ビッグブラザー
びっぐぶらざー
舞台であるエアストリップ・ワンのロンドン、及びオセアニア(国家)を支配しているイングソック体制の頂点に立つ独裁者。B-B、偉大なる兄弟とも。
ロンドンの至る所にあるポスターやテレスクリーンに「ビッグ・ブラザーがあなたを見守っている(Big Brother is watching you)」のスローガンと共に黒い髪に黒い口ひげを貯えた人物として描かれている。真理省により神格化されている。
真理省の記録によると後に「人民の敵」となるエマニュエル・ゴールドスタインと共に「党」を結党し、イングソック体制を打ち立てた功労者とされており、現在もなお党を率いている。
その実在は不明瞭なところが多く、記録を遡ろうにも真理省が絶えず情報を改ざんしているためにそれを確認することはできない。
また、エマニュエル・ゴールドスタイン著の禁書『少数独裁制集産主義の理論と実際』によると、オセアニアは党上層部の少数独裁制により指導されているらしく、恐怖と尊敬を受け易い一人の存在の必要性から生まれたものであるとされる。
上記の特徴から「1984年」が出版されて以降、現実世界では「ビッグ・ブラザー」という言葉は「国民一人ひとりの一挙一動を監視、統制しようとする政府、あるいは権力者」という意味の代名詞として使われるようになり、音楽、映画作品などでも度々政府批判などを目的に用いられることがある。
アントニー・バージェスは、小説『1985年』のエッセイ部分において、オーウェルが「ビッグ・ブラザー」の名前のアイディアを第二次世界大戦中の「ベネッツ(Bennett’s)」という会社の通信教育の広告から得たことを語っている。当初のポスターは、温和そうな老人のJ・M・ベネット自身がガイダンスと志願者への支援を申し出る姿を、「あなたの父親にならせてください(Let me be your father)」というフレーズとともに描いたものだった。バージェスによれば、ベネットの死後、彼の息子が会社を引き継ぎ、ポスターも息子のものに入れ替わって(彼は威圧的で厳格そうな外見で、父親の優しげな物腰とは対照的だった)、文章は「あなたの兄にならせてください(Let me be your big brother)」になっていたという(※1)。
付け加えて、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のダグラス・ケルナーから、ビッグ・ブラザーがイオシフ・スターリンを描いているという見解が示されている(※2)。また別の理論は、ビッグ・ブラザーのインスパイア元を、1945年までイギリス情報大臣を務めたブレンダン・ブラッケンだとしている。オーウェルはブラッケンの下で、BBCインド部局に勤務していた。ブラッケンは習慣的に、彼の職員たちから彼のイニシャルで「B・B」、キャラクターとしてのビッグ・ブラザーの略称と同じ呼ばれ方をしていた。オーウェルは戦時中の検閲制度を、そして(イギリス情報省の最高レベルから、そして特にブラッケンのオフィスから来ていると思しき)情報操作の要求を忌み嫌っていた(※3)。
オセアニアの独裁者の原型には、スターリンのほか、第一次世界大戦中のイギリス陸軍大臣ホレイショ・ハーバート・キッチナー(のポスター)も挙げられる(※4)。彼らの風貌と行政手法は、小説のビッグ・ブラザーの描写に部分的に合致している。
※1 Burgess, Anthony. 1985. — United Kingdom: Hutchinson, 1978. — 272 с.
※2 "From 1984 to One-Dimensional Man: Critical Reflections on Orwell and Marcuse". Archived from the original on 29 August 2011.
※3 Crick, Bernard R. (1980). George Orwell: A Life. Boston: Little, Brown and Company.
三橋貴明 - 自著および公式ブログのタイトル『新世紀のビッグブラザーへ』は、本タグが由来。
MGSV - 作品内の時代が「1984」年であることやビッグブラザーをモチーフにした演出が多数登場している。因みに主人公である「ヴェノム・スネーク」は「ビッグ・ボス」と呼ばれることもあるが、ビッグ・ブラザーもビッグ・ボスもイニシャルが「B.B」である
BigBrother - タイトルがこの人物を元にしており、歌の内容自体も「1984年」とリンクしている。
モモフレンズ、ビッグブラザー様:当記事解説のビッグブラザーを元ネタにしたと思われるゲーム作品ブルーアーカイブのキャラクター。名称以外の設定にはさほど関係がない。