概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』のエピソードの一つ。TCプラス1巻収録(小学六年生1977年12月号でのサブタイトルは「あとの後悔さきにたたず」であり、藤子不二雄ランド版『ドラえもん』5巻で「ボクを止めるのび太」に改題されている。また、雑誌『ぼく、ドラえもん。』18号の別冊付録に収録した際は「ボク」を平仮名にした上記のサブタイトルに改められている)。
「ドラえもんだらけ」ののび太版と言えるエピソードであり、同時に『ドラえもん』でよく見られる「過去改変」をテーマにしたエピソードでもある。
ストーリー
道端でジャイアンとスネ夫がポルシェ935ターボのラジコンで遊んでいた。しかしのび太はそんなことはお構いなしに、「カップラーメン10個を完食する」という夢を実現させようとしていた。
しかし5個目に差し掛かったところで満腹になってしまう。こんなことになるならプラモデルを購入すればよかったとのび太は自分を責め始めた。
その様子を見ていたドラえもんが事情を聴くと、のび太曰く運良く親戚の叔父さんから小遣いとして1000円をもらい、所持金と合わせて1300円になったので、思いっきり使い果たそうとプラモデルとカップラーメン10個のどちらを購入するかを考えた末、カップラーメン10個を選んだのだという。
ドラえもんは呆れながらも「やったことは仕方ない。これからはしっかりして…」と言いながらのび太を諭すが、彼は妙に自信満々な顔をしていた。
何故なら、のび太はこうなってしまうことを想定しており、「タイムマシン」で1時間前の自分を説得し、プラモデルを購入させる秘策を考えていたのだ。
それを聞いて慌てたドラえもんは「過去を勝手に変えるのはいけないことなんだぞ!いいか!皆が自分に都合よく過去を変えようとしたらどうなる!?歴史がめちゃめちゃにこんがらがっちゃうぞ!」と、自分自身も過去に遡り歴史を変えようとしていることを全否定する発言をしながらのび太を止めようとする。
しかしのび太は「大げさだな。歴史とラーメンと、何の関係があるの?」と言いながらタイムマシンに乗り込む。ドラえもんは仕方なくのび太について行き、「歴史には勢いがあって簡単には変えられない」と説明するも、のび太はやはり耳を貸さない。
ドラえもん達が1時間前に到着すると、1時間前ののび太が小遣いを貰って上機嫌になっていた。そのまま1時間前ののび太は「プラモデルは子供っぽいからカップラーメンにしよう」と計画し、それを見た現在ののび太は過去の自分に「プラモデルにしろ!」と言い放つ。
現在ののび太がカップラーメンを購入した顛末を話し、プラモデルを購入するよう説得すると、1時間前ののび太は納得してプラモデルを購入することを約束する。しかしドラえもんとのび太が現在に戻っても、過去が変わったはずなのにカップラーメンがプラモデルに変化することはなかった。
不審に思ったのび太は再びタイムマシンに乗り込み、先程より少し後の時間へ向かった。1時間前ののび太は既に買い物に出かけていた為、ママやしずかに自分の行方を尋ねたが手がかり無し。ようやくスネ夫から「のび太が模型店に入ろうとした時にもう1人ののび太が現れ、口論になってスーパーマーケットへ行った」という情報を入手する。
のび太が慌ててスーパーへ向かうと、そこには2人ののび太がカップラーメンを購入しようとしているところだった。
1時間前ののび太の前に現れたもう1人ののび太は、現在より更に1時間後、すなわち「プラモデルを購入したのび太」だったのだ。1時間後ののび太曰く、プラモデルを購入したはいいが結局完成させることが出来ず、それならカップラーメンを購入した方がマシだと考え、自分自身がまだプラモデルを購入する前の時間に来たという。
「いい加減に作ったからだ!」と言う現在ののび太に対し、1時間後ののび太が「カップラーメンなら食べない時にしまっておける」と説得するも、現在ののび太は「それじゃまとまった金を使う意味がない」と譲らない。
自分同士の争いに辟易した1時間前ののび太は「はっきりしてくれ!プラモ!?ラーメン!?どっち!?」と怒り出すが、話し合いは決裂してしまう。その結果、いつもの空き地でのび太同士の大喧嘩が始まってしまった。
1時間前ののび太も巻き添えにした大騒ぎになってしまうも、喧嘩の途中で新たに全身傷だらけになった3人ののび太が現れた。彼ら曰く喧嘩を止める為にこの時間にやって来たらしい。
その後、野比家に戻った3人ののび太はドラえもんに「喧嘩はやめたけど、こんがらがって誰が何時間前に帰るのか分からなくなった。何も無かったことにして、ふりだしに戻せない?」と相談する。その話を聞いたドラえもんは困惑しつつ「それは無理だ。これだけもつれると、完全に元通りには戻せない」と言う。
3人ののび太はタイムマシンでそれぞれの時間へ戻って行った。しかしこんがらがってしまった歴史はやはり元に戻ることは無く、最終的にのび太はカップラーメンのプラモデルを購入したことになってしまったのだ。
のび太は疲れ切った表情でカップラーメンのプラモデルを作り出し、その様子をドラえもんは微笑みながら眺めていた。
余談
上記のエピソードは大山のぶ代版及び水田わさび版アニメで映像化されている。前者は1997年、後者は2011年に放送された。
- 1997年版
基本的には原作通りの展開だが、こちらは3人ののび太がドラえもんに事情を説明する際、現在のドラえもんがタイムマシンで1時間前の世界に現れ、結果として2人のドラえもんが3人ののび太から事情を聴く展開にアレンジされている。
2人のドラえもんがのび太の望みを叶えるべくどうすれば良いかを考えていると、ある方法を思いつく。現在のドラえもんが「じゃ頼むよ」と言い、1時間前のドラえもんは「上手くやっておくよ」と言うと、そのまま現在のドラえもんは「1時間前の僕が上手くやってくれるはずだ」と言いながら、現在ののび太と1時間後ののび太を元の時間に送り届けることにする。
その後のオチは原作通りなのだが、ドラえもんが「どののび太君の望みも叶えるとなると、こうするしかなくてさ」と言っている為、歴史が捻じ曲がった訳ではなく1時間前のドラえもんがのび太の希望通りの歴史になるよう行動した結果、1時間前ののび太がカップラーメンのプラモデルを購入することになったという展開になっている。
- 2011年版
こちらはのび太がカップラーメンを購入することになる経緯が描写されている。叔父さんから小遣いを貰い、カップラーメンを購入しに向かったのび太だが、そこでジャイアンとスネ夫が「無敵ロボクラッシュキャノン」で遊んでいるところを目撃する。その後、のび太はカップラーメンとプラモデルのどちらを購入するかで悩んだ末、原作通りカップラーメンを購入することにする。
その後は中盤までほぼ原作通りの展開で進むが、3人ののび太の喧嘩を止めた傷だらけののび太3人が現れたところから再びアレンジが挟まれる。原作では傷だらけののび太達はいつの間にかフェードアウトしているが、こちらは何と喧嘩を止めた3人ののび太と一緒に野比家までついて来ている。その為、ドラえもんは6人ののび太から泣きつかれるというカオスな状況に追い込まれてしまう。
また、捻じ曲がった歴史を修正する際も、原作版及び1997年版ではタイムマシンを使用しているが、こちらは時間を巻き戻すことが出来るひみつ道具「フリダシニモドル」を使用している。
ドラえもんは「オプション機能を使用すれば、弄った過去を元通りに出来る」と言いながらこの道具を使用し、6人もいたのび太を何とか1人にすることに成功する。しかし歪んだ過去が微妙に混ざり合ってしまったことで、原作通りカップラーメンのプラモデルを購入したという歴史になってしまった。
まさかの商品化?
オチのカップラーメンのプラモデルだが、2020年より日清食品の協力の元、バンダイから本当にカップヌードルプラモデルが発売されてしまった。対象年齢15歳以上で価格は2420円であり、ネタとして買うには高いかもしれないが。
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