鬼娘専用変身銃
わたしがだれよりいちばんがん
夏美「あれ？言葉が変だっちゃ！？」
クルル「くっくっく…こだわるぜ 俺はよ…」
ケロロ「男の浪漫とやらだな」
概要
クルル曹長が開発した虎柄模様の銃で、これに撃たれると文字通り「虎縞ビキニ姿で角の生えた『だっちゃ』口調の鬼娘」に変身させられてしまう。名前のルビにふられた「ワタシガダレヨリイチバン」とは、言わずもがなパロディ元のアニメ主題歌から引用されたフレーズである。
初登場は原作４巻の「第参拾壱話 赤鬼号泣一斉掃射‼︎…の巻」から。
ある節分の日、日向夏美から鬼として一方的に豆を叩きつけられたケロロ。復讐を誓った彼は、この鬼娘専用変身銃によって今度は夏美を鬼へと変身させる。
一部のコアな人達には大人気であろう格好となってしまった夏美は、ケロロ達から豆まきの的として追い回される羽目になる。着替えることも外へ逃げることもできず、徐々に追い詰められていく夏美。
しかしそんな彼女の悲鳴によって駆けつけたのは、この銃の実験台として鬼にされていたギロロ伍長だった。怒りに我を忘れた彼に叩きのめされるケロロであったが、奥の手として地下へと続く落とし穴を起動し、そこへ夏美を落としてしまう。ギロロも慌ててその後を追うことで、勝利を確信するケロロ。
しかし、落下していく中で本気でキレた夏美は、ついに鬼娘としての真の能力を覚醒。「ぴゅるるるるるる」と浮遊すると、動揺するケロロにキツイ電撃をお見舞いするのであった。
良くも悪くもクルルのこだわりの強さが窺える兵器ということが、おわかりいただけただろうか。
その後この銃は、原作１１巻「第九拾話 真打登場⁉︎若手ケロン軍大暴走‼︎…の巻」にて、日向家にやってきたケロン軍幼年組のカララとチロロに持ち出される兵器の一つとして再登場を果たす。
勝手に地球侵略を企てた彼らは、追ってきたケロロ小隊や日向一家をたちまち返り討ちにしていた。鬼娘専用変身銃はチロロが携行し、冬樹・モア・秋ママの三人を鬼娘に変身させている。この回において、男性に対しても容赦なくビキニ姿にする効果があることが判明した。なお、この際彼達が着せられていたビキニと前述の夏美が着せられたビキニとでは、虎縞の模様に若干の差異がある。
続く原作１３巻「第百六話 宇宙戦争勃発⁉︎…の巻」では、大規模な侵略活動に出たケロロが無差別に一般人を襲い、鬼娘専用変身銃と同様の効果があると思われる拳銃で女性を鬼娘に変身させていたことが語られている。しかし明確な描写はされていない。
それからしばらくは兵器庫の中で眠っていた鬼娘専用変身銃だが、やがて管理に困ったケロロによって、その他多くの侵略兵器とともにゴミに出されるという形で再々登場。原作２４巻「第２０８話 宇宙のゴミもリサイクル!…の巻」にて。
ゴミに出された兵器は全てブラックスター(ケロロ軍曹)に複製・悪用されており、小雪や６２３達を戦闘不能にまで陥れている。その後は新ケロロの活躍により複製兵器は破壊され事なきを得ており、残念ながらこの銃が使用されることはなかった。ゴミに出された兵器達もギロロに回収され、明言はされてないものの再び地下基地に収容されたものと思われる。
ちなみにこの回において、ブラックスターは鬼娘専用変身銃を片手に「侵略威力評価☆５つものばかり」とこぼしている。この評価の詳細は不明だが、正直「対象をコスプレさせるだけ」というこの銃の意図を理解した上での評価とは考えにくい。もしかしたら、「対象に浮遊能力と電撃能力を付与する兵器」と勘違いしていた可能性もある。
アニメ版
アニメでも鬼娘専用変身銃に相当する兵器が登場しているが、その仕様は若干異なる。
まず原作では鬼娘であったのに対し、アニメ版では雷様と設定されている。そのため、対象の周りには太鼓が浮いているほか、パロディ色の強かった「だっちゃ」の語尾や浮遊する能力はオミットされ、虎縞ビキニも露出度が控えめになっている。なお、頭に生えた角には大豆を誘導する電波が発生しており、雷様に変身した者がどこにいても味噌や豆腐といった大豆製品が宙を舞って追尾してくるという設定が新たに加えられていた。
アニメでは第４３話Bパートにて初登場。
大まかな流れは原作参拾壱話と変わらないが、その大豆製品を引き寄せる効果で夏美をより執拗に苦しめている。結果的に、鬼ではなく雷様という勘違いがオチに利用され、夏美が太鼓を叩いて発生させた電気がケロロにぶつけられた。
その後も第９４話にて原作同様幼年組によって持ち出されており、冬樹・モア・秋ママの三人が雷様に変身させられ、大豆製品まみれになる被害にあった。なお、変身した冬樹の格好はビキニではなく、オーソドックスな原始人的なスタイルに変更されている。そして終盤、カララ達によって起動される地球侵略マシンにこの銃が誤射され、引き寄せた街中の大豆製品が原因でマシンが暴走するというオリジナルの展開が挟まれた。ちなみにこの時はチロロに代わってタルルが登場したことで、カララがこの銃を使用している。
余談
言うまでもなく、作者である吉崎観音は高橋留美子の大ファンである。そのため前述の１１巻で鬼娘専用変身銃が仕様された際には、漫画の中に「重ネ重ネ ゴメンナサイ」というお詫びのメッセージを残していた。ちなみに５巻のとあるシーンでも似たようなお詫びを入れている。
なお高橋留美子の方も、『ケロロ軍曹』が２０周年を迎えた際にはラムちゃんとケロロが描かれたお祝いのイラストを寄贈するなどしており、漫画家同士の仲は良好な模様。
さらに余談
ほとんどパロディのためだけに製作されたとしか思えないような鬼娘専用変身銃だが、これが初使用された第参拾壱話は、実は原作において「ケロロが地球最終防衛ライン日向夏美を極限まで追い詰めた、数少ないエピソードの一つ」である。
この作戦は手始めに夏美を鬼娘に変身させることで、すぐさま彼女の無力化に成功している。そして逆手に取った風習を掲げ、豆を投げつける。この時点でケロロは先程夏美にしてやられたことをそのまま仕返ししているに過ぎないため、夏美は文句も言えないのだ。その後冬樹に助けを求める夏美だったが、なんとケロロは友人の冬樹にも「アサシン大豆」なる銃を放ち、一撃で気絶させてしまう。止めるよう懇願する夏美に元の姿へ戻す条件としてケロロが提示したのが、「日向家における全権限を自身に譲れ」といういつになくガチなもの。当然拒否する夏美であったが、ならば一生その姿のままと脅しにかかるケロロ。夏美はじわじわと追い詰められていく…。
このように当作戦におけるケロロは、普段のへっぽこな様子からは想像もつかないほどの非情な態度を見せていることがわかるだろう。ギロロが夏美を助けに現れても「フルアーマーケロロ」という装備を身につけ応戦しており(結局一撃で敗北するのだが)、ギロロに負けたあとも落とし穴のスイッチを用意しているなど、ケロロが終始強気な姿勢でいることも珍しい。さらに言えば、彼の代名詞ともいえる「であります」の語尾も、話の中盤からはほぼ使わない口調となっており、冷酷な侵略者として徹していることが窺える。劇中で冬樹が言及している通り、「宇宙人であるケロロ達を本気にさせたら如何に危険か」がよくわかる話でもあるのだ。(ギロロの裏切りやクルルのこだわりさえなければ)節分という些細なきっかけから、日向家はケロロ小隊に制圧されていたかもしれないという事実が末恐ろしい。
メタ的な話をすれば、虎縞ビキニの鬼娘を怒らせたらどんな目にあうか、パロディ元を知っていれば大体オチを察することができる面白さがあるといえるだろう。そう考えると、その演出のためにシリアスを演じた結果黒焦げのままゴミ収集場に廃棄されたケロロには、どこか哀愁さえ感じられてくる。