かんがえてもみろ。あのひとはなにをいっていた。俺たちの日常が拡大するってことだろ。
そうだよ、わからんか。毎日、味噌汁飲んで納豆喰ってる俺たちが、箸と茶碗もったまま太陽系宇宙を支配する、そういっていたんだよ。
(第2巻『この悪しき世界』より抜粋)
概要
遙かなる星とは、架空戦記作家佐藤大輔による歴史改変SFである。
舞台はキューバ危機が第三次世界大戦に発展し、アメリカ合衆国など資本主義大国のほとんどが崩壊、実質的な勝者であるソヴィエトも大きな痛手を負った世界。
奇跡的に大戦を生き延びた日本は、いずれ訪れるであろう第四次世界大戦から日本人だけでも宇宙に逃すため、宇宙開発に狂奔する。
宇宙開発を主題とし、そこに関わる人々を群像劇的に描写している。
既刊3巻(第1巻『パックス・アメリカーナ』、第2巻『この悪しき世界』、第3巻『我等の星、彼等の空』)。第4巻の発刊も予定されていたが、続刊は作者の死を以って永遠の中断を余儀なくされている。
タイトルは『遙かなる星』であり『遥かなる星』は間違いなので要注意。
主要登場人物
- 北崎望:この世界の大企業である「北崎重工」の創業者。資本主義の走狗を自称する偽悪者。亡き妻との「違える事の許されない」約束を果たすため、宇宙産業に惜しみない投資を続ける。
- 黒木正一:エンジニア。戦前の幼少期に北海道で見た満天の星空に魅せられ宇宙開発に奔走する、肥満体の巨漢。著者の人物像が色濃く反映されており、作中における著者のアバター的人物。
- 原田克也:自衛官。帝国陸軍時代にV2ロケットの発射実験に立ち会ったことを契機にロケット技術に関わるようになる。息子の和己は宇宙開発事業団に所属し、宇宙港JSP-3建設の責任者となる。
- 屋代幸男:宇宙開発マニアの一般人。航空自衛隊を経て宇宙船パイロットとなった息子昌幸を事故で失ったことをきっかけに、宇宙開発の現場に関わっていくようになる。
主要登場国家・勢力
- 日本国:諸々の偶然により第三次世界大戦を生き延びてしまい、他の西側主要国の壊滅によって自由主義陣営の盟主に担ぎ上げられる。しかしいずれ第四次世界大戦が勃発した際に日本滅亡を避ける方策が無いという結論に達し、自分たちだけでも生き延びるべく地球外への脱出路を求めて宇宙開発に狂奔する。
- アメリカ合衆国:第三次世界大戦時の核攻撃で壊滅し、東西に分裂した連邦政府とその間に跋扈する軍閥から成る後進地域になり果てた。3巻では日本がトラック諸島に建設した宇宙港に対し、東米によるテロが実行される。
- ソビエト連邦:第三次世界大戦に辛勝し、西欧を席巻したもののその損害は大きく内実は火の車。結果的に新たな西側の超大国となった日本に対抗し、宇宙開発を推し進める。