ではない専用サポートとして、「墜ち影の蠢き」がある。
2015年10月時点では、墜ち影の蠢きが準制限、神の現し身との接触が制限カードとなっている。
いかにも強力なデッキ融合ができる「影依融合」には制限がかかっていないため、デッキ融合はこのテーマの特徴の一つとされているようである。
(後(2016年)に堕ち影の蠢きは、制限解除。)
イェシャドール、オルシャドール
新たに登場する「シャドール」Pモンスター。別のカテゴリ「セフィラ」にも属している。
しかしその効果・容姿ともに完全に他の「シャドール」とは毛色が違っているため、通常の構築には入らない。
「墓地へ送られた場合に発動する」と効果自体は近いのだが、「セフィラ」の存在を必要とするあたり完全に別物と考えてもよさそうである。
また、「シャドール」と「セフィラ」はストーリー上敵対している可能性が高いことも、別物説に拍車をかけている。
「エルシャドール」融合モンスター詳細
神を除いた6属性をそれぞれ指定した融合モンスターがいるが、光属性のネフィリムが2018年まで禁止カードになっている。
エルシャドール・ネフィリム
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光属性エルシャドール。天使族。
また、現在判明している「シャドール」の首魁であり、全ての影依人形の母とされている。
日本語名の由来は、神と人との合いの仔たる巨人「ネフィリム(Nephilim)」。
特殊召喚成功時に「シャドール」カード1枚をデッキから墓地に送る効果と、特殊召喚されたモンスターとの戦闘時にダメージ計算を介さずに破壊する効果を持つ。
自身が高打点&実質的な戦闘破壊耐性、闇属性(=シャドール)が召喚条件になるカオスや、ネフィリムが蘇生対象&融合素材にもなるセフィロンなどのように、組ませる上でメリットになるモンスターも多く、特殊召喚成功時の効果でシャドール同士を融合させた時とほぼ同じアドバンテージを稼げるなどの要因から2014年10月制限カードに、2015年4月には禁止カードとなった関係でシャドール全体が大きくパワーダウンし、少なくとも環境トップから退いたとされている。ついでに超融合で光属性が吸えるといううまみも消失。
光属性はデッキを問わず多く使用されているためパワーダウンっぷりが大きく、使い手からは制限復帰を望まれているが、禁止後に出てきた光属性の中にかの【クラウンブレード】でおなじみの「Emトリック・クラウン」がいるため、復帰は難しいと考えていた人も多かった。
だが、2018年4月に制限カードとなる。
代表的な融合素材とされる光属性は防御カードにもなる「超電磁タートル」。墓地落としをすることを主目的とするなら「エクリプス・ワイバーン」なども相性が良い他、腐った「エフェクト・ヴェーラー」も素材に出来る。
エルシャドール・ミドラーシュ
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闇属性エルシャドール。魔法使い族。
ウィンダに酷似した外見を持ち、さらに「Winda」の英語名を持つ謎多きモンスター。
日本語名「ミドラーシュ」も「捜し求める者(Midrash)」というヘブライ語に由来しており、意味深。
第九期ストーリーのキーパーソンでもある。謎めいたキャラクターとエグい効果で人気も高い。
相手の効果で破壊されず、さらに互いの特殊召喚回数を制限する効果を持つ。ミドラーシュの存在から邪帝ガイウスやダーク・アームド・ドラゴンといったメインデッキに入る上級モンスターの存在が見直されたともいえる。
メインデッキに入るシャドール2体で融合できるので、2体分の墓地効果を同時に発動できるのも利点。
2014年10月でネフィリムとともに制限カードとなったが、半年後にネフィリムの禁止化と主要パーツの規制を受けて制限解除となっている。デッキによっては「ネフィリム&ミドラーシュが制限」の時代よりも相手にするのが厳しい。
弱点があるとすれば、上級モンスターとしては打点が大人しいこと。
エルシャドール・シェキナーガ
地属性エルシャドール。機械族。
上述の「ネフィリム」が「アポクリフォート・キラー」に囚われている、あるいは支配下に置いているともとれる不気味な姿を持つ。
日本語名「シェキナーガ」は「シェキナ(Shekihinah)」と「ナーガ」の造語と思われる。「シェキナ」は神の女性的顕現であり、またヘブライ語で「住処・休息所」の意味を持つ。また、インド神話の蛇神族「ナーガ」は神の従者・乗り物としても知られる。
特殊召喚されたモンスターの効果発動を無効にして破壊し、手札の「シャドール」を墓地に送る効果を持つ。「効果」で墓地に送るため、シャドールの墓地で発動する効果の発動もすることができる。なお、効果発動をするためのコストは無いが、発動条件として手札にシャドールが必要な事には注意。
代表的な融合素材とされるカードは「マスマティシャン」「ペロペロケルペロス」など。
別の融合テーマのファーニマルと組ませたり、レベル10地属性機械族であることから「転回操車」を軸にしたランク10デッキ「列車」と合わせて利用される。
エルシャドール・エグリスタ
炎属性エルシャドール。岩石族
燃え盛る岩石の巨人。その姿はかのクリスタさんに酷似している。というかかなりの確率で本人。もう休ませてやれよ。
「”神”の力で炎の力を吸収したシャドール」であるらしい。
日本語名「エグリスタ」は「エグリゴリ」+「クリスタ」だろう。
「エグリゴリ(あるいは「グリゴリ:Grigori」)」とは堕天使の一団の総称で、「見張る者」の意味。また、旧約神話上において、人の女と交わり「ネフィリム」を生み出した存在でもある。「クリスタ」は言わずもがな我らが「ジェムナイト・クリスタ」さんその人のことだろう。だから休ま(ry
地味な特徴だが、エルシャドールの中では黒一点…といえるかもしれない。紅いけど。
「チェーンに乗らない特殊召喚(各種エクストラモンスターや特殊召喚モンスター)」を無効にして破壊し、手札の「シャドール」を墓地に送る効果を持つ。効果の仕様はシェキナーガと同じ。
実質的にシンクロとエクシーズを封じれるミドラーシュに無い利点として、ペンデュラム召喚を無効にできる点が強みとなる。
代表的な融合素材とされるカードは、汎用的なものなら「ファイヤー・ハンド」「溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム」などが優秀。
カテゴリで完結しやすい炎属性だと汎用的な有用な融合素材は少ないと言う事情もあり、他カテゴリのエース級の効果を持っておきながらサブ扱いになることも多い。
現在では「ヴォルカニック」との混合デッキがエグリスタ軸のシャドールの代表的なものとなる。
エルシャドール・ウェンディゴ
風属性エルシャドール。サイキック族。
「精霊獣騎ペトルフィン」が影依人形化した姿のモンスター。彼女の影がシャドールとして取り込まれる様は「霊獣の奇襲」というカードのイラストに見て取れる。
日本語名「ウェンディゴ」は「ウェンディゴ(Wendigo)」であるが、外見からして「ウェン(霊獣使いウェン)」がダブルミーニングされていると思われる。
「ウェンディゴ(あるいはウィンディゴ:Windigo)」はネイティブアメリカンに伝わる精霊。この精霊自体は風とは関係ないが、クトゥルフ神話において「ウェンディゴ」は風の神格「イタクァ」の眷属とされることがあるため、そこからモチーフにしたと思われる。
自身を含むモンスターを対象に、特殊召喚されたモンスターに対する戦闘破壊耐性を付加する効果を持つが、守備的な効果である上に攻撃力が低いので壁にしかならない。他のエルシャドールと比べるとかなり性能は低いため、超融合要員としても採用が見送られるのが大半である。
そんな彼女の採用理由はどちらかといえば特殊な使い方で使われることが多い。効果の仕様が「対象にとって発動する」までが条件であるため、効果そのものは無効になっていても「青き眼の乙女」や「聖刻龍-ドラゴンヌート」の能動的な効果発動ができると言ったものは有名。
レベルが6なので、2チューナーのファルコンと合わせれば強力な効果が多いレベル8シンクロを作れるのも利点にはなる。
代表的な融合素材とされるカードは素材調達も兼ねた「幻獣機オライオン」、ウェンディゴを蘇生→融合を回収しながらドラゴアセンションを作れる「デブリ・ドラゴン」か。
エルシャドール・アノマリリス
水属性エルシャドール。悪魔族。
「インフェルノイド・リリス」が「ネフィリム」を取り込んだ、またはその逆の状態ともいえる存在。リリスの属性は炎だが、理由は「遡洸する煉獄」のイラストの状況からそうなったものとみられる。
日本語名「アノマリリス」は例外・異例・矛盾などを意味する「アノマリー(anomaly)」と融合元の「リリス」を合わせたものとされている。
魔法・罠の効果による手札と墓地からの特殊召喚を封じる効果を持つ。死者蘇生といった汎用カードを封じる他、儀式召喚…というか属性も含めて「影霊衣」や「リチュア」のメタカードとしての性能が高い。この2種は水属性が主体のテーマであるため、超融合でも吸える。
代表的な融合素材とされるカードは、汎用的なものなら「アイス・ハンド」、エクストラデッキのモンスターになるが「深淵に潜む者」など。とはいえ普通に出すよりは、真価を発揮するのは上記儀式テーマを相手にした場合の超融合だろう。
デッキの動きと環境の変遷
何度も述べたように、下級「シャドール」をリバース・融合することでアドバンテージを取りつつ、「エルシャドール」融合モンスターを出して制圧するのが基本の動きとなる。
「エルシャドール」が属性融合ということで「超融合」を採用し相手モンスターを吸収することもあるが、原則として自デッキ内で素材が完結するように構築される。
軸にする「エルシャドール」によって抱き合わせるモンスターが割合大きく変化し、それに応じて構築・戦術も変わってくる。が、やはり見ての通り特殊召喚と墓地利用に依存するデッキであるため、特殊召喚メタと除外戦術が刺さる。でも逆に自分からそれらのメタを採用することもある。
最も有名なのはやはり「M・HERO ダーク・ロウ」だろう。サーチを除外し相手だけマクロコスモスという色々酷いこのヒーローは、闇属性モンスターに「マスク・チェンジ・セカンド」を使うだけでポンと出てくるのである。そして下級「シャドール」は全て闇属性。後はお察し下さい。
その単純かつ強力なカテゴリーコンセプトと、それでいて幅広く対応の難しい戦術から登場後すぐに環境の覇権を担った。
しかし、「ミドラーシュ」「ネフィリム」「墜ち影」という三枚のカードが制限送りにされたことと、よりエクストラメタに特化している上、自身はエクストラをコストにしか使わない「影霊衣」
アドバンス召喚を軸とし、メインから「スキドレ虚無」という厭らしいメタカードを採用する「クリフォート」
という二大カテゴリーの台頭によりその地位は失墜。ストーリー上設定が何と無く似ている「ヴェルズ」と共に「ガチと中堅の壁」に一時期収まる。
が、それも束の間。さすがに暴れ過ぎた「影霊衣」が規制され安定度が落ちたことや、新たなパートナーを手に入れたことから復権した。
しかし2015年4月において「ネフィリム」が禁止カード、「神の写し身との接触」が制限カードとなり、「マスマティシャン」や「クリバンデット」といった墓地肥しのお供も同時に制限カードとなった。
代わりに「ミドラーシュ」が制限解除となったが、ネフィリムの禁止化によるパワーダウンを補えきれないどころか、自然とシャドールメタができる「星輝士 セイクリッド・ダイヤ」「応戦するG」の存在から、環境トップからは退いた。
その後は「堕ち影の蠢き」や「クリバンデット」のシャドール関連のカードが緩和、セイクリッド・ダイヤの実質的な環境からの消滅などの追い風と、「旧神ノーデン」の禁止化による超融合の弱体化といった向かい風を同時に受けつつ、「ガチと中堅の壁」の立ち位置を維持していく事となる。
背景
世界の深淵には、光を吸収して「影(シャドール)」を生み出す「影依の原核」が存在している。
ネフィリムは顕在化した影を「影糸」で操り、その勢力を拡大していくのだった・・・。
第九期の軸を成す「端末世界」の後日談ストーリーにおける、「目に見える」諸悪の根源。未だ目的は不明ながら、どうやらネフィリムは過去のモンスターを模った人形を作り、それによって勢力を拡大しているようだ。
「クリフォート」・「インフェルノイド」の覚醒を促すなど、世界に対して敵対的にも思えるが、それらが「ミドラーシュ」の独断である可能性も捨てきれず、謎が多い。