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アイヌ語の編集履歴

2018-07-18 13:07:43 バージョン

アイヌ語

あいぬご

アイヌ民族の言語。かつては北海道や樺太、千島などで広く話されていたが、現在では日本語やロシア語などに取って代わられ消滅の危機に瀕している。

概要

アイヌ民族の言語。


方言差が大きいが、いわゆる共通語に相当するものが定められていない。初学者には日高地方あたりのアイヌ語が教えられることが多い。


北海道の地名にはアイヌ語由来の名称が多く、また北東北にもアイヌ語由来の地名が散見される。それより以南については、日本の地名には由来不明のものが多いため、語源をアイヌ語に結びつけられることがしばしばある(例えば、『富士山はアイヌ語の「フチ(火)」から来ている』『能登半島はアイヌ語の「ノット(岬)」から来ている』などと言われる)が根拠薄弱な決めつけが多く、アイヌ語の知識があれば間違いだと判断できる信用できない俗説がほとんどである(富士山の場合、火の神「アペフチカムイ」の「フチ」は「老婆」という意味である)。


また、北海道の地名の多くがアイヌ語由来だからといっても、その語源解説はでたらめであることがしばしばである(実は北海道の地名には、日本語由来かアイヌ語由来かよく分かっていないものも多いのだが、起源がよくわかっていない地名は、大抵はアイヌ語に結びつけられてしまう)。


名詞には日本語と似たものも多くあるが、その大半は明らかに日本語由来のもの(借用語)である(「ペコ(牛)」「シロカネ(銀)」〔アイヌ語には日本語の濁音に当たる発音がない〕など)。それ以外の「トチ(栃)」「カリンパ(桜の樹皮。桜と樺(カバ。古語で「かには」)は樹皮の用途が近い)」などは、どう関係しているのかよく分かっていない。


発音は全く似ていないというほどではないが、文法は全く異なるので、日本語と類縁関係があったとしても、非常に古い時期まで遡らないといけないと考えられている(言語学者の服部四郎が言語年代学を応用した推定によれば、もし類縁関係があったとしても、七千余年~一万余年の隔たりがあるとしている。これは比較言語学的手法での解析可能年数の限界に近い)。


発音

アイヌ語には、日本語の濁音に当たる発音や、中国語韓国語の有気音・無気音に相当する子音が無い。

その代わりと言っちゃ何だが、日本語や韓国語に無い二重母音が存在する。

音節末が子音で終わることも多い。その場合、「表記」の項目にあるような専用のカタカナを使う。


表記

アイヌ語は近代になるまで文字表記を持たなかったので、世の趨勢によりローマ字カタカナで表記されることになった。今はカタカナの方が一般に使用される。


カタカナ表記では、日本語にはほとんど(あるいはまったく)使われないカタカナがある。

カ行の「ㇰ」、サ行の「ㇱ・ㇲ・セ゚」、タ行の「ㇳ・ツ゚・ト゚」、

ナ行の「ㇴ」、ハ行の「ㇵ・ㇶ・ㇷ・ㇸ・ㇹ・ㇷ゚」、

マ行の「ㇺ」、ラ行の「ㇻ・ㇼ・ㇽ・ㇾ・ㇿ」。


「ㇰ」は音節末の-k、「ㇱ・ㇲ」は音節末の-sで、発音の状況によって書き分けられる。「セ゚」はかつて「チェ」や「ツェ」に相当する発音を表していたが、現在では用いられず「チェ」と表記される。タ行の「ㇳ」は音節末の-tを表す。「ツ゚・ト゚」はどちらも「トゥ」に相当する発音を表すが、現在では「トゥ」と表記される方が多くなっている。「ㇴ」はかつては音節末の-nを表わしていたが、現在では用いられず「ン」を用いる。「ㇵ・ㇶ・ㇷ・ㇸ・ㇹ」は樺太方言にある音節末の-hを表わし、前の母音aiueoによる音色の違いをそれぞれ反映するのを書き分ける。「ㇷ゚」は音節末の-p、「ㇺ」は音節末の-m、「ㇻ・ㇼ・ㇽ・ㇾ・ㇿ」は音節末の-rを表わし、前の母音aiueoによる音色の違いをそれぞれ反映するのを書き分ける。


文法

アイヌ語は人称変化が非常にやかましい言語である。

動詞に一人称・二人称・三人称があるほか、名詞にも一人称・二人称・三人称がある。

ややこしいことに、人称変化は語末変化だけではなく、語頭にも接頭辞を付ける(更にややこしいことに、接頭辞ではなく語末に接尾辞を付けるパターンもある)。

当然のごとく、単数形と複数形が存在する。

また、二人称複数形は相手を含むか含まないかで異なる形を取る。

一方で、時制変化はなく、格変化も語形変化ではなく後置詞を用いる形となっている。


語順は、日本語と同様の「SOV」形式を基本とする。


物体そのものを表す「一般名詞」と、物体が行動の舞台になっているときに使う「場所名詞」が存在する。(英語のhousehomeのようなものと理解すると分かりやすいかも。)


アイヌ語由来の単語

ラッコ:rakko、トナカイ:tunakay(トゥナカイ)、カムイコタン:kamuy kotan「神の村、神の住む所」、シシャモ:susam(スサム)(語源はsusu-ham「柳の葉」だという)、ルイベ:ruype(ルイペ)(語源はru-ipe「溶けた食べ物」、東北訛りで濁音になったもの)、昆布:kompu、ホッキ(貝):poksey、エトピリカ:etu-pirka(エトゥピリカ)(「が美しい」)。

オットセイ:アイヌ語onnepが、中国語で膃肭(恐らく当時は[uət-nəp>uənnəp]という発音だったと推測される)と表記され、強壮剤として使われたオットセイの睾丸が膃肭臍(おっとせい)と表記されて日本に輸入されていたために入ったとされる。

イタク:話す。あるいは言葉。「祈る」がカムイタク(カムイ イタク)なので「「神に物申さく」というニュアンスの神聖な言葉」説がある。柳田國男はその説からイタコ、イチコ等の方の巫女の呼称起源説を取っていたが、あまり注目されていない。


アイヌ語の現状

現在ではアイヌ語の母語話者はほとんどおらず(わずか1桁台と推定されている)、この語のネイティブな発音が直接聴かれなくなるまでそう長くはない(そもそもアイヌ語社会が消滅しているため、ネイティブな発音を規定できる環境が存在しない)。


ただ、過去よりアイヌ語の録音記録は比較的多く残されており、例としてアイヌ民族博物館の公式ホームページでは、アイヌ語話者によるアイヌ神話の語りを聴くことができる。

興味のわいた諸氏は是非聞いてみると良いだろう。

意味は分からなくても、アイヌの響きを感じることはできるはずだ

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