ヒンドゥー教
ひんどぅーきょう
現在みられるヒンドゥー教の原型であるバラモン教は、西方からやってきた
アーリア人たちの宗教がさらに、元々インドに住んでいた人々の信仰を吸収する形で生まれた。
ヴェーダ聖典に説かれる讃歌の詠唱や祭儀、高度な思弁が中心であったが、
ヒンドゥー教へと発展を遂げる際にシヴァやヴィシュヌといった特定の神に
献身的な信仰を捧げる面が強調されていく。
聖典
四つのヴェーダ(リグ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダ)をはじめとするヴェーダ聖典(ブラーフマナ、アーラニヤカ、ウパニシャッド)。
特に四ヴェーダは聖仙(リシ)が感得したとされシュルティ(天啓聖典)ともいう。
また、スムリティと呼ばれる古伝書(プラーナ文献、マハーバーラタ、ラーマーヤナなど)も聖典とされる。
マハーバーラタには宗派を超えて読まれる代表的聖典バガヴァッド・ギーターが収められている。
社会
ヒンドゥー教社会は四つのヴァルナ(階級)に区分される。
祭司階級バラモン、貴族階級クシャトリア、商人階級ヴァイシャ、
奴隷階級シュードラ。ヒンドゥー教徒でもこの四つに入らない人々がおり、
彼らはアウトカースト、ダリットとも呼ばれる。
四階級以外の人々への待遇の悪さはシュードラにも劣らない凄まじいものである。
ヴァルナはさらに細分化された個別の仕事を担当させられる
ジャーティ(出生)にわけられている。この制度をカーストともいう。
これは単なる身分制度ではなく、宗教的に定められたものであり、
ヒンドゥー教においては各人が自分の生まれた各カーストごとの仕事をするのは
神が告げる義務である。代表的聖典『バガヴァッド・ギーター』(18章47節)では
「自分のカーストの仕事が上手くできなくても、それは他人のカーストの仕事を
上手くこなすより勝る」というメッセージがクリシュナの口から語られている。
死生観
生まれ変わり、輪廻転生を信じる。前世や来世は行動とその影響(カルマ)
によって左右されるとされる。高い階級や恵まれた環境は前世での善行のおかげであり
低い階級や恵まれない環境は前世で悪行をしたせいである。
これを終らせるためには輪廻の輪から脱出する必要がある。
ここまでは仏教と同じだが、仏教とヒンドゥーでは輪廻する主体が
異なる。ヒンドゥー教ではアートマンが主体とされ、宇宙の根本原理
ブラフマンと一体のものであるとされる。この梵我一如を悟ることで
輪廻を超えることができる。ただし仏教ではアートマンを認めない。
輪廻の主体となるのは「識」や「自相続」と呼ばれるもので、
それ自体にアートマンのような超越性はない。不変不滅のアートマンと
異なり、(仏教における)輪廻の主体は業と行為によって変化し続ける。