藤堂守空軍元帥は口元に皮肉な笑みを浮かべて思った。
亡んでもよい国というのは存在するのだ。
そして俺は、その国の軍事力を掌握している。
────『征途』 第九章
概要
第二次世界大戦後、史実と異なり北海道の留萌~旭川~釧路以北を占領したソヴィエト連邦により、1947年8月15日に北海道北部と樺太南部に建国された共産主義国である。
国旗は「白地に赤い星」で、首都は豊原市。通称は「赤い日本」「向こう側」「豊原政権」。日本列島南部には史実通りアメリカ合衆国寄りの日本国が建国されたため、北の赤い日本と南の日本国で分断国家となっている。
1947年の建国後、南日本との間で対立を深め、1950年には日本版朝鮮戦争となる北海道戦争 / 第一次祖国解放戦争を勃発させる。この際、朝鮮半島では韓国と北朝鮮の間でも史実通り朝鮮戦争が始まるが、1953年にスターリンの死去とGHQ総司令官ジョージ・パットンの更迭により、どちらとも曖昧な形で終戦を迎えた(史実のGHQ総司令官ダグラス・マッカーサーは太平洋戦争中に戦死)。
その後は南の日本と対立しつつも発展を続け、シベリア圏から格安で輸入した資源をもとに工業化を果たし、兵器輸出などを積極的に行うことで外貨を獲得、東側諸国としては高い経済力を誇るようになった。
国民はシベリア抑留者や太平洋戦争中の日本帝国軍捕虜、少数の現地住民と、南から脱出した共産主義者達などで構成されていたが、1990年代には人口が2000万人にまもなく届く勢いとなり、首都豊原市も人口350万人を抱える大都市へと成長している。
一方で共産国家ゆえの一面も持ち合わせており、国家保安省(NSD)という秘密警察兼諜報機関による監視体制が築かれている。反体制的な言動をした者は容赦なく施設送りにしており、国外亡命を目論もうとした者などは処刑される。軍内部にも多数の政治将校と督戦隊を派遣している。
また、1950年代に時の政権主導者だった有畑角次首相とその一派を粛正し、新たな首相となった川宮勝次(元国家保安省長官)の一派による一党独裁体制が敷かれている。党の威光は大きいが腐敗の面も目立ち、党幹部の子弟というだけで医者になれた者が医療過誤を起こすのもザラ。川宮首相の息子、川宮哲夫に至っては「女子大学」の名を借りた専用ハーレムを設けたり、禁止されている南側のアニメ作品に傾倒しているのが公然の秘密となっているなど、退廃的な振る舞いが目立っている。
さらに1991年のソヴィエト連邦崩壊後、資源の格安輸入が困難となったことで不況に陥り、さらに川宮首相の老衰による死期が近づいたことで、次期首相を狙う者たちによる権力争いも起きていた。
軍事力
軍事力として、陸海空軍に該当する
- 人民赤軍
- 赤衛艦隊
- 人民空軍
がそれぞれ存在する。
装備はソヴィエトから輸入・ライセンス生産した兵器が主で、戦車はT-62やT-80の独自改良型、戦闘機はMiG-29やSu-27の独自改良型など。
人民空軍は、1990年代初頭の時点でシベリアやリビアなどから大量輸入した原油により、パイロットの平均飛行時間はNATO諸国の空軍の平均を上回っており、高い練度を誇る。保有する戦闘機の数こそ約500機と少ないが、新型機の比率が非常に高く、実働機の6割以上がMiG-29とSu-27の国内独自改良型である。さらにAWACSや特殊部隊まで保有しており、その戦力は東側最強と謳われるほどとなっている。
これらは主人公である元帝国海軍パイロット藤堂守の主導によって成し遂げられ、その手腕から彼はこの国の軍事力を事実上掌握するに至るが、彼自身は「共産主義国の軍人であること」に内心強い葛藤を抱いている。
赤衛艦隊も多数の水上戦闘艦と原子力潜水艦を保有するほか、1960年代にはソビエツキー・ソユーズ級戦艦を、1990年代にはアドミラル・クズネツォフ級空母やキーロフ級巡洋戦艦、スラヴァ級巡洋艦などをソ連から購入。それぞれ戦艦〈解放〉、空母〈統一〉、巡洋戦艦〈栄光〉、巡洋艦〈独立〉として戦力化し、強大な海軍力を有する。
根拠地は大規模港湾へと発展した真岡。
発足当初の赤衛艦隊は帝国海軍から賠償艦として接収した秋月級駆逐艦や松級駆逐艦などで構成されていた。
また、これらとは別に弾道ミサイル部隊である戦略打撃軍が1990年代に創設され、党に強い忠誠を誓う人間らによって運営されている。核兵器も装備する(劇中では反応兵器と表記)。