概要
オタマジャクシのようなシルエットをもつ淡水性甲殻類、そのゆえ英語では「tapole shrimp」(オタマジャクシのエビ)と呼ばれる。生息時期は石炭紀まで遡る生きた化石として知られる。自ら鰓脚綱・背甲目に属しており、軟甲綱・十脚目に属するエビの仲間ではない。
形態
体長はおよそ2-10㎝、多くが微小なプランクトンの鰓脚綱の中ではかなりの大型。
頭部の広い甲羅は前半身を覆い、前方は3つの眼が備わっている。胴体は多数の節に分かれ、前方から途中まではヒレ状の脚が並んで、後端は2本の尾鞭が伸びている。
真の触角は退化しており、触角のように見えるヒゲらしき部分は特殊化した脚である。
生態
日本の夏では田んぼなどに発生する。雑食性で、植物やミジンコなどのプランクトンを捕食する。
何年かの乾燥すら乗り越え、水が戻れば急速に孵化するという頑強な耐久卵を産むことがよく知られている。成長は速くて寿命は2ヶ月ほど短く、いずれも生息地の長い乾期と短い注水期に適応した能力である。
日本にはおよそ5種のカブトエビが生息する。カブトエビは同種同士でも形態は多様で、同種の共通点とおよび別種同士の相違点は細部のみにあり、正確の同定は非常に難しいといわれる。
生きた化石
カブトエビは少なくとも3億年前の石炭紀から出現し、長い歴史を持つ分類群である。それどころか、一部の現生種(ヨーロッパカブトエビとアメリカカブトエビ)は2億年前の三畳紀までにも遡る化石記録をもち、正真正銘の「生きた化石」であり、「最古参の現生生物」とも言われる。
利用
耐久卵の性質を利用し、カブトエビ属の学名「トリオップス」(Triops)と名付けて飼育セットとして発売されることが有名である。水田の雑草を食べることから「田の草取り虫」とも呼ばれる。
混同
よく似た名前かつ「生きた化石」同士の故、カブトエビはよくカブトガニという分類学的に関わりのない節足動物と混同する場合が多い。
「クモ、サソリに近い」として紹介された通り、カブトガニはクモ綱と同じく鋏角類に所属し、カニどころか甲殻類ですらない。一方、カブトエビは甲殻類であるが、ミジンコやアルテミアと共に鰓脚綱に所属し、軟甲綱のエビとは近縁ではない。
関連条目
カブトガニ:混同されがちの「生きた化石」同士