原付バイク
げんつきばいく
概要
道路交通法では50cc以下 (電動機の場合は定格出力0.6kW以下)、道路運送車両法では125cc以下 (電動機の場合は定格出力1.0kW以下)の原動機を備えた二輪車のこと。
前者は原付一種、後者は原付二種まで含むが、一般的には単に「原付」というと前者のことを指す。
一種と二種では
- 免許制で、満16歳から取得可能
- 車検を必要としない
- 自動車専用道路(≒有料道路)を走れない
など共通点はいくつかあるものの、それ以外の実態は全く異なる乗り物である。
一般的には単気筒のみであるが、かつては2気筒の原付も存在していた。
原付一種(第一種原動機付自転車)
50cc以下 (電動機の場合は定格出力0.6kW以下)の自動二輪車。
バイクや自動車と違い実技試験がなく、筆記試験のみで、費用もせいぜい二万円ほど。あらゆる交通免許でハードルは最も低いため、高校生のうちから気軽に取る者も多い。
ただし試験前または後に運転免許試験場、警察署、指定自動車教習所などが主催する技能講習を受けなければならない(事前に技能講習を受講しなければ学科試験の申し込みができない地域もある)。
身体条件も「視力が両眼で0.5以上であるか、片眼の視野が左右150度以上で、視力が0.5以上であること」を満たせばいいだけである。
マイナンバーカードが発行に時間がかかること、学科試験の模擬問題がネットでたやすく入手可能なことから、現状でも「一番早く取れる身分証明」の座は揺らいでいない。
このため原付に乗る予定がない人でも取得する人はいる。
参照togetter:入場時に身分証確認があるライブに行きたい一心で原付免許を取得した体験談「推しのライブ1週間前に身分証の有効期限が切れていることが発覚して原付の免許をとった話」
ただし小型特殊免許以外のあらゆる運転免許には原付免許が付帯しているため、一般的には普通自動車免許の取得とともに資格を得ることが最も多いパターンだろう。
問題点
原付一種は法定速度30km/hや二段階右折の規制を受ける。
制定当時はこれでなんの問題もなかったが、四輪自動車の普及・大型化と共に、たった30km/hで走る原付は交通の流れを妨げるようになる。
原付側も性能向上により30km/hを余裕で超えられるようになったが、それでも現在に至るまで法定時速の引き上げはされていない。
このため原付の速度超過は日常的に行われており、警察の取り締まりの格好の的になっている。
また50ccという排気量も、現在ではほぼ日本限定の区分となっており、グローバル化の時代において海外需要の獲得が難しい。
これは後述の原付一種の衰退の一因となっている。
繁栄と衰退の歴史
かつては車体価格の安さや免許制度の敷居の低さにより、自動車に並ぶ移動手段として昔から重宝されてきた。
1980年代のHY戦争やバイクブーム時代は、スクーターを中心に各社が多数のラインナップを展開し、中には趣味性の高いMTのスポーツバイクもといスポーツ原付も生まれた。
しかし年々厳しくなる排ガス規制により生産終了する車種が相次ぎ、残った車種も規制対応の為にコストを割き、車体価格の上昇を起こした。
価格が上がれば当然販売台数は低下するため、先述のように需要が日本に限定される原付に力を入れる意義も失われていった。
2008年には、かつて原付の主力だった2ストロークエンジン車が生産終了。
2017年には、ホンダのモンキーとエイプが生産終了し、MTのモデルが消滅した。
更に2018年には、ヤマハがホンダと原付一種のOEM契約を結び、量販車種の自社生産を終了。
このように現在では、原付一種市場はかつての繁栄が嘘のように衰退している。
原付二種(小型自動二輪)
エンジン排気量が50㏄~125cc未満、モーター定格出力1.0kW以下の自動二輪車。通称「原二」。
筆記と実技試験を合格した上での自動二輪免許(小型限定以上)が必要だが、パッセンジャー用座席とステップ、ハンドル及びベルトが装備されている車両なら二人乗りが可能。その一般道路の最高時速(60km/h~)での走行が許され、二段階右折も不要。
ハッキリ言って実態はただのバイクであり、「原付」とは名ばかりである。
唯一「原付」と呼ばれるゆえんは、概要で述べた通り高速道路などの自動車専用道路を走れない点にある。しかしそのおかげで税金や自賠責保険、任意保険が安価に設定されているため、高速を利用しない者や身近に自動車専用道路が無い者には却ってメリットになる。
原付一種は人気低下の一途だが、原付二種は30km/h規制が不要な事や、免許制度が見直されてAT限定なら最短2日で取得できるようになったことから人気が急上昇。
メーカー側としても海外需要があるため作りやすく、スクーターからMTのフルカウルのスポーツバイクまで未だにラインナップは充実しているため、原付市場の新たな主戦場となりつつある。
先述のモンキーも、グローバルモデルのモンキー125として原付二種で生き残る道を選んだ。
なお地域にもよるが、ナンバープレートは51~90ccが黄色地/黒文字で、91~125ccがピンク地/青文字である。
人気の高い原二も、唯一この色付きナンバーだけは「ダサい」と大変忌み嫌われており、これを受容できるかが、自動車専用道路と並び原二乗りになるかを左右する重要なポイントの一つになる。
スズキ・GSX-R125。こうみえて原付である。そしてピンクナンバーである。