概要
戦争が行われている期間中に「戦争が終わるまでの数年間もてば良い」という思想の下、極端に短いライフサイクルを想定して設計・製造された輸送機械や構造物のこと。「戦時型(形)とも呼ばれる。(wikipediaより引用)
簡単に言うと、戦争期間だけ使うことを見据え、耐久性より生産性を重んじて設計された物のこと。
多くは貧相な見た目で生まれてくるが、敗戦国の場合は人員・物資共に枯渇状態で代替品を作る余裕が無いため、やむなく戦時設計品を使い倒すことになり、むしろ戦争中より戦後復興に活躍した例が多い。
具体的な方法
- 木・竹・陶器・布・コンクリートなど別の素材を使う(銅・鉄・アルミニウム・ゴムといった戦略物資の使用量を減らす)。
- 曲面加工や削り出しなどの複雑な加工工程を減らす(工期短縮)。削り出し加工は時間がかかる。
- プレス加工の多用(同上)。
- 一定の基準の制定(同上)。
- 無くてもいい部品は作らない(使用量削減と工期短縮)。
戦時設計で有名なもの(一部)
交通
- ドイツ国鉄BR52形蒸気機関車
ドイツ技術陣の本気。耐用年数3年のはずが70年以上走っている化物機関車。
炭水車の底部を船底のような形にすることで台枠を無くし、除煙板を無くし、ボイラー上の砂箱などの形状を変えることで資材削減と工期短縮を図った。
戦後はヨーロッパ各国に流出した車両が復興を支え、コピーまでされる始末。結果、何両作られたか把握できない状態に。
通称木とセメントで造った機関車。快適装備・安全装備を極端にケチったら運用側から嫌われてしまった。ホントにセメントで作ってある。隙間風が酷く、冬場の運用は辛かったらしい。他の車両と一緒に展示された時、設計担当が時の首相東條英機に「寿命はどれくらいか」と聞かれ、とっさに「大東亜戦争に勝ち抜くまで保ちます」と応じてその場を取り繕ったという話がある。戦後に大規模改修を受けて内外共に生まれ変わり、戦後復興と高度経済成長を支えた。
- 国鉄D52形蒸気機関車
貨物輸送を担う最強の蒸気機関車として設計されるも、材料と工法をケチりすぎた結果、想定したパワーを発揮できないばかりか、走行中に自爆する事故が多発した。もちろん死者が出ており、当時の乗務員からは「爆弾の上に乗務しているよう」とまで言われた。生産能力の偽装工作としてナンバーを意図的に飛ばし、生産数を胡麻化していたことも有名。EF13同様、戦後に大規模改修を受けたりC62等に改造され、戦後復興を支えた。
- 国鉄トキ900形貨車
石炭輸送を主目的として登場した無蓋車。最大積載量を稼ぐために3軸で設計されるも、中間車輪を固定してしまったためカーブで抵抗を生み、走行不能に陥ったり脱線したりと散々な有様だった。この先天的欠陥は改善しようがなく、EF13やD52と違い戦後は早々に淘汰された。戦時設計の失敗例として語られることが多い。
大戦期に各国が建造した戦時設計の量産貨物船。詳細は記事参照。
兵器
言わずと知れたヒトラーの電動ノコギリ。MG34は優秀だが高価(357ライヒスマルク)で生産性が低かった(一丁当たり約150人)ので、プレス加工を多用した構造に変更した。そしたらMG34のおよそ半分の人員(75人)や低いコスト(250ライヒスマルク)で作れるようになった。あまりに優秀だったもんだから戦後に7.62mmNATO弾仕様に変更したMG3を作り出してしまった。
- M3サブマシンガン
通称グリースガン。当時制式採用のトンプソン・サブマシンガンの生産性が低かった&重かった&古かった為、新規に製造された。プレス加工と溶接のみで生産でき、設計も優秀。アメリカの同盟国に大量に供与され、フィリピンでは今も現役。本国でも2005年のイラクやアフガンで使われていたらしい。
通称リベレーター。1丁あたりの組立時間は7秒足らずで、「装填から発射までよりも短い時間で製造された唯一の拳銃」とも呼ばれる。ヨーロッパ各国の対独抵抗運動への支援を目的に設計された単発銃。弾丸を加速させるには短い銃身・スムースボア(滑腔銃身)の為、狙った所に飛んでいかない・撃ち続けると溶接部分から裂ける・薬莢は自動排出されないなど、欠点の盛り合わせ。まぁ近距離で1、2発撃ち込めりゃいいやと割り切るならこれで十分なのだが・・・。
前述したグリースガンのインスパイア元で、英国が生み出した元祖戦時設計短機関銃。ほぼ鉄パイプ同然の見た目と今一つな性能で悪名高かったが、その圧倒的な生産性と最低限の必要を満たした能力でWW2英国陸軍の歩兵戦闘を支えた。大戦末期にはドイツでもコピー品が生産され、戦後もこれを原型としたSMGが各国で開発されている。
日本海軍最後の量産駆逐艦。量産数は32隻と日本海軍最多であり、建造日数5ヶ月という最短記録ホルダー。未成艦と建造取り止めを含めれば合計74隻の大所帯になる予定だった。この艦級の一隻である梨は戦後に護衛艦わかばとして再就役している。
米帝様の本気。週刊護衛空母とは言いえて妙。
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粗製濫造:失敗例はこうなりやすい。