概要
市販されている汎用部品を組み合わせて自作したパソコンのこと。
技術や、部品の価格次第では市販のパソコンより低コストで高性能なパソコンを作ることができる。
一方で、購入した個々の部品はともかく、完成したパソコンは「ユーザー以外修理が出来ない」代物になるのでメーカーやショップに頼らずにあらゆるトラブルを自力で解決しなければならない(有償でトラブルシューティングや修復を行うショップもある)。
高い性能が要求されるゲームやCAD、3DCGの制作などのパソコンに高い負荷が掛かる作業を行う場合は、それらに最適化した構成とすることで市販パソコンに大きく差をつけることができる。
また、動画の再生や事務作業などパソコンにさほど負荷を掛けない作業をメインとする場合でも、例えばフロッピーディスクドライブや古い規格のインターフェイスを追加したり、静音性に特化した構成にしたりと既製品には無い要求に応えた形とすることが可能である。
しかしながら、あまり拘りがない場合は既製品を買ったほうが無難な場合が多い。
それでも自作したい? しょうがねぇなぁ、少し案内してやるか。
初心者だけどそれでも自作したい! と言う人がここを見ているかもしれない。
なので一応案内しよう。あくまで無難な程度に。
ただ、その結果はあくまで自己責任なのでその点だけは理解して欲しい。
CPU
現状のトレンドとしては、AMD製でSocket AM4の製品をオススメする。
えっIntel入れられないの? と、初心者ほど思うかもしれない。
しかし、現状Intel製CPUは自作初心者にこそ危ういトラップがわんさかある。
また、AMDはプラットフォームをSocket TR4とSocket AM4の2種に絞っている。
この内TR4は、プロシューマー向けハイエンド……というよりは、32コア64スレッドとか言う頭のトチ狂った仕様のプロセッサを使いたいパラノイア仕様であり、ごくフツーの使用方法をするには、AM4でハイエンド(Ryzen 7)からエントリー(廉価仕様、AMDだとAシリーズの下位、現行のAthlon、Sempron)まで充分選択肢が揃っている。
またこうい仕様なので、もし最初安~く組むのが目的だったとしても、後からバリバリのハイエンドCPUにも載せ替えられるので、そういう意味でもAMDがオススメだ。
さてCPUだが、現在パソコン用CPUは純粋なCPUと、グラフィック用コアを持つAPUとがある。これについては、購入時に自分が買うのがどちらなのかしっかり確認しよう。
旧い人間ほど純粋なCPUを使いたがる傾向にある(かく言うこれを書いてるやつもその1人)だが、Webサイトを見回る程度ならAPUの内蔵グラフィックスだけで充分である。
ただ、現在はWebサイトでもHTML5やFLASHを使った、それなりに重い演出をしているサイトも多いので、あまり割り切りすぎるのも考えものである。
また、多少なりとも3Dゲームなどに興味があるなら、A12やRyzen 5あたりの中堅どころを搭載しておきたいところである。
CPUクーラー
初心者でAMDのプロセッサを使うなら、変に社外のクーラーに手を出すより、CPUにセットでついてくる「リテールクーラー」が最も無難だ。現在は低負荷時は自動的に回転数を落としてくれる仕様なので、よっぽど神経質でもない限り気になるような騒音を発することもない。
もし、バルク品や中古品などに手を出してしまい、リテールクーラーがない場合でも、それほど凝って高価な商品に手を出す必要はない。AMDは素直にフルロード時の発熱量(TDP)を表示しているので、それに少しだけマージンを取ったクーラーを買おう。また、その場合は一緒に「熱伝導グリス」を購入するようにしよう。
マザーボード
初心者であれば台湾のGIGABYTE製が最も無難だろう。次点で同じく台湾のASUS。この2社でトラブルが起きたら、それは本当に自分の運が悪かったと思うしかないレベルで信頼できる企業である。
中国本土が拠点のメーカーは、トラブルが起きやすい傾向にあるので避けるのが吉。また、同じ台湾でもmsiはオススメしない。ここは「日本製コンデンサ搭載」を売りにしているのだが、回路設計を工夫してコンデンサの数そのものを減らしているため実際にはコンデンサ周りのトラブルが多い。台湾のコンデンサは充分信用できるまで、msiに限らず「日本製」という言葉を売りにしているメーカーは逆に疑ってかかったほうがいい。
なお、残念ながらマザーボードを単独で扱う日本のメーカーというものは、現在は存在しない。
マザーボードは、当然自分が搭載するCPUに対応しているものを買おう。
また、その他の選択肢としては拡張性の高いATX規格を選ぶか、ややコンパクトなMicro-ATX規格を選ぶかである。
より小さいITXという規格もあるが、初心者は手を出さないのが吉。まず1台作ってなれてからにしよう。
ほとんどの用途はMicro-ATXで事足りるし、もしマイニングでウッハウハとか考えてるんじゃなければ充分である。ただ、バリエーションもあまり多くないので、どうしてもこだわりを捨てたくないのであれば、その条件を満たすATXのものを選ぼう。
拡張スロットはPCI-Expressが主流だが、せっかく自作するのであれば1本でいいので旧PCIスロットのあるマザーを選んでおこう。後々、かゆいところに手が届く製品が使える可能性が高い。
そしてマザーボード選びで重要なのはメモリスロットの数だ。特にMicro-ATXの安物マザーに多いが、メモリスロットが2本しかないものは後々苦労したり散財したりすることになるので避けよう。
メモリ
メインメモリとして指すメモリモジュールも、現在はCPUを選択した時点で規格が決まる。今のCPUはデュアルチャネル(メモリの方がCPUより遅いので、CPUが別々のメモリに同時にアクセスすることで高速化する技術)を使用しているので、同容量同一規格のものを2枚ずつ買う。初心者なら、できれば相性保証はかけて置きたい。
ただ、ここでもIntelとAMDに温度差があって、AMDは規格と容量が一致していれば、それだけでデュアルチャネル動作してくれる事がほとんどだが、Intelは完全に一致していないとゴネることがある。なのでAMDなら安いバルク品などに手を出しても大丈夫だが、Intelの方はメーカー乃至ショップ保証のついたものを買ったほうがいい。
ただし、ここでいうショップ保証というのはあくまで相性問題でのこと。いくらバルク品でも品質保証がないものは論外なので、初心者は絶対に手を出さないように(なれてる人間でも、これを使うのはよほど金欠だけど早急にパワーアップしたいか、人柱覚悟の人間だけである)
ちなみに64bit版Windowsを動かす場合のメモリ容量は、最低で8GB必要だと思ってもらって構わない。32bit版はそろそろできることに制約がつくようになっているので、ここはケチらないでおこう。
ハードディスク
これが非常に困難であればあるだけ使っちゃうのがHDD。1TBを最低ラインに、予算と相談して決めよう。
HDDにも規格がいくつかあるが、普通は3.5インチ・S-ATAの物を選ぶ。2.5インチのものは基本的にノート用で、デスクトップにも使えるが、一工夫必要なのでいきなりは手を出さないでおこう。
また、ネットの自作機界隈記事では世の中半導体のSSDの時代だ、いやeMMCだ、などと言っているが、これら半導体ストレージはまだまだ容量あたりがべらぼうに高く、その分だけ速いのかと言えば実はそれほどでもないので、窮屈な容量に我慢せずHDDを買おう。
半導体ストレージが威力をガッツリ発揮するのは仮想メモリ。なのでもし、あなたが、「PC自作ははじめてだけどWindowsの設定はかなり深いところまでイジれるよ!」というのであれば、メインのHDDとは別に半導体ストレージを購入して高速化を目指すのは手である。中古品で充分だが、中古初期保証がちゃんとついているものを買うこと。それとケースに取り付けるためのパーツもちゃんと確保しておこう。
HDDのオススメはWesternDigital、Seagate、東芝と言った、実際に製造しているメーカーのもの。IOデータやバッファロー、ロジテックのものは、一見有名メーカーに見えるが、実際には製造メーカーのものを独自パッケージングしているだけなので、高く付くだけな上、たまに素性の怪しい個体が入っていたりするので、敢えて選ぶ意味はない。これらが売りにしている「便利ツール同梱」も、製造メーカー系もダウンロードで用意していたりするので、価値なし。
グラフィックボード(GPU)
CPUの節で説明した通り、APUの内蔵グラフィックスで満足できるのであれば問題ないが、多少なりともゲームに興味があったりするのであれば、グラフィックボードを載せておくことも考えよう。ただ、いきなりは必要ないので、APUを選んだ場合であれば、必要になってから、充分なスペックのものを買ったほうがいい。今はAmazonですぐ買えるしね。
純粋なCPUを選んだ人は、当然マトモなパフォーマンスを得るにはグラフィックボードが必要になる。VRAM(グラフィック専用に搭載するメモリ)2GBを下限として、予算と相談して決めよう。
なお、Windows10のEMAテクノロジによって、別メーカー同士のGPUや、GPUとAPUのグラフィックスコアも協調できるようになったので、よっぽど極限性能を求めるのでなければ、AMDのAPUにnVidiaのGPUを組み合わせても充分なパフォーマンスを発揮できるので、その点は気にしなくても良くなった。
光学ドライブ
時流的に言っても、少なくともブルーレイの読み込みと、DVDの書き込みができるものを最低ラインとしたい。なお、Windows10のインストールメディアはDVDなので、CD-ROMしか読み込めないものではインストールできないので注意。
ケース
これらを収めるケースだが、自作初心者であれば自身の選んだマザーボードと、フルサイズのATX電源が搭載できるものを選ぼう。ただし、電源がついてくるケースも、大半はアメリカ製の激安品か中国製で、保護回路もろくについてないものが多いので、電源付きのケースを買うにしても、取っ払って別の電源を取り付けるつもりで買ったほうがいい。ケースファンに関しては、とりあえずマトモに回っているようならそれで大丈夫である。なお、背面にケースファンが取り付けられないものは、後々冷却で苦労することになるのでやめておこう(例外として、上面についているものなら背面にはなくてもOK)。
後は、外観にかかるので当然好みのものを選ぼう。
電源
ATX電源というものを買う。こいつはケチるな。たとえ他をケチってもケチるな。省エネの観点からも、安定性の観点からも、「80plusSILVER」以上のものをオススメしたい。
残念ながらこちらも現在は日本メーカーが撤退しており、素性の良いものは台湾製かアメリカ製である。パッケージベンダーだが、SCYTHEが、価格の割に保証もしっかりしていてオススメだ。SILVERSTONEやANTECは、パッケージベンダーの割に高すぎる感がある。
玄人志向は、まぁ、現状では及第点ではあるんだけど、昔からの自作ユーザーにはあんまし好印象ではない、とだけ言っておきたい。
ケースファン
ケースファンがついてないケースを買った場合は必要。ひとまずAMDで定格で動かす分には、静音タイプと銘打ってあるものを買えば充分である。自動調速機能付きのものもあるので、気になる人はそれを買うのもあり。
Windows10
大体の人は、OSとして現在、これをインストールするだろう。ハードを購入する際、DSP版というパッケージ版の半額以下で買えるバージョンを同時購入できるので、それを購入しよう、これは、本来はパソコンを組み立てるベンダー向けのバージョンなのだが、自作PCは当然ユーザー自身がベンダーなので、購入する権利がある。
ちなみに、自作機の場合、パッケージ版を買ってもMicrosoftとしてはハードウェア構成を説明できるユーザーでないと充分にサポートできないので、敢えて高い金額を出してパッケージ版を買う意味は薄い。
当たり前だが、違法コピー品に手を出したりしないように。
作業中の注意
CPUなどはちょっとした静電気でも壊してしまうことがあるので気をつけよう。この際に重要なのはマザーボードとの電位差になるので、まずマザーボードをケースに取り付けたら、他の部品を触れる際にはケースに触れて静電気逃しておく。こうすることで事故が避けられるので、億劫がらずに慎重に組み立てていこう。