可動橋とは、橋の下を流れる河川、運河などを航行する船舶のために、橋桁を動かすことができる橋である。
概要
橋を動かす必要性
橋を動かすというのは、よくよく考えれば不思議というか不自然なことである。
橋脚は川の流れに耐えるために、橋桁は通行の安全を保証し、より多くの人や物を通行させる為に出来る限り頑丈である必要があるし、文字通りビクともしないものの例に「石橋を叩いて…」という慣用句もある程である。
とはいえ、文明が発達し、河川や運河をより多くの人や物が行き交うようになると、これを運ぶ船は技術の許す限り大きくなる事は自明の理である。
が、多くの人は疑問に感じるはずである。
わざわざ動く橋じゃなくて、船を通せる大きさのでっかい橋を架ければいいんじゃないの?
と。古代ローマの水道橋のような実績があることを鑑みれば不可能ではない筈。
ところがどっこい、20世紀初頭辺りまではそのような力技はあまり好まれなかった。
というのも、当時の陸上交通の主流だった馬車は実は登坂力が弱く、仮に高さがある橋を架けて
もその前後の坂が急であれば登るのは難しかった。
また、鉄道の場合はもっと条件が厳しく、様々な要素を考えれば10~25‰(1000mかけて10~25m登る勾配)程度に抑えておきたかった。
反面、「下を船が通る場所に架かる橋」といえば大体が土地の確保や大規模工事が難しい市街地か港湾部で、長く緩やかな坂を作ることは現実的ではなくなった。
そこで、橋桁を可動式とした橋が作られるようになったわけである。
構造
代表的な構造は次のとおり
跳開橋 跳ね橋
- 橋桁を跳ね上げるように動く
- 代表的なものは英国 ロンドンの「タワーブリッジ」、東京 築地の「勝鬨橋(跳開停止)」や、ヴァン・ゴッホ『アルルの跳ね橋』に描かれた「ラングロワ橋」など
- 同様のものが城郭の堀を渡る橋に用いられた。これは船舶とは関係なく、使用しないときに跳ね上げておいて敵の侵入を防ぐためのものである
昇開橋
旋回橋
- 橋桁が水平方向に回転し、船舶の航行時にはそれを妨げない角度になる
- 東京 大田区の「羽田旋開橋」など
引込橋
- 橋桁が伸縮する
…など数種類が存在する。
連絡船の可動橋
河川などに架かる橋梁以外にも、鉄道連絡船に車両を積み降ろしするための設備も可動橋と呼ばれた。
これは、潮位の変化や、積載量による喫水の上下によって、岸壁に対して連絡船の車両甲板の高さが上下するためで、この変化に対応するために、上下に動く橋桁が岸壁と連絡船とをつなぐ桟橋として使われたためである。