概要
土星の衛星のうち最大のもの。太陽系の衛星の中でも、木星の衛星ガニメデに次ぐ大きさであり、地球の衛星である月はもとより、準惑星の冥王星や惑星である水星より大きい。
太陽系の天体の中では、金星、地球、火星とならんで一定量・濃度(気圧)の大気におおわれているという特徴があり、この点衛星としては唯一の存在(後述)。
「寒い地球のような星」
太陽からの距離が約10天文単位、すなわち地球と太陽の距離の10倍ほど離れた土星軌道上にあるため、タイタンの地表は-180℃前後の極低温の世界であり、水は氷の岩盤となって地表面をおおっている。
タイタンの大気は大半が窒素(90%以上)、残りがメタン、水素その他から成る。気圧は地球の大気より高く、約1.5気圧。
メタンの1気圧での融点は-183℃、沸点は-162℃であるので、タイタンの高緯度地帯ではメタンは液体となり、地表の低い部分に溜まる。このように、タイタンは地表に一定量の液体が安定的に存在する、太陽系では数少ない天体でもある(他は地球のみ)。なお真空あるいは希薄な大気(低い気圧)のもとでは、融点に達した物質は液体の状態を保てず、直接気化(昇華)する(地球でのドライアイスと同じ状況)。したがってこれもタイタンの濃い大気の恩恵といえる。
タイタンでは、ちょうど地球での水の循環のように、液体のメタンが気体となって上昇し、上空で雲となり、雨として再び地上に降り注ぐ。2004年にタイタンを観測したカッシーニと、これから分離してタイタンに着陸したホイヘンスは、液体のメタンがつくる川、谷、海、湖などの地形、丸みをおびた氷の岩石が並ぶ河原のような風景を撮影した。極低温の世界ではあるものの、太陽系の天体では火星(かつて液体の水が地表にあったと推測される)とならんで、地球人にはなじみのある風景が広がる星のようである。
関連イラスト
メイン画像はどちらかというと古典的なイメージで、実際のタイタンでは、昼間の空は黄色味をおび、太陽の光度と雲の厚さからして、地球の天気の悪い日の夕方くらいだと想像される。