概要
レイテ沖海戦の勝利をきっかけとして史実と異なる歴史を歩み、米ソに分割占領されて終戦を迎えた結果、南北に分かれた分断国家となった日本と、大戦を生き延び海上自衛隊の「超大型護衛艦」となった戦艦大和の生涯を、大和と二つの日本に関わることになったある一家を軸に描き出す。
全3巻(『衰亡の国』『アイアン・フィスト作戦』『ヴィクトリー・ロード』)。遅筆と中断癖で悪名高かった著者のシリーズ作品のうち、唯一完結した作品でもある。
主要登場人物
藤堂家
- 藤堂明:第一巻の主人公。大和の砲術長として臨んだレイテ沖海戦で、流れ弾により上位者が全滅したため図らずも艦の指揮を執ることになる。帰還後には武蔵の艦長となるが、沖縄戦により妻礼子と長女貴子を喪う。武蔵と共に沖縄特攻に出撃し、台風を利用しての突入で米艦隊を半壊させる戦果と引き換えに戦死した。
- 藤堂守:全巻を通じての主人公。明の長男。大戦末期、流星改を駆ってソ連と戦うが樺太の真岡に不時着を余儀なくされ、女性電話交換手たちの集団自決に関わったことがトラウマとなり、後に妻となるサーシャと出会うまで不能に苦しむ。分断後は北日本の戦闘機パイロットとしてエースとなり、空軍元帥・人民空軍総司令官まで昇進するが共産主義国の軍人であることを受け入れられず、北日本を滅ぼすべく指導者をそそのかしてわざと南との戦端を開かせた。最期は弟の乗るやまとに自らのいるミサイルサイロの位置を伝え、攻撃により核ミサイルと共に死亡する。サーシャとの間には一児を設けたが夭折、サーシャ自身もその後病死している。
- 藤堂進:第二巻以降の主人公。大和の就役日に産まれた明の次男。母とともに沖縄から疎開中米潜水艦の雷撃を受けるが、幸運にも生き延びる。父の死後は父の友人だった堀井の家で育てられ、後に堀井の長女雪子と結婚する。海上自衛官としてベトナムに派遣され、湾岸戦争ではやまとの艦長として参加する。統一戦争時には第8護衛隊司令としてやまとに座乗し戦った。長男拓馬は航空自衛隊に入り戦闘機パイロットとなったが、北日本との国境上で「領空侵犯機」として撃墜され死亡。次男輝男は海上自衛隊でこちらも戦闘機パイロットとなり、後に南日本が開発した宇宙往還機第一号機の機長となる。
その他
- 福田定一:史実での司馬遼太郎だが、この世界では実名で執筆活動を行っている。大戦末期に北海道への移動中に守と出会う。戦後は新聞社に勤めていたものの、北海道戦争勃発にともない警察予備隊に入隊。その後も自衛官として戦車部隊を指揮するようになるが、ベトナムでの指揮を国内の左派が虐殺と非難したことから除隊を強いられる。その後歴史小説家となり、湾岸戦争時には取材のため進の乗るやまとに乗艦している。藤堂一族を描いた作中作「海の家系」の執筆者。
- 大和:戦艦大和。沖縄特攻には参加せず、代わりに攻め寄せるソ連軍の迎撃のため向かった北海道でソ連艦隊を撃滅して大戦を生き延びる。戦後は艦名をやまとと平仮名に改めた上で海上警備隊(後には海上自衛隊)に超大型護衛艦として配備されて改修を受けながら長く運用され、湾岸戦争前にはイージスシステムを搭載するに至る。
関連イラスト
「生存した大和」というネタとの親和性からか、艦隊これくしょんとのコラボネタも多く見られる。