演:増井湖々
「お願い! ホムガーを放っておいて!」
「あなたは何もわかっていない!」
「人間は怪獣をデータでしか見ていない! 怪獣の声を聞いて!」
概要
何故かユウマにだけ見える謎の女性。
彼がアークに変身する事実を察知している。
正体は不明だが、何故かホムガーへの攻撃を停止させようとする。
劇中ではっきりとした正体は明かされてないが、ユウマの知るホムガー伝承には「精霊と共に現れる」との記載があり、その通りならば彼女の正体は精霊。
ホムガーへの攻撃を静止しようとしたのも、出産のために命を守ろうとしていたからである。
しかし、ホムガーと共生する存在故にか、ホムガー以外をほぼ切り捨てているような価値観に支配されており、ホムガーの出産によって生じるあらゆる被害を無視する言動は良くて純粋、悪くて妄執の域に達している。
かつては人間と意思疎通が行えていたようだが、現在は昔のように声を聴くのが難しくなってしまったようである。
また、ウルトラマンに関する知識がある点から、もしかすると過去に別個体のホムガーの出産にて他のウルトラマンと出会い、助産して貰った可能性なども考えられるが詳細は不明。
最終的にルーナアーマーの力で出産は成功し、産まれたホムガーの子供と共に消滅していった(その際、顔にホムガーのものに近い縞模様が浮かび上がっていた)。
視聴者からの反応・評価
彼女の評価に対しては賛否両論で、一部の視聴者の中にはそんな彼女の高圧的にも見える態度に対し、「(命を繋ぐ為の繁殖とであっても)ホムガーはほぼ全ての生命に害しか与えないのに『共存させてくれ』なんて身勝手すぎる」と理不尽な不満を抱いた人も少なくない。
実際、ホムガーが周囲を高温にして爆発なんてしてしまえば、多数の死者が出てしまうのは当然の流れであり、「それすらも配慮しない杏樹にも落ち度があるんじゃないか?」と唱える視聴者も一定数いる。
そもそも、杏樹は最初の方でユウマが認識している事実に気づいているにも関わらず、ホムガーが出てきて変身して戦おうとしてた彼に「(ホムガーが)妊娠している」事実すらすぐに説明していない。
もしも、最初にその事実を説明しておけばユウマ=アークは無駄にホムガーを傷付けもしなかった上、ユーの調査内容に合わせて「ホムガーが妊娠しているかもしれない」と伝えられれば、SKIPメンバーや防衛隊とで情報共有し避難区域の選定とかスムーズに出来て手間が省けたはずである。
現に『ウルトラマンZ』第11話において、主人公がとある怪獣の親子と向き合った際、怪獣の討伐に疑問を抱いたあまり、仲間を危険に晒してしまった事例があり、「(アレやコレ等はともかく)幾ら悪意がなかったとしても、人間を含む地球上の大多数の生命に対し大規模な危害を加える可能性のある怪獣を、安易に殺さないで生かす決断は本当に正しいのか?」と疑問を抱いた視聴者も少なからずいた事実も、今回の一件に賛否が分かれる一因にもなっている(劇中でも石堂シュウが同様の指摘をしていた)。
過去の作品でも、ホムガー同様に生物として普遍的な行為によって、地球滅亡を誘発させる可能性がある怪獣も現れており、被害の甚大さによっては『存在そのものが罪』と見なして非情な決断も必要になる。
一方で、「これが杏樹なりの精一杯のコミュニケーションなんじゃないか」と解釈した人もいる(要するに「単に話が下手」)。
もし杏樹が人間と円滑に話ができるなら、とっくにホムガーと人間は上手く共存できていたはずであり、彼女が高圧的になったのも、本人が伝えた通り「誰も話を聞いてくれる人がいなくなった(本作の第2話の様に、大自然に耳を傾ける人間がいなくなった)」現状から、杏樹はそんな人間達に失望してしまったからこそ、強い口調で訴える以外に出来なくなってしまったなのかもしれない(しかし、一方で彼女のその態度こそが人間に自身の声が届かなくなった一因 とも考えられるが)。
更には上記の「他の生物にとって害になる」との危惧も、あくまで人間の尺度によるところが大きく、人類以外の生物の事情が考慮されているとは言い難い。他の生物の有益有害を決めているのも「『人類にとって有益か否かとした一方的な価値観』に過ぎない」との考えもある。
しかし、再三の通りホムガーの繁殖によって生じる実害は極めて甚大かつ、それによる影響は人間以外の動物も等しく被る蓋然性が高い以上、上記の「人類にとって(省略)」発言を素直に受け入れても良いかは幾分か疑問符が浮かぶ。
杏樹がユウマに対し「ウルトラマンの力は戦うためだけにあるの?」と呼び掛けはしたが、偉大なる先達が発した「ウルトラマンは神ではない」の言葉にもある通り、ウルトラマンの力を持っても全ての命を等しく守れない現実もままある以上、杏樹の言動は「現実を直視していない我が儘」 と受け取られても仕方がない面も少なからずある。
そしてユウマは皮肉にも、今回の一件で杏樹の影響を真に受けてしまったのか、後に出現したとあるロボット怪獣の声を聞きつつ分かり合おうとした結果シュウと衝突し、彼に失言までこぼしてしまう結果となってしまった(尚、杏樹は何らかの理由でユウマの名前を知っていた様だが、そもそもユウマがこれ以前に『怪獣によって両親を殺されている事実』については気付いてくれていたのだろうか…?)
尚、監督の越知靖は自身のXにて “賛否両論な結末である” と語っているので「あえて彼女をそう描いたのでは?」と見る意見があれば、下手に杏樹の詳細を明言した結果、ファンチと化した過激派が増井女史に対しかつてのコイツのように、過度な叩きを実行する未来が強いため「彼女を守るために玉虫色の返答に留めたのでは?」との意見も。
いずれにせよ、今回はアークのおかげでホムガーも町の住民も両方が救われたものの、それでも「全ての怪獣が上手く人間と共存できるとは限らない」のも事実であり、ある意味ホムガーもまたそんな怪獣の1体とも評価できる。
関連タグ
アンノン:あわや開戦の危機的状況に陥るも、話し合いが成立し最悪の事態が避けられた好例。
ミトル:一方的に自分の主張を押し付け、周囲に甚大な被害を与えようとしたヒューマノイド繋がり。こちらは過ぎた善性を基因にした悪意のない悪意の体現者でもあり、自分達の所業を棚上げにジェノサイドを実行しようとした。また、彼女が登場したエピソードは『満月の応え』と同様に 「ウルトラマンの介入がない状態の地球人達だけで、罪のない怪獣に討伐以外の対応ができるのか?」 に通ずる思考実験となっている。
マウンテンピーナッツ:〈怪獣の生命尊厳〉を訴えながら、それ以外の生物を悉く軽視し場合によっては虐殺も辞さない『愛誤』を体現したエコテロリスト。
ホリイ・マサミ:『ウルトラマンティガ』に登場する男性隊員。同作第6話において、冒頭の杏樹の台詞(3番目)の様に、怪獣の声を聞こうと努力した……のだが、皮肉にもその怪獣は『自分の友達すらも犠牲にして生き残ろうとする習性』の持ち主である実態が判明。当然ながら当人は愕然となった(しかもホリイはその怪獣に恩師を殺されてしまっており、猶更だろう)。ある意味、杏樹の言動が批判される理由の1つとしては十分過ぎる事例である(尚、ホリイの同僚である女性隊員もまた杏樹と同様の発言をこぼし、ホリイと同様、前述の怪獣によって大切な人を亡くした女性の兄からの憤りを買われている)。
アマガイ・コノミ:『ウルトラマンメビウス』に登場する女性隊員。こちらは同作の11話において(誤って地球に飛来したものの)防衛隊の兵器によって虐殺される怪獣に同情したために、同僚の隊員から怒りを買われた(実際、その隊員は以前の戦いでその怪獣の同族によって仲間を殺されており、彼からすればコノミの発言は失言にしか聞こえなかっただろう)。ただし、その隊員に至ってもその怪獣に恨みを抱えるあまり、周辺の被害を省みない様な発言をしてしまっており、ブーメラン発言案件となっている。