概要
『遊戯王VRAINS』のAi(アイ)×藤木遊作のカップリング。
主人公とそのパートナーイグニスのカップリングであり、本作は彼らの関係性の変化が大きな要素となっている。
3期『Ai編』は章を通して二人の繋がりに焦点が当てられており、117話~120話の最終4話は彼らの関係性が集約されたエピソード群といえる。
本編
※終盤までのネタバレ注意! |
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1期『ハノイの騎士編』(1話~46話)
共通の敵であるハノイの騎士を倒すために手を組むこととなった二人。だが、物語当初は護衛と人質の契約関係に過ぎず、お世辞にも仲が良いといえる関係ではなかった。
とくにAiが本来の体を手に入れる12話までは、真意を見せないAiに対し遊作が辛辣な言葉をぶつける場面も多く、利害の一致以外に二人を結びつけるものはなかった。
データ喪失により自身に纏わる記憶を無くしていたAiに、遊作は「Ai(アイ)」と名付ける。「Aiだからな」という安直なネーミングだが、当のAiはストーリーが進むにつれてその名前に愛着を示すようになる。
二人のターニングポイントとなるのが、41話でのリボルバーとのデュエル。
リボルバーから、ハノイで回収したAiのデータに記憶関連のデータは含まれておらず、「Aiの記憶は最初から失われていない事」「Aiが遊作の思考パターンをもとに生まれたイグニスである事」が明かされる。
1話以来Aiが遊作にずっと嘘をつき続けてていたことが発覚するも、遊作は「Aiに対し絆を感じたことはなく、ただの人質である」としてリボルバーの告げた真実を切り捨て、デュエルを続行する。
遊作は勝利するために、成功の確率が低いことを承知でストームアクセスを行うも失敗。
右腕が千切れた遊作はボードから落ち、もはやこれまでと諦めかけるが――その瞬間Aiに腕を掴まれる。Aiはそれと同時に千切れた遊作の右腕を己のデータの一部で再生、ボードを操縦すると同時にストームアクセス内で遊作を守る盾へと姿を変える。無論、データの暴風であるストームアクセスに体ごと突っ込むのは特攻と変わりない自滅行為であり、自己犠牲的なAiの行動に遊作は驚きを露にする。
遊作「だが、そんなことをすればお前は…!」
Ai「うるせえ!俺様なりの償いだ!」
Aiの決死の行動によって、遊作はストームアクセスを成功させる。形勢逆転したものの、デュエルは中断されてしまう。
43話で彼からイグニスが生み出された理由と、ハノイがイグニス殲滅を掲げる理由について語られ、遊作はハノイの塔を止めるべくリボルバーと再戦する。その際、Aiは遊作に対し「俺はずっとお前を利用してた。でもそれは、ただ故郷に帰りたかったからなんだ! ただ仲間のもとに帰りたかっただけなんだ!」と必死に訴えた。
46話にて遊作とAiはリボルバーとのデュエルに勝利し、ハノイの塔完成を阻止する。
過去を清算した遊作は、Aiに対し「これでお前は自由の身だ」と彼を縛っていたロックプログラムを解除。Aiは別れ際、気の利いた別れの言葉として、復讐という過去の呪縛から解き放たれた遊作を表すように「人の振り見て我が振り直せ」と返し、それを聞いた遊作は「良い言葉だ」と微笑む。
夜光虫が光る美しい夜の海、『スターダスト・ロード』を眺めながら、遊作とAiは穏やかに別れたのであった。
2期『イグニス編』(47話~103話)
種族も暮らす世界も異なり、もう二度と互いの人生が交差する事のないように思えた二人だったが、「サイバース世界の壊滅」「草薙仁の意識データを奪ったサイバース族使いの敵」と、各々の世界で異変が発生。新たな脅威に立ち向かうべく、遊作は戻ってきたAiと再び手を組むこととなる。
67話にて、遊作を見定めようとしたアースに二人はデュエルを挑まれる。なおアースとコンタクトを取る直前、Aiはロボッピに対し「お前のご主人様は俺がいなきゃ何にもできないんだぜ」とまで評しており、この時点では遊作を心の底から対等な相棒とは認識していなかった様子。
だがアースとの問答のなかで、遊作が発した「俺達は自らの意思で共にいる。それを相棒と呼ぶのなら…好きに呼べばいい」にAiは感激。「うぅ~Playmaker…もう!素直じゃないんだから!」とはしゃぐAiに対し、遊作はそれを否定しなかった。(なおアースはイグニス内で一番の知恵があるAiの選んだ人間を見定めるべく接触したのだが、当のAiはその意図を理解していなかった。)
その後SOL社上層部がアースを解体し、Go鬼塚を使い潰しにした件に遊作は激しい憤りを見せると同時に、直面してきた人間とAIの生存競争の有様を踏まえて『人類は種として精神的に未成熟であり、現時点では人類とイグニスは共存できない』と結論付ける。
遊作はAiや不霊夢にボーマンとの決戦後は人の手の及ばぬ場所へ身を隠すよう勧め、Aiに「そんな場所あるのかよ?」と問われた際には「(逃げる場所が)なければ作ればいい。そのためなら、俺も草薙さんも協力する」と答えた。
ボーマンとの最終決戦にて、彼が創造したシステム「ニューロン・リンク」を破壊するために、Aiはシステムへ特攻。自分の命と引き換えにしてニューロン・リンクへ壊滅的なダメージを与える。
Ai「Playmaker!倒せ、ボーマンを!!そして世界を救え!俺がいなくなっても泣くなよ。じゃあな、Playmaker…!」
その後、幸いにもロボッピの中に残しておいたAiのバックアップが起動し、Aiは無事に遊作の下に帰還する。
だが既にボーマンに統合されていた他のイグニス達は救出できず、ボーマン撃破後にAiはイグニス唯一の生き残りとなる。遊作にかつて言われた通り、Aiはその行方を告げずに人の手の及ばぬ場所へ姿を消したのであった…。
3期『Ai編』(104話~120話)
Ai「みんな。俺は覚悟を決めた」
その行方を眩ませていたAiだが、104話から青年の姿を用いて現実世界で暗躍し始める。
AiはSOL社トップのクイーンを襲撃。その意識データとマスターキーを奪った後に、もう1つのマスターキーを持つ財前晃に対して犯行声明を残す等、これまで見せてきた人間との共存姿勢から一転して敵対姿勢を取った。
Aiが人を傷つけた事実に遊作は激しく動揺すると同時に、「だが、俺はAiを信じたい…!」と震えた声で零し、Aiと共に眺めた「スターダスト・ロード」に訪れ、相棒のいなくなったディスクを沈痛な面持ちで見つめAiの名を呟くなど、深い葛藤が描写される。悩みぬいた末に、遊作はAiがこれ以上罪を重ねないよう、相棒としてAiを止めることを決意。Aiとの対峙を覚悟する。
最終4話
- 117話「交わらない道」
Ai「どうだ?現実で会うのは初めてだったよな。まるで人間みてえだろ?」
遊作はAiの指定したSOL社工場へ向かい、現実世界で初めて人間の姿のAiと出会う。
そこでAiから『自分の意思と外見を複製したコピー体を、世界へ大量にばら撒く』計画を明かされる。意思を持つAIが世界にばら撒かれれば、急激な変化が引き起こされ、多くの人々を傷つけかねない。ロスト事件を通して急激な変化の危うさを知っている遊作は、当然Aiの計画を反対する。Aiに全てを返して姿を消すよう迫る遊作だったが、Aiは既にコピー体が起動するよう計画を実行していた。
遊作は「俺に自分のやっていることを止めてほしくて呼んだんじゃないのか」と問い詰めるも対話でAiを止めることは叶わず、またAiが人々の意識データを預かっていることから、提示された条件を呑んでデュエルする他なくなってしまう。
デュエル開始直後、遊作はAiに「サイバース世界を隠し逃走を始めた5年前から、ハノイへの復讐を目指すよう、陰から自分の人生に干渉し続けていた」のではないかと尋ね、その事実をAiに肯定される。
接触した当時は「ハノイを倒す」「自分の身を守る」「仲間のもとへ帰る」の三つを達成するために、遊作を利用していたAiだが、相棒としての関係を築き、また同胞を喪った今となっては遊作をたった一人の友達と形容した。
- 118話「無謀な提案」
デュエルする中で、Aiのコピー体の起動と同時にAi自身の意思が分割され消滅することが判明する。
勝敗にかかわらず自身が消滅するその様は、大掛かりな自殺と呼べるものであり、計画の全貌を知った遊作が「俺に死にざまを決めさせようというのか?」と言った際、Aiはそれを肯定すると同時に「最後はお前と共にいたいんだよ」と返した。
窮地に追い込まれようと、Aiを止めようと懸命に呼び掛ける遊作。だが仲間のイグニスを全員失い、打ちひしがれるAiにその声が響くことはなく、やがてAiは一連の騒動を引き起こした経緯を語り始める。
- 119話「壊れゆく自我」
Ai「お前、俺に何が起きたのか知りたがってたな。勝負がつく前に話しとくよ。お前には全て知っておいてほしいからな。俺達イグニスの本当の運命について……」
それはAiが単体で生き残った場合、Aiの存在そのものが人類の滅亡を招くというもの。何万回シミュレーションを繰り返そうとその結果は変わらず、Aiは残酷な現実に絶望すると同時に、AI故の高慢さが己の内に芽生え始めている事に気付く。そうした傲慢さを抱える自分は将来ボーマンやライトニングのような思想になりかねないと危惧し、Aiは己が望まぬものに成り果てる前に命を絶つことを決意。かつての仲間たちを敵に回してまで自死する覚悟をしたのだった。
お互いにライフが風前の灯となったデュエル終盤、無敗の遊作も勝つ算段がないと判断したAiはある提案をする。
Ai「俺と一緒になろう。お前の意思をデータ化して俺と融合するんだ。俺を止められるのは、お前だけだ。俺と一緒になれば寿命なんてものも関係ない。きっと俺とお前ならボーマンやライトニングとは違う未来を切り開ける」
ネットワークの中ならば、寿命にも地球環境にも縛られることなく、永遠に二人で生き続ける事ができると考えたAiは、その判断を遊作に委ねた。
- 120話「繋がる世界」
Aiの提案に対し、遊作は悲痛な表情で「もし俺とお前が一つになろうと、それはお前が求める答えにはならない」と拒んだ。
二人が一つに混ざり合い、個という境界線を失えば、遊作でもAiでもない別の存在になってしまう。それはAiが求める「二人で生きる」答えにはならないのだ。
リスクを見過ごせないAIゆえに、絶望のシミュレーションを覆す絶対的な『答え』を求めるAiに対して、遊作は「生きることに答えはなく、この世に絶対的なものはない」と自身の死生観を語る。
そして絶対的なものがない代わりに、生きていく中で残るものは『人と人の繋がり、何かと何かの繋がり』であひ、絶え間なく繋がり続けることこそが命であると説いた。
だが、何万にも上るシミュレーションを経て『答え』を探し続けることに疲弊していたAiは「けど、俺はそんな答えのない戦いを続けるつもりはない。まあ、戦う気持ちが萎えた俺は、やっぱり消える運命にあるって事だな」と悲しげに返す。
遊作のライフが尽きるかと思われたラストターン、Aiの発動した『Ai打ち』がトリガーとなり、遊作は逆転勝利する。仮に『Ai打ち』を使わなければAiが勝利しており、どちらが勝利してもおかしくない激闘だった。
Aiの真相
敗北したAiは、遊作に最後の真実を語る。
人類滅亡を回避すべく、何万回もシミュレーションの未来を生きたAiは、『戦車の襲撃からAiを庇った遊作が銃で撃たれ、絶命する』場面を目の当たりにする。
Aiが生きている限り、遊作はAiを庇い、その末に命を落としてしまう――Aiが人類と敵対してまで、今回の騒動を引き起こした本当の理由。それは己の存在を消し、遊作が生きられる未来を導くためだったのだ。
Aiが選べなかった未来を知り、遊作は腕の中で消滅していく彼の言葉に耳を傾ける。
Ai「なぁ。最後に一つだけ聞いていいか? 俺のAiって名前…お前は適当に付けたんだろうけど、俺はすげぇ気に入ってたんだ。今、この名前に何か意味があるとしたら、なんだと思う?」
遊作「Aiは…人を愛するのAiだ」
Ai「俺もそう思う。今ならその意味が何となく分かる気がする。じゃあな、Play…遊作、愛してたぜ…」
電脳世界の英雄ではなく、唯一無二の相棒である遊作に向けて、Aiは愛を告げて消滅していった。
現実世界へ戻った遊作を待ち受けていたのは、Aiの亡骸と自身を囲むようにして倒れる無数のAiのコピー体だった。胸を衝く目の前の有り様に、遊作は悲しみに顔を歪めてAiの亡骸を抱え、その名前を叫んだ。
それから3ヶ月後、遊作は誰にもその行方を知らせず何処かへ旅立った事が示される。LINK VRAINS内を駆ける遊作の姿、そして何処かのネットワーク空間で目覚めるAiの姿を映して物語は終幕した。
これらの描写に関しファンから様々な予想が挙げられていたが、2022年9月、デュエルリンクスにて一つの回答が示される。
デュエルリンクス
KONAMIより配信されているゲームアプリデュエルリンクスでは先輩同様に『Playmaker&Ai』のセットで2022年9月に実装された。
VRAINSワールドは本編の後日談となっており、最終回で旅立った遊作の行方や、復活したAiの謎について回答が与えられている。なお彼らをゲットするためにはステージ10に到達する必要がある。
※以下、ネタバレ注意 |
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Ai「よう… 久しぶり~」
なんと遊作とAiが既に再会していたことが判明。
3ヶ月以上消息を絶っていた遊作は、LINK VRAINS内にAiの気配を感じ取り、Aiを探し回っていたと判明。草薙に頼まれて遊作を捜索していたソウルバーナーに二人共々発見される。なお3ヶ月以上Aiを探し回った遊作曰く、リンクスのAiはコピーでもバックアップでもないらしい。Ai自身も何故自分が復活したか心当たりがない模様。
人前では「Aiちゃんふっかーつ!!」と以前と変わらぬ振る舞いを見せるAiだが、本心では自身の存在によって招かれる『遊作が絶命する未来』を今も不安視しており、遊作に対して「俺の気持ちはお前と闘ったあの時と同じだ」と打ち明ける等、そのトラウマは未だ払拭されていない様子。
それに対し、遊作は自分たちの努力により人類滅亡のシミュレーションが塗り替えられてきた事実を挙げる。Aiは結果論に過ぎないと反発したものの、遊作はそれを肯定したうえで『未来を作るのは予測ではなく、自分たちの行動の結果』と断言。言葉を失うAiに対して、遊作は有無を言わさぬ剣幕で「俺と共に生きる道を探すんだ!」と告げ、彼らは再び相棒として共に歩み始めるのであった。
ちなみに遊作はデュエルリンクスで活動する目的のうち、「Aiを守ること」を最も重要としている。
イベント『運命の弾丸 リボルバー!』では「俺はもう二度と過ちは繰り返さない! 俺は今度こそAiを守ると誓った!」と言い放っており、その強い覚悟をプレイヤーにも見せつけた。
二次創作において
最終回での悲しい結末もあって再会IFが多く投稿されている。なかには『藤木愛』等の戸籍を得て人間社会で過ごしている作品も見受けられる。
- 人外×人間のカップリングでもある。Aiは学習元の遊作に倣って男性的な言動や振る舞いをしているが、染色体を持たないAI故に厳密には生物学上の性別は存在しない。生殖も不要であり、そうした生殖に伴う肉欲も無いために性自認に対する考えが人間と異なる可能性が高い。(103話でもAIに肉体的欲求がない事が触れられている。)
余談
- 二人の名前を繋げた『Ai love you(遊作)』で『I love you』となる。
- 二人の関係性の果てを描いた最終4話は、OCGパック『サイバーストーム・アクセス』の発売記念にYoutubeで期間限定配信された。
- 2024年開催の遊戯王デュエルモンスターズ決闘者伝説の声優ステージにおいて、藤木遊作役の石毛翔弥氏は「Aiは…人を愛するのAiだ」を本作の名シーンに選出している。