概要
明治日本をモデルにしたと思われる島国の「皇国」と、ヨーロッパ色の強い強大な大陸国の「帝国」との架空戦記。ジャンルは戦記浪漫とされる。
馬や重火器を戦闘に用いるのは勿論のことであるが、作中には虎のような大型動物「剣牙虎(けんきこ)」や、それを手懐ける兵科「剣虎兵(サーベルタイガース)」など、ファンタジックな部分も多い。
メイン画像は漫画版。
ウルトラジャンプにて伊藤悠によってコミカライズされたが、諸般の事情で連載終了。
原作も長期休載中という状況だったのだが、作者である佐藤大輔氏が死去。原作は未完結となってしまった。
2018年3月、作画担当の伊藤氏が、ツイッターにおいて本作の漫画版が絶版になるらしいという情報を報告。佐藤氏の著作権継承者の意思により絶版という報じられ方が広まっているが権利継承者本人並びに複数の出版関係者からの回答では絶版を決定したのは佐藤大輔氏本人であることが明らかになっている。
ストーリー
小国ながら交易によって利潤を稼ぐ”皇国”は北方の大国”帝国”によって宣戦布告も無く侵略を受けた。北方を守る剣牙虎部隊の指揮官:新城直衛は進撃を続ける帝国軍を相手に戦い続ける。
やがて、戦いは皇国内部の権力闘争にも繋がっていく。
おもな登場人物
主人公。剣虎兵第十一大隊の第二中隊中尉。帝国との防衛戦争で野戦昇進を重ねていく。
臆病だが意気揚々と戦闘をする男。将校としての資質は十分。
猫(剣牙虎)の扱いに長ける。卓越した戦術と優れた戦闘力の持ち主。
新城の猫(剣牙虎)。幼い頃から新城と一緒に過ごしている愛猫。
能力が非常に優れており、幾度に渡る北領での戦闘を生き延びている。
息がくさい。
帝国陸軍元帥・東方辺境領姫。帝国側の皇国侵略の総司令官。
フルネームは「ユーリア・ド・ヴェルナ・ツァリツィナ・ロッシナ」。
端正な容姿と高い人望の持ち主で、一級の戦略家である。
その他の登場人物
皇国(剣牙兵第十一大隊)
猪口曹長
西田少尉
隕鉄
若菜大尉
伊藤少佐
漆原少尉
兵藤少尉
金森二等導術兵
妹尾少尉
皇国(その他)
守原大将
駒城保胤
蓮乃
坂東一之丞
笹嶋中佐
羽鳥守人
帝国
カミンスキィ大佐
メレンティン
バルクホルン大尉
ロボフ軍曹
原作
全9巻。中央公論新社の「C・NOVELSファンタジア」レーベルで新書版で刊行された後、中公文庫入りした。
新書版はイラストが表紙になっているが、文庫版は変更され、剣牙虎のマークをあしらったものになっている。
新書版の1巻から7巻の表紙は塩山紀生、8巻は平野耕太、9巻は獅子猿が手がける。
漫画
ウルトラジャンプ(集英社)2004年7月号~2007年10月号連載。全5巻。
伊藤悠・作画。
「皇国の守護者」のヴィジュアル面を確立させたと言っていい作品である。実際pixivでも漫画版を準拠にしたイラストが大半である。
全盛期にあたる2007年ではナツコミにおいて連載初期のキングダムと並び評されていたほどであった。
もろもろの事情により、原作小説2巻分までコミカライズされたところで連載は終了。
余談
- 漫画第3巻の後書きによると、原作者である佐藤は同作を評して「文中にいっぱい冗談をいれている」と供述したとされている。実際、物語はファンタジー世界ではあるが、正史での出来事や風俗もとよりマンガやアニメにおけるオマージュやパロディが随所にみられる。これを受けて、伊藤が一番頭を抱えたのが幼少期のカミンスキィ大佐を男娼として買った人物の名前がマランツォフ皇弟であり、どうしたものかと考えた挙句に皇弟のビジュアルをきのこライクに表現したが、後悔したという趣旨の記述をしている。
- 上記のようにホモネタがぶっ込まれている同作だが、これがフラグとなったのか硝煙の匂いと権謀術数がメインである筈なのに漫画版から同作の世界を知った人の中には男同士の絆の要素を強く求めた女性読者が多かったとされる。佐藤本人はこの事に思うところがあったらしく、後に文庫版第1巻に収録された書き下ろし『観光資源』において一部女性の趣向に対する皮肉めいた記述をしている。