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 進は言った。

「さよなら、兄ちゃん。幸運を」

 守は言った。

「さようなら。進坊。もうお菓子は送ってあげられないよ」

 彼らは見事な敬礼を交わしあい、自分にとっての日本へ続く出口へ歩いていった。

────『征途』第七章

概要

作家・佐藤大輔による架空戦記

レイテ沖海戦の勝利をきっかけとして史実と異なる歴史を歩み、に分割占領されて終戦を迎えた結果、南北に分かれた分断国家となった日本と、大戦を生き延び海上自衛隊の「超大型護衛艦」となった戦艦大和の生涯を、大和と二つの日本に関わることになったある一家を軸に描き出す。

全3巻(『衰亡の国』『アイアン・フィスト作戦』『ヴィクトリー・ロード』)。遅筆中断癖で悪名高かった著者のシリーズ作品のうち、唯一完結が明示された作品でもある。

主要登場人物

藤堂家

近江を出自とする武士の家系。戦国時代徳川家康に仕え、江戸時代は旗本として過ごす。

江戸末期に下記の明の祖父である盛隆が、神戸海軍操練所で海軍士官として修練したことから、藤堂家と海軍のつながりが出来上がる。

戊辰戦争を経て日本海軍へ進んだ盛隆は日清戦争で、その子で明の父である日露戦争でそれぞれ活躍することとなる。

  • 藤堂明:第一巻の主人公。大和の砲術長として臨んだレイテ沖海戦で、流れ弾により上位者が全滅したため図らずも艦の指揮を執ることになる。帰還後には武蔵の艦長となるが、沖縄戦により妻礼子と長女貴子を喪う。武蔵と共に沖縄特攻に出撃し、台風を利用しての突入で米艦隊を半壊させる戦果と引き換えに戦死した。
  • 藤堂守:全巻を通じての主人公。明の長男。大戦末期、流星改を駆ってソ連と戦うが樺太の真岡に不時着を余儀なくされ、女性電話交換手たちの集団自決(史実の真岡郵便電信局事件)に関わったことがトラウマとなり、後に妻となるサーシャと出会うまで長らく不能に苦しんだ。分断後は北日本人民空軍において戦闘機パイロットに転身、人民空軍初のエースパイロットとなり、ヴェトナム戦争に参加した際に撃墜負傷するまで一線で活躍した。その後も昇進を続けて最終的に空軍元帥・人民空軍総司令官まで上り詰めて北日本の軍事力を事実上掌握、西側諸国から「イエロー・ゲーリング」の異名で呼ばれるまでに至った。しかし内心では共産主義国の軍人であることを受け入れられず、北日本を滅ぼすべく指導者をそそのかしてわざと南との戦端を開かせた。そうして統一戦争を勃発させると密かに指導者打倒のための行動を起こすが、それを察知した指導者側の特殊部隊などに先手を打たれて攻撃され、戦力の大半を失ってしまう。最期は数少ない部隊を指揮して北日本の核ミサイル基地を制圧、弟の乗るやまとに自らのいる基地の位置を伝えて攻撃するよう要請し、核ミサイルと共に死亡する。サーシャとの間には一児を設けたが夭折、サーシャ自身もその後病死している。
  • 藤堂進:第二巻以降の主人公。大和の就役日に産まれた明の次男。母とともに沖縄から疎開中米潜水艦の雷撃を受けるが、幸運にも生き延びる。父の死後は父の友人だった堀井の家で育てられ、後に堀井の長女雪子と結婚する。海上自衛官としてベトナムに派遣され、湾岸戦争ではやまとの艦長として参加する。湾岸戦争後は海将補として第二航空護衛隊群司令を務め、統一戦争時には無任所の海将補として退役を待つ身だったが急遽第8護衛隊司令としてやまとに座乗し、北日本赤衛艦隊との戦いや核ミサイル基地砲撃を指揮した。長男拓馬は航空自衛隊に入り戦闘機パイロットとなったが、北日本との国境上で「領空侵犯機」として撃墜され死亡。次男輝男は海上自衛隊でこちらも戦闘機パイロットとなり、後に南日本が開発した宇宙往還機第一号機の機長となる。終戦以来、兄と顔を合わせたのは1982年の南北定期会談が最初で最後となった。

その他

  • 福田定一:史実での司馬遼太郎だが、この世界では実名で執筆活動を行っている。大戦末期に北海道への移動中に守と出会う。戦後は新聞社に勤めていたものの、北海道戦争勃発にともない警察予備隊に入隊、戦車部隊の指揮官として活躍する。その後も自衛官として戦車部隊を指揮し、ベトナム戦争時は一等陸佐として機械化部隊を指揮し、海自・空自との連携でベトコン2個連隊を殲滅する戦果を挙げたが、それを国内の左派が虐殺と非難したことから陸将補で除隊を強いられた。その後は歴史小説家となり、湾岸戦争時には取材のため進の乗るやまとに乗艦している。藤堂一族を描いた作中作「海の家系」の執筆者。作中には彼以外にもハインラインなど、史実では作家として有名になった人物が多数軍人として登場する。
  • アンドレイ・バラノヴィッチ・コンドラチェンコ:ソ連軍特殊部隊であるスペツナズ隊員。通称アリョーシャ。ベトナム戦争時は北ベトナムに軍事顧問団の一員として派遣されており、北日本からの要請で一個小隊を指揮して守を救出したことで親友となる。その後は少将・参謀本部特殊戦部長となった後、湾岸戦争時には大将・軍事顧問団団長としてイラクに派遣、守と共に米海軍空母「ミッドウェイ」攻撃作戦を成功させる。ソ連崩壊後は北日本に渡って人民空軍特殊部隊の顧問を務めていたが、守の真意を聞かされ、統一戦争終盤における守の決起に参加する。
  • 大和:戦艦大和。沖縄特攻には参加せず、代わりに攻め寄せるソ連軍の迎撃のため向かった北海道でソ連艦隊を撃滅して大戦を生き延びる。戦後は艦名を平仮名に改めた上で海上警備隊(後には海上自衛隊)に超大型護衛艦〈やまと〉として配備され、改修を受けながら長く運用され、湾岸戦争前にはイージスシステムを搭載するに至った。

主要登場国家

  • 日本国(南日本):史実通りアメリカの下で再独立した日本。北海道北部にまでソ連軍の侵攻を受けた状態で終戦を迎えたため米ソによって分割占領され、留萌-釧路線以南だけを実効支配する国家として再独立する。北日本との間に勃発した北海道戦争で一時は北海道全土を喪失しかけるが、反攻でどうにか戦争前の領土を取り戻す。ベトナム戦争では自衛隊を南ベトナムに派遣し、湾岸戦争でも多国籍軍に加わっている。1994年に発生した統一戦争に勝利し、北日本との統一に成功した後の姿が物語のプロローグとエピローグで描かれる。作中では「南日本」ではなく「昔からある方の日本」「伝統を重んじる方の日本」「こちら側」などと表現される。
  • 日本民主主義人民共和国(北日本):北海道北部を占領したソ連が占領地に建国させた「もう一つの日本」。国旗は白地に赤い星。領土は留萌-釧路線以北の北海道と南樺太で、豊原を首都としている。90年代には核(作中では反応弾と表現される)搭載IRBMや旧ソ連の戦艦・空母を保有するなど強力な軍備を抱えたが、冷戦崩壊によって経済が破綻し、最終的に南日本との統一戦争に敗れ吸収される。作中では「北日本」ではなく「赤い日本」「向こう側」と表現される。
  • アメリカ合衆国:レイテ沖海戦の敗北で対日侵攻スケジュールが半年遅れた結果、日本の単独占領に失敗する。史実で広島・長崎に投下した原爆をこの世界ではソ連に対する警告を兼ねて旭川・函館に投下している。また、東側に対する牽制のため国後島に在日米軍の基地を置いている。著者の他作品同様、作中ではもっぱら「合衆国」と表現される。
  • ソビエト連邦:大戦末期に北海道北部に侵攻し、そのまま全域占領を図るが大和を中核とする日本艦隊との間に発生した石狩湾海戦で大きな損害を受け、断念する。この衝撃から史実では破棄されたソビエツキー・ソユーズ級戦艦クロンシュタット級重巡洋艦を戦後完成させ、北海道戦争ではこれを義勇艦隊として派遣し国連軍と交戦している。史実通り崩壊する。

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