概要
『キラキラ☆プリキュアアラモード』に登場するジュリオがプリキュアになったらという、ファン(いわゆる大友)の想像が生んだプリキュア化。
キュアジュリオのイラストは、現時点では姉と似たコスチュームを着ているか、まったくのオリジナル服を着ているか(いずれも作中の経緯に則り、ワッフルがあしらわれていることが多い)の二パターンに大別される……のだが、リオいちから来ているのか何故かキュアホイップに似たコスチュームを着ている場合も。
背景
ジュリオはCVが女性(皆川純子)であり、「メイン主人公と同年代で、プリキュア達の日常に近づく敵幹部」という過去作でプリキュア側に寝返った少女幹部さながらの立ち位置や、長髪で中性的な美少年であることも相まって、登場時から「実は女の子」や「追加キュア枠」という推測が絶えなかった。
性別に関してはれっきとした男であることが22話で確定し、また追加キュア枠は彼の姉が務めることになり、ファンの推測は外れることになったのだが、ジュリオをプリキュア化させるネタイラストが投稿されるのはもはやお約束ともいえる流れだった。
第17話で彼が発した「このオレがプリキュアに…」という台詞が(本来は「自分がプリキュアに負けるなんて」という意味合いなのだが)、「自分がプリキュアになる」という意味でネタ解釈されたこともある。
現実における「キュアジュリオ」待望論とその顛末
「実は女の子」説や「追加キュア枠」説は公式に否定されたが、それでもなお「ジュリオのプリキュア化」を望む声は根強かった。
その根拠の一つは、本作の世界観にある。
『キラキラ☆プリキュアアラモード』におけるプリキュアは、あくまで「伝説のパティシエ」とだけ定義されており、年齢や性別の制限は明言されていない※。 また、キュアパルフェを見る限り、妖精でもなることができる存在である事がほぼ確定している。
従って、男の子の妖精であるピカリオ=ジュリオがプリキュアになれないとは決まっていない。
(※もっとも、大半の作品でプリキュアが女性しかなれないとは明言されていない。はっきりと女性限定とされているのはハピネスチャージプリキュア!、Go!プリンセスプリキュアくらいである。)
そして22話では、ジュリオは闇落ちする前は姉とともにプリキュアを目指して修行していたということが判明した(詳しくはジュリオの記事で)。この経緯は、ギャグ描写などではなく真面目でシリアスなプロットとして扱われている。
重要な点は、本作の世界観では男がプリキュアになってもおかしいとは誰も思っていない事である。女の子っぽい華美なドレスで戦うのがプリキュアというわけではなく、プリキュアに選ばれたのがたまたま女の子だったから華美なドレスで戦ってるという認識なのである。
もう一つの根拠は、「プリキュアシリーズの父」鷲尾天の発言である。
鷲尾は『プリキュア新聞』(日刊スポーツ新聞社刊)2016年春号で、「『男の子のプリキュア』はありうるか」との質問に対して、次のように答えていた。
「子どもたちが熱狂してくれる形であれば、本当は検討から外しちゃいけないんですよ。『自分たちの足できちんと立つ、りりしい姿こそプリキュア』という、一番シンプルなよりどころをきちんと守る限り、どんな姿、モチーフであってもプリキュアである、と言えるのではと思っています」
一度は闇落ちして夢を閉ざしてしまったジュリオだが、これからの展開次第では「初の正式男性プリキュア」になることも、決して夢ではない。姉との確執を解消し、ともにプリキュアになる夢をかなえてほしい…ファンはそう考えていた。
…が、その期待は閉ざされてしまう。
『アニメイトタイムズ』2017年7月14日付のインタビュー記事で本作の追加戦士に触れた際、共同シリーズディレクターの暮田公平は以下のように語っている。
「いままでのシリーズでは、敵だったキャラクターが仲間になったり、自分たちより上の存在がプリキュアになる、というパターンが多かったと思います。ただ『プリアラ』の雰囲気から考えると、その2パターンはどちらも親しみにくい気がしました」
つまり、ジュリオがプリキュアになれないのは「敵キャラだから」となる。
『プリアラ』の雰囲気というものを単純に文章化するなら、「自分が好きなことを楽しんでいる」に行き着くだろう。プリキュアとしての戦いは「気の会う友人同士でスイーツのお店を経営する」という活動のオマケにくっついてくるものといってよく、「改心した敵キャラが贖罪の気持ちを抱えてプリキュアの使命を背負う」ような従来のパターンは似合わないのである。
ジュリオは洗脳されていたり騙されていたわけではなく、自分の意思で悪事を重ねていたキャラだ。そんな彼に贖罪意識を持たせずに「気の会う友人」のポジションにいきなりおいてしまうことは、コア視聴者である未就学女児の視点からすればスンナリ受け入れられるとは思えない、と制作陣は考えていた節がある。これは、企画当初、追加戦士の第一候補としてペコリンが検討されていたから事からも伺える。
(逆に考えると、プリキュアにする予定がなかったからこそ、ジュリオはプリキュアたちの心理に大胆に踏み込む事が出来るキャラになったと言える)
そしてジュリオは24話で真に改心するも、今までの罪の清算をするかのように姉を助けるために大怪我を負い、その傷を癒すために休眠状態に。
「ピカリオはいつか目覚める」と言われているが、最終回に戦いが終わってから目覚めるという可能性も十分に考えられる。
つまりこの休眠状態という設定は、プリキュアたちの仲間にしにくいジュリオを、物語から穏便に退場させるための処置なのかも知れないのだ。
「ジュリオのプリキュア化」期待論は、様々な経験を積み多くの知識や感情を得て、「フィクションと現実」「過去と未来」を切り分ける術を手にしてプリキュアシリーズに戻ってきた大友だからこその、見果てぬ夢だったのだろうか……
…だが、第39話終盤にて彼は白いコスチュームを身にまとった姿で復活。
サウラー、ウエスターなどのような「きれいな○○」の方とも思われていたが、『アニメージュ』増刊号にて彼の姿は「プリキュアっぽいデザイン」として考えられた事が明かされた。しかも彼のCVを務める皆川の願望が反映される形で、「キュアワッフル」とまでラフ画に命名されている(あくまでラフ画段階で、裏設定に近い物なので注意)。彼の使う新しいロッドにはワッフルの意匠が施されている。
設定上はいにしえのプリキュア・ルミエルの力を借り受けて変身した姿ということなので、プリキュアではないがプリキュアとしての力を使っているという扱いである。過去作でいうところのプリキュアのコピー戦士(闇キュア)の味方バージョンというところだろうか。
結果的に彼は正規の力を持つ準プリキュアとして、戦う力を持つことができたと言えるだろう。
ちなみに11月17日に発行されたアニメージュ増刊号での暮田公平へのインタビュー記事にてこう語っている。
「敵キャラの人気がすごく出ていますね。ジュリオも最初は浄化されたら退場させるつもりでいたんです。脚本上では結構悪いことしていたので。でも、話を進めていくうちに愛されキャラになってしまい、やっぱり、退場はできないよねって。それは各話のライターさんや演出さんの影響もありますね」
上述の7月時点の暮田SDへのインタビューと比較する限りは、明らかな敵キャラであるはずのジュリオに視聴者側が奇妙な「親しみ」を持つようになってしまい、それは各話のスタッフや声優陣も例外ではなかったので、こういう展開へとひっくり返したことになる。
彼を救ってあげたいという思いが、視聴者と現場スタッフの両方で共有されたからこそ起こった奇跡だったのである。
…こうして幕を閉じたかに見えた男プリキュア待望論。
しかし、終わってなどいなかった。
待望論が翌年、更なる奇跡を呼ぶことになるとは、まだ誰も思ってはいなかった…。