概要
熊、特にアジアクロクマの一種。
アジアクロクマは実は古代種とよく似た姿をしており、ジャイアントパンダやメガネグマと並び、現在のクマ類の祖先の系統なのではないかともされている。ニホンオオカミも近年古代種の系統と判明した。
大型の陸棲動物がほとんど絶滅してしまった現在の日本列島の本州以南では、シカと並んで最大級のサイズを持つ。
東アジアから西アジアにかけて(日本では本州と四国の山地。九州では絶滅)に棲息する。四国では、新たな生息地が2017年に確認された(参照)。
漢字表記は「月輪熊」。喉の辺りに三日月形の白い斑紋がある事から名付けられた。
雑食性の種類が多い熊の中でも食餌の植物への依存が高い種で、特にドングリやクルミ、サルナシやキイチゴといった果実、山菜やタケノコ、さらにはキノコや新芽・花を好んで食べる。
動物性食品ならハチミツの他にも蜂の子や昆虫を好むが、事故やケガで死んだ動物も食べる。
時には農作物や樹皮を食害する事もあり、場合によっては人を襲う事もある危険な動物である(ヒグマに比べ気が荒くないイメージがあるが、人身事故はしばしば発生しており、中には死亡事故となる場合もある。ヒグマより体が小さいため抵抗すれば致命傷になりづらいだけである)。
肉や毛皮、内臓(胆嚢が「熊の胆」と呼ばれる漢方薬の材料になる)目当ての狩猟で、世界的に数が減っている。日本では、地域によっては(特に四国)絶滅の危機にあるにも関わらず、元から生息密度が低いせいで厳密な頭数がよく分かっておらず、人間の生活圏への出没も近年増えており、駆除(生死を問わず)を行う上での問題となっている。
2016年、秋田県においてヒトへの食害事件が発生している(十和利山熊襲撃事件)。
ツキノワグマの能力
走った時の速度は時速40キロメートル。短時間なら時速50キロメートル出せる。犬並みの嗅覚を持ち、熊らしく木登りが得意。泳ぎも上手い。
厚い皮下脂肪を持ち、有刺鉄線付きの柵を乗り越えてきてしまう。ジャンプ力はないが、爪さえ立てられるなら垂直な壁ですらよじ登ってしまう(参考)。
熊の中では中型のサイズであり、二オンオオカミ絶滅後の日本において、北海道と九州を除く地域の生態系の頂点に位置する。
秋田県のご当地ヒーロー「超神ネイガー」はtwitterで、知り合いが遭遇したツキノワグマによる被害について言及している(ツイート)。
リンゴ農家である知人は、クマが農園に来たことを糞や爪痕で知るが、農園の木の一本を見て戦慄する。
その木にぶら下がるリンゴの片面だけが綺麗に切飛ばされていた。しかも枝に繋がった方は無事なままで。
鋭い爪だけでなく、細い枝先についた果実を落とすことなく切り裂く、前肢の振りの速さと強さ、それをツキノワグマが備えていることの実例である。
超神ネイガーはこのツイートの末尾で「クマは、ウルヴァリンの爪を持ったハルクだと思えばいい。勝てるわけがない。」と書いている。
例えるならば
「(ヒグマを見慣れているからツキノワグマなら勝てそう、との発言を)訂正します ツキノワグマは強いです」
「私の発言は戦場で呂布を見た後に関羽を見て、「あ、関羽なら勝てそー」って思っちゃうような愚かな発言でした」
ツキノワグマ(クマ類)と付き合うために
まず、前提として人馴れしていないクマにとって、人間は怖い生き物だということを覚えておいてほしい。
例え話になるが、人間が(実態とはかけ離れて)「クマという生き物はすべて、人肉と血に飢えた猛獣」だと思っているのと同じように、クマのほうも「人間はすべて、火を吹く棒や罠などでクマを殺して回る死神」だと思っていると説明したほうがいいかもしれない。
野生動物は人間とは一定の距離を置きたがるので、人の気配を感じると逃げ出してしまう。
なので運悪くお互い鉢合わせてしまったときは、人もクマも「まずい!どうしよう!殺されるかも!!」という心境になっている。
私たちにできること
- クマについて正しい知識を身につける
クマは人間を襲いたくて襲っているわけではないことや、俗説として挙げられる対策法「死んだふり」「泳いで逃げる」「木に登る」などが悪手であることがわかるだろう。
- クマの出没情報を知らせる看板がある場所には近づかない。
- はだしで歩いた人間のような足跡や木についた深い爪痕などを見つけたら、クマがいる証拠。
その場から離れること。
- 体全体に伝わるような物凄い重低音が聞こえたら、立ち去る
熊が「ここから立ち去れ」と発する警戒音。イヤホンなどをつけていると聞こえないかもしれない。
- 早朝や夕方、曇りの日、霧の日、深い森に行くことを避ける
光があまり差し込まない時間帯が、クマのゴールデンタイム。
- 川沿いや風の強い日を避ける
クマにとって、こんな環境は人間が発する音が聞き取りにくい。
- 山菜採り、ハイキングなどには複数人で行く
監視の目は一人分より複数あったほうが、クマを発見しやすい。
- 鈴やラジオなど、音の出るものを持っていく。
会話をしたり、歌を口ずさんだりすることも有効。
- 爆竹、クマ撃退スプレー、鉈といった護身用武器を携帯する
こういった武器は人間側の心の支えになるうえ、人を恐れなくなったクマに「やっぱり人間怖い!」と思い知らせることもできる。
- 飲み物や弁当・携帯食は密封して持ち歩く
- 食品や生ごみは必ず持ち帰る
人が食べておいしいものはクマにとってもおいしいものなので、人馴れを促進する。
- 写真を撮りに近づかない
この行動も「人間は近づいても大丈夫」だと思わせるため、人馴れを促進する。
- カメラで撮影しない。フラッシュをたかない。
カメラのレンズは野生動物にとって「一つ目小僧」と同じ。
また、クマはフラッシュの光に興味を持って近づいてくる。
- かわいい(かわいそうだ)からと餌を与えない
人馴れの原因(宇宙人が人間に知識や資源などを与えるような行動)。人が干渉しなくても、彼らは自力で十分生きていける。
- 動物の死体には近寄らない
死肉はめったに食べられないごちそう。「せっかくのお肉を人間が横取りしに来た!」と勘違いして襲ってくることがある。
- 子熊に近寄らない
隠れている母熊は、大事な子供が心配で気が気じゃない。何かあったらいけないと襲い掛かってくる。
- 運悪く遭遇した場合、静かにあとずさりをする。さらに、目をあわせながら語り掛けて後ずさる。
北海道のアイヌも、昔から不意にヒグマと鉢合わせしたときの対処法として行っていた。
- 決して叫んだり怒鳴りつけてはいけない
- 中途半端に反撃しない
クマを余計にびっくりさせ、攻撃の口実を与えることになる。
- 背中を向けて走らない。
クマは獲物だと思って猛スピードで追いかけてくる。
- 死んだふりをしない。
繰り返すが、ツキノワグマにとって「死体=お肉=ごちそう」。
- 犬を連れて行かない、犬を連れていくならリードを放さない
クマはせっかく人間から隠れたのに、犬が見つけ出してワンワン吠えたててしまう。そのためクマは*パニックの上に神経を逆なでされたマジギレ状態となるので事故につながる。
- 山菜やキノコは、自分と家族が楽しむだけの分を複数の場所で少しずつ採取する。
ひとところにとどまっていると、しびれを切らしたクマが出てくることがある。場所を移動して少しずつとることは、限りある資源の保護にもつながる。
なにより取りつくさなければ、来年場所を覚えてまた来ることもできる。
- 生ごみや残飯は燃えるゴミとして出し、畑に埋めない。農作物を畑に放置しない。
- 柿の木やクリの木などの果樹は、利用しなくなったなら伐採する
「人にとっておいしいもの・おいしかったもの」はクマも大好きなので、呼び寄せてしまう。
- 出没地域の田畑や家畜小屋には、電気柵を巡らせる
「おいしいものがいっぱいあるけど、あそこはビリビリするから行きたくない」とクマに思わせる。
襲われた場合
まずはカメのようにうずくまり、お腹を地面につける。次に頭を抱え込んで首の後ろで手を組み、急所を守る。リュックサックを背負っているなら、それが甲羅となって背骨を守ってくれる。
間違っても素手などで中途半端に反撃してはいけない。クマが様子見で軽い攻撃を繰り出しているとき、中途半端な反撃を返したならば本気を出す口実を与えてしまう。
クマが完全に興奮しているならば…
- 腹をくくり、鼻先めがけてナタの連打を叩き込む。
ボディは剛毛に覆われているため、攻撃が通らない。
力士や格闘家だろうと、素手ではまずクマに勝てない。
- 木の間をジグザグに縫うように逃げる。
直線ではクマに勝てっこないが、クマは小回りが利かないためカーブの多いコースが苦手。
さいごに
「クマなんかいなくてもいいじゃん」と思っているなら、それは間違いである。
ヒグマはシャケがため込んだ海の栄養分を山奥に持ち帰るほか、クマたちはたくさん食べた木の実や山菜の種・キノコの胞子を糞として山にまき森を育てる。
いうなれば森はクマや野生動物の庭であり、人間はお邪魔させていただいているお客様にすぎない。
さらにもともと日本の里山は薪・建材と材木利用の頻繁さからたびたびはげ山となっていて、「木材が伐採されること」と「木が早く育つ種類であること」を前提に育ってきた。
キツネやネズミ、タヌキ、イタチといった小動物は鎮守の森を利用できたが、クマなどの大型動物は深山に移り住むしかなかったのだ。
ところが今の日本は杉林のプランテーションを作るもこれを放置し、林業は完全に衰退。
里山からも薪は切り出されなくなり、もやしのようにひょろひょろとした弱い木が、藪のようにみっしり生えるようになってしまった。
林業や狩猟文化の衰退や農村の過疎化は、クマと人間との衝突を招く遠因となっている。
関連イラスト
関連タグ
同名の楽曲
buzzGが投稿した楽曲。