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車寅次郎の編集履歴

2020-12-17 01:36:27 バージョン

車寅次郎

くるまとらじろう

<それを言っちゃあお仕舞いよ

概要

映画『男はつらいよ』シリーズの主人公職業香具師(やし)。

「それを言っちゃあお仕舞いよ」「結構毛だらけ猫灰だらけ」などのセリフが有名。

柴又のだんご屋「くるまや(後にとらや)」の本来の跡取りだが、本人にはその気はない。

実は車兄妹の中では唯一、外で父親と芸者との間にできた子である。本来は兄がいたが既にこの世を去っている。生まれた経緯や父親への反発で家を飛び出して以降、妹さくら自身は寅次郎とは面識がなかった。

実母への憧憬があり、実は逢いたがっていたが、想像していた実母像と違っていた為に仲違いしていた。が、いつの間にか和解していた。


性格

人情家というイメージが先行しているが、その一方で寅次郎自身が自嘲するように、人間としては不出来な面も多い。現代に生きていれば間違いなく注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されるであろう。


とにかく短気で家族相手でも平気で喧嘩を吹っかける、身内にツケ払いなど厄介事の尻拭いをさせる、短所を指摘されたり、軽率な言動を注意されたりすれば逆ギレして、場合によっては女子供関係なく暴力を振るう、些細な諍いを根に持って家を飛び出すなど大人気ない言動が目立つ。


特に第15作で起こった『メロン騒動』は語り草で、贈られてきたメロンを家族で食べようとなった時、例によって前触れも無く帰ってきた自分のことを勘定に入れなかったことに憤り、ネチネチと嫌味を言ったあげく、おばちゃんを泣かせてしまったことすらある。

その際には、寅次郎のあまりに器の小さい態度に見かねたマドンナのリリーから「普段迷惑ばかりかけているのだから、こういう時くらい気前よく『自分の事は気にしないで皆で食べて』と言えないの!?」と誰もが思っていた事を論破され、流石の寅次郎も反論の余地がなく、負け惜しみを吐きながら逃げていくしかなかった。


カタギの人間も徹底して見下しており、従業員を案ずるタコ社長に向かって「あんなボロ工場なんか潰してしまえ」などと平然と宣う。しかし、かくいう自身も中学を中退するなど学がなく、第一作目の時点ではゴルフのカップインのことを知らない(転がってきたボールを拾ってしまう)、見合いの席で下品な振る舞いをする、自身の理解できない難しい話をされると「てめえ、さしずめインテリだな」と負け惜しみのような言葉を返す。自身に教養がないことは本人も承知の上であるが、どこかコンプレックスになっているようで、虫の居所が悪いと酷く怒り出すことさえある。


現代の多くの精神科医には、上記のような衝動的な言動のほか、学校の勉強についていけず落ちこぼれる、字が下手、早寝遅起き(多眠)などの発達障害の症状を呈していると指摘されている(ただし、彼のカバンの中は几帳面に整頓されており、ADHDにありがちな「片づけができない」というタイプではないことがうかがえる)が、彼の育った時代には良い薬もなく、適切な療育も受けられなかったものと思われる。


このように、基本的にはダメ人間と言われ周囲に迷惑をかけまくる種類の人であり、伊集院光は自身のラジオで「寅さんは(傍から見れば)超嫌な奴」「親戚に居たら超厄介」と評しており、実際時を経るにつれて価値観が変化していった事に伴い、視聴者からも人間性について物言いが付くことも目立ってきた。


本編においても身内からも迷惑がられ、時には追い出されることもあるが、どこか愛嬌があり憎めないため、結局(登場人物、ファンを含め)見捨てることができないのが寅さんの魅力とも言える。特にとらやに帰ってくる際は時折気恥ずかしくて素直には帰ってこられないシーンは顕著で、バレバレな変装して帰ってきたり、人や車に隠れてひょっこり現れるなどシャイな一面も目立つ。また、調子に乗って何かを壊したりすると素直な行動を取ったりと、良くも悪くも人間臭さにあふれている。


そんな寅次郎の魅力を代表するシーンが前述の第15作の『メロン騒動』の直後に起きる『相合い傘』のシーンである。

『メロン騒動』で寅次郎とリリーが大喧嘩した後、葛飾は突然の夕立に見舞われ、大雨が降る。

傘を持っていかずに仕事へ行ったというリリーに対し、口では悪罵を吐きながらも心配で仕方がない寅次郎の様子を見て、その心内を察したさくらとおばちゃんは寅次郎に1本だけ傘を渡してリリーを迎えに行くように背中を押す。

そして、大雨で駅で立ち往生していたリリーは寅次郎の姿を見つけると、笑顔で駆け寄る。そんな彼女の態度に寅次郎も最初は素直でない態度を取りながらも、結局2人は昼間の大喧嘩などなかったかのように雨脚の収まる中を仲睦まじい相合い傘で家路へとつく。

このシーンは『メロン騒動』とセットで見る事で、寅次郎の短所と長所、そしてシリーズを代表するマドンナ リリーとの絆の深さを象徴する名エピソードとなっている。


また、複雑な生い立ちから始まる浮き沈み激しい人生を送っている為に、独特の人生哲学を持ち、甥の満男をはじめ子どもや青少年を諭す立場になることも多い。当時見ていた子供からも寅さんは憧れの対象であり、年齢を問わず愛されていた。このため様々なところから「是非うちの町に来てくれ(撮影ロケ地にしてくれ)」という嘆願が絶えなかった。


寅さんと啖呵

寅さんの職業柄、啖呵とは切っても切れない関係で威勢のいい口調とリズムで客の注目を惹くシーンは名人芸の域。これは『寅のアリア』と言われるほどであった。


実は渥美清が若い頃に的屋衆のところに出入りしていた時に身に付けた話術であり、実質的に本物の啖呵売仕込みと言えるだろう。


TV版の寅さん

長い年数に渡ったシリーズであった為、今まであまり知られてこなかった映画の前身であるTVドラマ版男はつらいよ(フジテレビ)の最終回で寅さんはハブに噛まれて死んでしまう。トリビアでも紹介されたので知っている人もいるかもしれない。

ただしこの事は直接の描写ではなく、映画版で佐藤蛾次郎氏が演じた源公の前身といえる「寅次郎の弟分の雄次郎」がさくら達にその最期を伝えたシーンでしかない(ただ回想として寅がハブに噛まれて狼狽するシーンは描かれる)。

ところが、さくらの前にまさかの寅次郎が現れる。現れた寅次郎はさくらに別れを告げ、後ろ姿のままフッと消えた(当時の映像技術の為そのような演出となっている)。妹想いのやくざな兄貴は夢か幻かはたまた幽霊になって妹の前に現れこの世から去ったのである。


この衝撃的な終わり方に、主な視聴者だった男性層からは放送後にフジテレビへ抗議が殺到し、寅さんをさながら兄か弟のように感情移入していた視聴者も多かったということが判明した。

事実、抗議の声の中には「よくも俺の寅を殺しやがったな」などという、まるで身内の仇にぶつける恨み節のようなものまであったらしい。


テレビドラマ版の存在は渥美清氏が亡くなった後に追悼特番等で一部が再放送され、知らなかった世代にも改めて知られる事になった事や結末が悲しいものだった衝撃を与えた。

テレビドラマ版は第一話と最終話のみでしかこの世に存在していないとのこと。理由は記録する放送用テープが高価で一話と最終話以外では1本のテープが使い回されていた為。テレビ放送がモノクロであり、家庭用ビデオデッキが無かった時代であるので一般人が録画する事も不可能であった。


TV版から映画化へ

先の反応に手応えを感じて、一部キャストや登場人物を変更して製作されたのが映画版「男はつらいよ」の第一作である。「生きていたのね」とさくらが驚きとともに寅を迎えるが、これはTV版に対するアンサーにもなった。本来はこれで終わる予定だったが、人気のため想像を超えた長寿作となっていく。


伸びに伸びた結果、第五十作まで作られ、そこで男はつらいよを完結させるという道筋が作られた。この作品では老いた寅次郎が今度こそその生涯を終えるものだったという。そのプロットでは寅次郎は香具師を引退して用務員となった晩年だった。

しかし演じていた渥美清がついに病のため没してしまう。これを受けて二代目寅次郎を据えて(実際レギュラーキャストの入れ替わりは何度かあったため)シリーズを続行する話も出たが、長年寅次郎を演じた渥美清以外に適役は見つからなかった為、立ち消えとなった(※)。

松竹映画で追悼の意味を込めた西田敏行主演の「虹をつかむ男」のラストでCG処理であるが、寅次郎が登場している。これがその時点では銀幕で最後の寅次郎の登場となった。


時は流れて、シリーズ50周年プロジェクトとして第五十作「男はつらいよ50 お帰り 寅さん」で、令和の新時代に銀幕で寅次郎が帰ってくるのである。先に記した予定と異なり、新たな主人公に小説家となった満男を据えて、登場人物の現在と過去作品の映像を織り交ぜたものとなる。ちなみに当該作ではあえて寅の生死は明らかにしないとされている。


※…長年、男はつらいよと併映されてきた「釣りバカ日誌」も男はつらいよと並んで松竹映画の二大ドル箱作品となっており、男はつらいよ終了後も引き続き牽引していたが、この事もあったのか主演だった西田と三國のシリーズを重ねる事による高齢化もあり、主演二人が存命の内に劇場版釣りバカ日誌も完結した。


少年寅次郎

NHKにおいて、少年時代の寅次郎を描いたドラマが放送された。

幼少期、父と喧嘩別れするまでのエピソードを描いている。


演じた人物




奈良時代の寅さん?

2001年8月3日に、葛飾八幡神社にある奈良時代の古墳から帽子を被った寅さんにそっくりな埴輪が出土した。寅さんよりも面長であるが、被っているのは帽子で間違いないとのこと。男はつらいよシリーズを監督した山田洋次氏もこの出来事に「寅さんここにいたのかい?」と驚いた。

なお、奈良時代の葛飾には「孔王部 刀良」(あなほべ とら)と「孔王部 佐久良売」(あなほべ さくらめ)と読める人物がいた事も判明。この埴輪の発見は偶然にも渥美清氏の命日だったという。


関連タグ

渥美清 寅さん 諏訪さくら

香具師 的屋 テキ屋

フーテンの寅 フーテンの寅さん


星桃次郎 :ライバル映画「トラック野郎」の主人公。寅次郎が雅なら桃次郎は俗と比較される事がある。

両津勘吉 :寅次郎に並ぶ葛飾区を代表する架空上の著名人。破天荒な性格で周囲からは疎まれながらも慕われるという奇妙な人誑しな人物像も共通している。


釣りバカ日誌 :かつて併映されてきた松竹映画。

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