『書き始めると早いのだが、それまでに時間がかかった』
『「遅筆がひどいのでパソコンで字を書こうと考えている」と話していたが、どちらにしても同じだからやめなさいと説得し、結果やめていた』 by「遅筆堂」井上ひさしの関係者
『え、何のことです? 九月に出す本は九月に書くんですwww』 by佐藤大輔
『アシスタント求む!助けてーー。東京近郊の方で月の内7~10日前後来れそうなやる気のある方、どうか助けて下さらんか。(中略)作業的には技術とかは教えますのでなによりやる気のある方、よろしくおねがいいたしますーーー。』 by平野耕太
「続刊が出る前に文庫版がでちまうぞ、アホ!」
「作家が毎日原稿を書けば,必ずシリーズは終わるはずよ。なのにそれはしないで,他人事の顔をして,窓に格子をはめて格子の中から遅筆を嘆いているのよ。――ばかみたい!」
「貴様らは厳しい読者を嫌う。だが憎めば,それだけ学ぶ。読者は厳しいが公平だ,作品差別は許さん。未完のタイタニア,未完の星界の戦旗,未完の十二国記,未完の学校を出よう!を,読者は見下さん。すべて―――平等に価値がありまくりだから待ってるんだよこん畜生!」
概要
小説や漫画、アニメや絵画等を手掛けるクリエイターの一部に用いる用語で、所謂「手が遅い」状態のこと。
遅くなる原因はさまざまだが、なかなかやる気が出なかったり、良い構図を思いつかなかったりこだわって何度も描き直しているうちに時間が経ってしまうのもよくあることである。
アマチュアでPixivなどの投稿サイトにアップしているだけであればさして困らないが、プロの場合や、プロでなくても同人誌活動でコミックマーケットなどの定期イベント合わせで本を出したいときは手が遅いと大変なことになる。
特にアニメーターや週刊連載漫画家の場合は手が遅いのは致命的な状態でもある。
アダルトゲームの原画家では原画が1日1枚もあがらない人は遅い方に入る。
物書きや漫画家の中には、名作をいくつも抱えているにもかかわらず遅筆と共に中断癖を併発する作家も複数いる。つーか、『遅筆』とされる作品も定期的に更新(それこそ2~3年掛かっても)されていればまだいい方で、物によっては10~20年以上続きが書かれていない作品もザラある。 もうそれ、遅筆じゃなくて未完結じゃん!って感じだが、この現象は読者の(まだ可能性は残っていると「思いたい」)願望が約半分と、作家側の言い訳が半分以上によって成り立っている。
この言い訳は、本人が病気になるなどマジな原因やプライベートの複雑な事情が関わっていることもあれば、ただ単に作家が永久の現実逃避から抜け出ていないだけな場合もあり、もちろん後者であることがバレた日には炎上やファン離れは待ったなしである。作家にとってはスランプなのかも知れないが、ファンからすればただの職務放棄でしかないからだ。
このため、ファンや関係者から「先生仕事してください(泣)」「遅筆作家は許可なく死ぬことを許されない!」「完結か死か」といった怨嗟の言葉が向けられることが往々にしてある。
遅筆な人の対応
河合克敏や衛藤ヒロユキのように自分は遅筆だとわかっているから、原稿料が少なくてもいいので連載ページ数を予め減らしていた作者もいる(モンキーターンは毎週13ページ連載、魔法陣グルグルは月刊誌に16ページ連載だったため、8年かけて16巻分しか進まなかった)。また、地獄先生ぬ~べ~の真倉翔も遅筆だったので、自分は作画をやめ原作者になったと本人が語っている。
逸話
幾多の遅筆家のなかでももっとも偉大(?)で古い部類に入るのがレオナルド・ダ・ヴィンチその人である。
旺盛な創作意欲でもって多くのスケッチや発明のアイデアを遺したものの、異常ともいえる完璧主義が災いして、依頼された絵画等を完成させること自体が珍しかった。…と、いうのが定説だが、本人の口からは「パトロンから金をせびるために仕方なく絵描きなんてやってる(意訳)」と結構なゲス発言もみられたとされる。
あの有名な「モナ・リザ」に至っては近年の研究からいくつものやり込みや魔改造の痕跡がみられている。そして、まだ完成していない。
数少ない完成品のなかでも有名なものが「最後の晩餐」(420cm×910cm)だが、これとて完成まで3年間の歳月を有した。
伝説では、いつまでたっても創作に着手しないダヴィンチに依頼主が抗議したところ、「じゃあ裏切り者のユダの顔をお前にしてやろうか!?」と逆切れしたと伝えられる。
どうしてか、遅筆家の経歴や言動を辿っていくとこの手の展開に到達することが多いのは気のせいであろうか?
(まあ、芸術家に連なる面々のほとんどがその種の気質を有してはいるのだが…)
小説家の中には、締め切りに間に合わないからという理由で予定していた作品を競合他社に載せてしまい(しかもそれが大ヒットしてしまった)、20年近くその出版社から関係を断絶されたという正直洒落になってない事例も…(今だと裁判が起きても無理はない)。
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