概要
現在わが国の食料自給率はわずか40%!!(※)
自国内で国民の腹を満たすことのできないこの国に未来はあるのか!?いや無い!!
そんな日本の食糧倉庫北海道で人々を飢えから救うべく、日々泥にまみれて働いていたマンガ描きがいた!!
その名は…農民・荒川!!!
雑誌『ウンポコ』(新書館)で連載を開始し、同誌が休刊となった後は雑誌『ウィングス』(新書館)にて連載中。
北海道は十勝の酪農家の家に生まれた、自身の体験を基にしている。
(※)冒頭の食糧自給率の数値は連載開始(2006年)当時のものでカロリーベースに拠る。アニメ化した2023年には、さらに数値は下がり38%に落ちており、この数値変化は当然アニメ版に反映されている。言うまでもないが、この数値はいかなる理由があろうと落ちてはいけない&増やさないといけない数値である。
氷点下の牛舎へパンツ一丁で出かけるワイルドなお父様や、ソ連の略称СССРについて答えてくれるお姉さまなどが、鹿、鮭、ポテトチップス(袋入り)、などを産出する豊穣のジャガイモ畑と、熊、リス、ハクビシン等猛獣の襲撃に備える厳しい牧場を、いかに経営するかが面白おかしく描かれる。
「百姓」という言葉は場合によっては差別用語扱いされることもあるが、荒川氏は各地で頑張っている「お百姓さん」への尊敬の意味であえてそのままタイトルに使っている。
一方「貴族」という言葉は、下積み時代実家から牛肉を貰えたり(ただし冷蔵庫はカラ)、北海道時代の食卓がほぼ自家消費と物々交換で成り立ってたり、玄関先におすそ分けの鹿が置いてあったりといった、百姓ならではの「おこぼれ」を貰うエピソードでよく使われる。
北海道での農業エピソードをメインとしているので、本州の農業(茶葉の栽培など)や家畜信仰については、作者自身も「色々と知らなかったことがあった」と本文で紹介されることもある。
少年漫画出身の漫画家が本格的に描いたエッセイ漫画という珍しい作品であり、動物や自然の脅威、農業機械、それらに囲まれて暮らす人々のおおらかさ(と言うには、あまりにもほどがある非常識&鉄人ぶり)などは、作者の代表作でもある『鋼の錬金術師』ばりの「無駄に迫力のある絵柄」(と、担当&アシスタンツの冴え渡るツッコミ)で描写されている。
一応「正義の男」こと鼻祖・荒川与作から、祖母、祖父、父母、姉弟など作者の血縁者は「牛」で描かれ、アシスタント(特にこの人)などは然るべき動物(犬など)で描かれ、兄弟衆の配偶者、仕事の関係者や友人、ツッコミ担当の編集者は人間で描かれる。ただ、作者の子供や姪っ子は人間の姿をしている。
なお荒川氏は女性である。
作中でそのことがあまり強調されることは無いが、「牛乳を飲めば胸が大きくなる」という俗説に対して「それは…デマです…」と死んだ目で悲しそうに呟く、親父殿入院の際に「娘さん」と呼ばれる、出産時の(酪農家ゆえの、現実を伴った)感想を語るシーンなどがちょこちょこ存在している。
(本人いわく「模様からして、ホルスタイン(乳牛)=メスだと分かってもらえると思った」とのこと。ホルスタインの雄は、ほとんどがさっさと去勢されたあげく食肉に加工されてしまう)
また、赤い勝負パンツを両手で持って伸ばしている自画像でもパンツがしっかりと女性用のパンツだったりする。
あとオマケとして、コミックの右ページの下にはパラパラ漫画が毎巻付随している。
もちろんカバー裏もある。
2022年10月にアニメ化が決定し、2023年7月からTOKYOMXとBS朝日、テレビ北海道にて5分程度のミニアニメとして放送。アニメーション制作はPie in the sky。
荒川役は田村睦心、担当イシイさん役は本多真梨子。なお、話中にかなりのモブキャラが登場するため、その部分はメインキャストの声優陣が兼役で声を担当している。
第1期はコミックスの特典としての収録(未放送エピソードも含まれる)がされ、そのCMでも早い段階で「第2期制作決定!」と言及されており、2024年3月24日には第2期の放送時期が2024年秋であることがアナウンスされた。
2024年7月からは上述第2期を見据えて、第1期の再放送がTOKYOMXで実施される。金曜の午後9時54分から。
農家の常識は社会の非常識
如何せん作者が農業従事者であったため、作中に描かれていることの中には、農業に詳しくない読者の視点だと「ありえない」「信じられない」ことも多々出てくる。が、作風故か、こういう部分もネタとして成立しているのも事実である。
なおこの「農家の常識は社会の非常識」のセリフは、牛さんから「北海道の畑では鮭が獲れる」という話を聞かされた担当のイシイ氏が発した(意味が分からない人は単行本を読もう)。
アンケートはがきについて
単行本にはアンケートはがきが挟み込まれており、作品についての感想などを記入して送ると、抽選で図書カードなどがプレゼントされる。
なお、作中にて「アンケートはがきに書かれていた質問に答える回」が不定期で行われるが、農業に関して詳しくない読者からの質問から、かなり踏み込んだ専門知識、ネタに振り切った質問に至るまで、作者が答えられる範囲での解説が掲載されている(答えられない部分としては「稲作については全く分からない」と返答していた)。
また、アンケートはがきの「面白ネタ」も時折紹介されているが、作者のいとこから届いたはがきには「子供の頃の思い出話」に加えて「かなり高額な赤字の話」がさらりと書き添えられていたため、作者が「何があったんだよ!!!」とツッコミを入れていた。
農業は危険と隣り合わせである
作中には、
- 車で走行中に、決壊した橋を渡る方法
- 切断寸前になった指を治療する方法
- トラクターで人を轢いた際の対処法
- トラクターの連結部分に巻き込まれそうになった時の回避法
- ロシア軍の検閲からデータを堂々と持ち帰る方法(※実際にはタンチョウの生体調査の研究データなのだが、ロシア軍の勘違いにより機密データ扱いされたもの)
- 農作業や家畜の世話と並行して、投稿漫画を描く方法
- スズメバチの巣の採り方と食べ方
- 保護動物をこっそり採って食べる方法(親父殿曰く「伝え聞いた話」)
- 潰した家畜をこっそり食べる方法(親父殿曰く(ry)
など、「一歩間違うと命に関わりかねない」事態も多数紹介されている。このような事例は、事無きを得たのでネタにされているが、気楽に片付けられない事もあるので、よい子はホントにマネしないでください。
実際にはとても表に出せないネタが多数存在しており、ネタにしている部分は比較的穏当なそれなのだという(更に、アニメ版ではそこからTVに出してもそこそこ穏便に済むであろう話を厳選している)。没にしたネタで「裏百姓貴族」なんてのを描いたらもう1冊分くらいは描けるとか。
まぁ、こういうネタは大体「伝え聞いた話」との事だが。
なお、コッチもコッチで絶対にマネをしてはならない。理由はわかりますよね?
関連動画
単行本の試し読み動画。
この作品についての説明と、2017年発売の単行本第5巻のCM。前述の「決壊した橋を渡る方法」も紹介されている。
なお、この動画のナレーション及び登場人物の台詞読みを担当しているのは、あの千葉繁氏である。なお千葉氏はテレビアニメ版でもナレーションを続投しており、なおかつ親父殿の役まで射止めてしまった(おかん役はくじら氏)。
アニメ第1期・第1話。