戦争とは平和である (WAR IS PEACE)
自由とは隷属である (FREEDOM IS SLAVERY)
無知とは力である (IGNORANCE IS STRENGTH)
概要
1949年に出版されたディストピアジャンルの代表的作品であり、ディストピアというジャンル全体を指して「オーウェリアン」と称することさえある。
類似タイトルである村上春樹の「1Q84」は、執筆経緯のひとつとなっている。
作品解説
1950年代に核戦争が起き既存の国家が革命により倒され世界が「オセアニア」「ユーラシア」「イースタシア」という3つの全体主義超大国に支配された1984年。舞台はオセアニアの領土のエアストリップ・ワン(Airstrip One / エアストリップ一号)でかつてはイギリスと呼ばれた地域である。
主人公のウィンストン・スミス(Winston Smith)はロンドン在住の真理省(Ministry of Truth)記録局(Records Department)に勤務しており、党外局(党外郭 / outer party)つまり一般階級の党員である。スミスはオセアニアの現体制に疑問を抱いていた。
そんな時、同僚のジュリアから手紙による告白を受け、隠れ家で逢瀬を重ねるようになった。さらに上流である党内局(党中枢 / inner party)に属するオブライエン(O'Brien)に接触し、体制への疑問を打ち明けると反体制派のエマニュエル・ゴールドスタイン(Emmanuel Goldstein)が描いたとされる禁書を渡され体制の裏側を知ることとなる。
しかし、反体制的な思想がある人物により密告され、思想警察(Thought Police)に逮捕される。愛情省(Ministry of Love)の手によって洗脳され、完全に体制を信じ込み、スミスは"心から"党を愛し、処刑される日を想うのであった。
登場人物
ウィンストン・スミス(Winston Smith)
39歳の男性。党外局員、真理省記録局に勤務。キャサリンという妻がいるが別居中。過去の新聞記事を現在の「事実」に沿うように書き直すのが毎日の仕事だが、疑問を抱いて日記を付け始めた。ねずみがトラウマ。
ジュリア(Julia)
26歳の女性。党外局員、真理省創作局に勤務。労働者向けの娯楽を作る「小説製造機」のオペレーター。表向きは熱心な党員であるが、実は現体制に疑問を抱いている。
オブライエン(O'Brien)
党内局員、真理省の高級官僚。党に対して絶対忠誠である。人心把握の技術があり、ウィンストンを嘘でわなに陥れる。
トム・パーソンズ(Tom Parsons)
真理省に勤務。ウィンストンの隣人。
パーソンズ夫人(Mrs. Parsons)
トム・パーソンズの妻。
サイム(Syme)
ウィンストンの友人。真理省調査局に勤務。
チャリントン(Charrington)
63歳の男性。古道具屋の店主。オセアニアの現体制成立以前の時代に愛着を持つ数少ない人物。しかし、実際は秘密警察の隊員。
ビッグ・ブラザー(Big Brother)
全体主義国家オセアニアの最高指導者。テレスクリーンを通じて国民を監視下に置いているとされている。作中には一度も登場しないが、党と人民の崇拝の対象とされている。
エマニュエル・ゴールドスタイン(Emmanuel Goldstein)
オセアニアにおける反体制派の代表的人物。「人民の敵」とされ、オセアニア国民の憎悪の対象と目されている。ビッグ・ブラザーと同じく作中にはその姿を一度も現さない。
用語
ニュースピーク(新語法)
作中で使用されている、政府が開発した人工言語。英語を基にして、不必要な表現(不規則活用等)を削除して合理化し、単語の語源を連想出来ない程の略語を多用し、連日のように使用禁止語が増えるので、思考するよりも前にガァガァと党のスローガンを叫ぶだけの国民を増やす、愚民政策の一環である。政府の行動を疑う為の単語自体が使用禁止なので、考える事が出来なくなる。将来的にはオールドスピーク(英語)で記された過去の記録も読めなくなっていくだろう。
なお、巻末には「ニュースピークの諸原理」というニュースピークを過去形で解説した付録がある。
監視社会
この世界では密告が奨励されている。子供達には親の寝言を盗聴する為のアイテムが配られている。個人が日記を付ける事は、重大な思想犯罪である。怪しい発言を行う者、怪しい表情を繰り返す者は秘密警察に連行されて蒸発していくし、蒸発した者の名前を口に出す者もまた蒸発していく。家々にはテレスクリーンと呼ばれるテレビ型の盗聴・盗撮機があり、プロパガンダや健康体操を流しながら市民を監視している。
出版
イギリス - Secker and Warburg (1949年)
日本 - 早川書房(1972年、2009年)
映画
何度か映像化された中で、実際の1984年に公開されたマイケル・ラドフォード監督作が、唯一日本公開された。オブライエン役リチャード・バートンの遺作。
キャスト
ウィンストン・スミス - ジョン・ハート
オブライエン - リチャード・バートン
ジュリア - スザンナ・ハミルトン
チャリントン - シリル・キューザック
スタッフ
監督・脚本 - マイケル・ラドフォード
原作 - ジョージ・オーウェル
製作 - サイモン・ペリー
製作総指揮 - マーヴィン・J・ローゼンブラム
音楽 - ドミニク・マルダウニー / ユーリズミックス
製作会社 - ヴァージン・フィルム
配給 - 松竹富士(日本)
公開 - 1984年10月10日(イギリス) / 1984年12月14日(アメリカ) / 1985年11月5日(日本)
上映時間 - 113分
製作国 - イギリス
言語 - 英語
関連イラスト
関連タグ
Vフォー・ヴェンデッタ:映画版では多くのオマージュがされており、1984で主人公を演じたジョン・ハートが体制側として登場している。
メタルギアソリッドVザ・ファントムペイン:物語の舞台が1984年。ストーリーもオーウェルが裏モチーフになっている。
ゴルスタ : 中高生向けSNS。運営のやり口がまさに1984年とそっくりだった事実が露見し炎上した。
機動戦士ガンダム00:三大国家による冷戦が行なわれているが、世界地図が似ている(オセアニア、ユーラシア、イースタシア)