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概要
「徳川将軍が女で、大奥が男の園」という、男女逆転設定のパラレル時代劇漫画。
江戸時代「若い男のみがかかる伝染病」により男の数が激減し、三代将軍徳川家光以降より女性になった将軍達と、彼女らにかかわる大奥の男とのドラマを描く。
史実や俗説からネタを拾いつつ、女将軍ならではの苦悩なども描かれている。
男女の社会的役割が逆転している分ジェンダーについて考えさせる描写もある。
作者の趣味なのか、若干のBL・百合風味シーン、食の蘊蓄シーンもある。
連続テレビドラマ化、2度の映画化もされた。
本作の設定
- 徳川将軍は3代家光までは史実通り男であったが、上記の伝染病(作中では「赤面疱瘡」という架空の病気が設定されている)により男の家光が死亡、彼の隠し子である娘・千恵が家光を名乗って将軍につき、以後将軍は女性のみとなる。
- 男性の数が女性の4分の1ほどしかいない世のため、世の中の多くの仕事が男から女に取って代わられた。そのため史実では男性である大名達も女性である。
- もともと千恵が父の影であった経緯もあり、武家などの家督を継ぐ女性は本来の女性としての名前の他に「男名」(これが史実の将軍や大名と同じ名前になっている)を持ち、公の場はもちろん家族相手でもその名で呼ばれる。
- 男は子種を持つ宝とされ仕事も家事も育児もせずに済む一方、種馬扱いで金銭で貸し出されたりもする。
- 夫を持てるのは身分や金のある女性だけで、庶民の多くは種買いや夜這いで子供を作る。ゆえに数百~数千の男性を囲う大奥は将軍の威光の証とされる。
- 11代家斉の政策で赤面疱瘡撲滅後は、旧来通り男子相続に改めさせた。庶民も力があり若死にする心配のない男性に仕事を任せるようになり「男女再逆転」の世になった。
主な登場人物
並び順は時代順だが、作品の登場順とは異なる。CVはドラマCDのもの。
徳川将軍
- 徳川家光/竹千代
男女逆転前の最後の男性将軍で三代将軍。男色家で女性に興味がないが、プレッシャーで歪み
行きずりの女性を強姦して千恵を儲けるが赤面疱瘡で若くして死亡。
上記の家光の暴行により出来た家光の実娘。春日局に男装させられ徳川の血を繋ぐための器に祭り上げられた。当初は荒れていたが、有功との出会いで立ち直り女将軍として父の名代を名乗る。最愛の有功との間に子はできなかったが、男側室達との間に3人の娘をもうけ27歳で波乱の生涯を閉じる。
- 徳川家綱/千代姫
千恵の長女で四代将軍(実際は五代目)。政に関心が無く「左様せい」で何でも片付ける。父代わりである有功に想いを寄せるようになるが…。跡取りができないまま死去。
- 徳川綱吉/徳子(映画版:菅野美穂)
千恵の三女、家綱の異父妹で五代将軍(実際は六代目)。童顔で色気たっぷり。跡取り娘の松姫が幼くして死んだことで世継ぎ作りに追われ精神的なバランスを崩していく。
- 徳川家宣/(女名は不明)
綱吉の姪(千恵の次女の娘)で六代将軍(実際は七代目)。控えめな人格者だが病弱。名君とたたえられるも将軍就任後数年で死去する。
- 徳川家継/千代姫
家宣の娘で七代将軍(実際は八代目)。母の死去に伴い幼くして将軍になるが母同様病弱で数年で死去する。
紀州徳川家出身の八代将軍(実際は九代目)。質素と合理性を好むがけっこう男には手が早い。
彼女の代には既に女が日本社会を支配するのが当然になっていたが、あるときその経緯に疑問を抱き真実を知ることからこの物語が始まる。
真実を知った後は赤面疱瘡を撲滅するため数々の対策を立ち上げる。
「中興の祖」として後の世代にも讃えられている。
- 徳川家重/福姫
吉宗の長女で九代将軍。不器量な容姿と言葉と排尿の障害から、知的障害者と家来には思われて馬鹿にされているが実際は正常な知能の持ち主(史実の徳川家重も障害者である)。吉宗からは認められているが、その偉大な母の影に脅えている。
- 徳川家治/竹姫
家重の長女で十代将軍。美女で利発だが調子がいい。娘の千代姫(のちの徳川家基)を設けるも、娘に先立たれた挙句、息子の将軍就任を企む徳川治済の策略によって砒素をもられその中毒症状によって亡くなる。
- 徳川家斉/豊千代(竹千代)
一橋徳川家出身の十一代将軍。作中において三代家光(父)以来の男性将軍。しかし政治の実権は母・治済に握られており、治済に精神的に支配されている。だが、御台所の茂姫の訴えによりこのままではいけないと思うようになり、読者にとっても作中の人物にとっても想定外の行動に出る。
- 徳川家慶
父に続く男性の十二代将軍。将軍でありながら、表では父の傀儡にされ奥では側室たちが毒を盛りあう様から鬱屈し、実娘の祥子を凌辱するようになる。
- 徳川家定/祥子
男女再逆転後の時代ながら、金銭事情や男子の適役不在により十三代将軍に。実父から長年性的虐待を受け、解放された後も御台所ともども毒を盛られるが表向きは不遜に振舞う。3人目の御台所・胤篤を当初は警戒するが心の通った夫婦になる。
- 徳川家茂/福子(とみこ)
紀州徳川家出身。慶喜と水戸徳川家を嫌う家定と井伊直弼の意向により十四代将軍に。聡明な人格者で臣下や和宮、帝の心までも開いていく。
徳川の家臣達
- 稲葉正勝/千熊(ドラマ版:平山浩行)
春日局の息子で家光(父)の側近。家光(父)の死後は彼及び千恵の影武者となり、謁見の際は代役を務める。
- 柳沢吉保/おもと(映画版:尾野真千子)
綱吉に少女時代から仕える重臣。すらりとした美女だが様々な計略を巡らす内面はかなりえぐい。夫も子もいる身ながら実は主君に百合な感情を持っている。
- 間部詮房/おふさ(映画版:菊川怜)
家宣の甲府藩主時代からの重臣。元は身分の低い出から取り立てられたため家宣への忠義は尋常ではない強さで、彼女以外にはツンツン。吉宗就任早々クビにされる。
吉宗に幼い時から仕える重臣。温和そうなふっくら顔に似合わず主君のために汚れ仕事も辞さない。
- 田沼意次/龍(たつ)
少女時代に家重の小姓に。家重の苦悩を知って以降は忠誠を尽くし大御所である吉宗とのパイプ役も果たす。美女だがシビアな政治感覚、貨幣経済を重視する先進的思考を持つ。吉宗から赤面疱瘡撲滅を託され、青沼を呼び寄せ蘭学研究を支援する。
- 松平定信/聡子
田安徳川家(後に松平家の養子に)。吉宗の次女の娘。祖母を尊敬しているが質素倹約など自分の好む面しかみていない。治済の策で将軍候補から外されるが、田沼のせいだと思い込み、彼女を憎むように。
- 徳川治済
一橋徳川家。吉宗の三女の娘。権力掌握のため多くの人間を陥れ、退屈しのぎに母姉から実孫まで毒殺したサイコキラー。
- 阿部正弘/真佐女
男女再逆転後の世では希少な女性の幕臣。家定を家慶から守り、開国後の日本のために奔走するが、若くして病死する。
- 徳川慶喜
水戸徳川家から一橋徳川家の養子に。十四代将軍の座を家茂と争った。英才な美男子だが人への思いやりが無く家茂に見限られる。
- 勝海舟/麟太郎/義邦
正弘から才を買われ海軍に。家茂の人格に魅せられ幕府と開国のために働く。
大奥の人間
- 春日局/お福(ドラマ版:麻生祐未)
家光(父)の乳母。大奥を作った女性。戦の無い世と溺愛する家光の血を繋ぐことへの執着が強く、そのためには血生臭い手段も選ばない。
公家出身の元僧侶で無理矢理還俗させられ千恵の側室となるが、やがて彼女と惹かれ合い立ち直らせる役目を果たす。大奥総取締として大奥の基礎組織や催事を作り上げた。
綱吉の父で千恵の側室。元は有功付きの小僧。娘の徳子を溺愛するあまり彼女に自分の考えを押し付け、道を踏み外していく。
- 村瀬正資
有功の世話係だが実は春日局からの監視役。後に御右筆に命ぜられ大奥の日記『没日録』を執筆。『没日録』は男女逆転のや大奥の歴史を記した希少な書として後々にも取り上げられる。
- 右衛門佐/水無瀬継仁(映画版:堺雅人)
公家出身で有功に面影が似ている。綱吉の下で大奥総取締を勤め桂昌院と対立する。世継ぎの責務に押し潰される綱吉に男女の愛を説き彼女と結ばれる(映画版では少々設定が異なる)。
- 秋本惣次郎(映画版:柄本佑)
右衛門佐の部屋子で、彼の死後は総取締を継ぐ。かつて実妹との間に娘をもうけたが、妹への愛を諦められず他の女と結婚させられないために大奥入りしていた。よしなが漫画定番の眼鏡キャラ。
- 勝田左京/左京の方/月光院
武家の出ながら異常な母に支配されやさぐれていたが間部詮房との出会いで脱出、家宣の側室となり家継を設ける。間部に想いを寄せている。
- 江島/江島慎三郎
家宣将軍就任後の大奥総取締。人格は優れているが、不器量で毛深い容貌から女性たちから避けられコンプレックスを抱いている。
1巻の主人公。作中当時の男子では珍しく武術に優れた働き者。吉宗の御内証の方を務めたが、後に彼女のはからいにより町人として幼馴染みと念願かなって結ばれる。
大奥での水野のよき先輩。最下級の御家人出身だが、吉宗に信頼され男女の仲はなかったものの娘達の父親がわりとなる。
- 青沼/吾作
オランダ人と丸山遊女の混血児で優れた蘭方医。田沼の命で大奥内での蘭方医学の講師と赤面疱瘡の研究を任される。
- 瀧山/新之助
武家出身の元陰間。正弘からその聡明さを買われ、大奥総取締として家定を守る役目を任される。
- 近衛胤篤/(今和泉)島津忠敬/天璋院
家定の3人目の御台所。義父・斉彬から次期将軍に慶喜を擁立する命を受け降嫁。だが家定と心を通わせるうちに考えを改める。
- 和宮/親子(ちかこ)
家茂の御台所。実は男装の女性で江戸行きを拒絶した弟の代わりとして降嫁。
母の愛情に飢え孤独を抱えていたが、家茂の優しさに触れ家族と慕うように。
男装・身代わり・高貴の血筋だが世間的には存在していない人間といった設定は家光(娘)に通じるものがある。
その他
- 神原さと
家光(娘)と同年代の少女で本百姓家の長女。男手の減った村を支えるべく奮闘する。彼女を中心として農村の男女逆転に至る図が描写されている。
- 平賀源内/吉
男装で同性愛者の女性学者。赤面疱瘡の解明のため諸国を漫遊し田沼、青沼たちの手助けをするも、治済の策により梅毒をうつされる。自由な言動から人気者だが敵を作りやすい。