概要
古代ペルシア(現イラン)においてザラスシュトラによって伝えられた宗教。
善悪二元論を特徴とし、聖典『アヴェスター』によると、
宇宙の歴史は善神アフラ・マズダと暗黒神アンラ・マンユとの闘争であるとされる。
現存する宗教の中では世界最古のものの一つであり、現在もインドの西海岸ボンベイなどを中心にパールシーと呼ばれる信者がいる。
葬儀の方法は、「鳥葬」といって、遺体を決められた場所に放置し、鳥に遺体を啄まさせるという方法を採用している。教徒の間では、この方法が人間が自然に還るための手段として最適だとされているが、近年は衛生面からこの方法は不適切ではないかとも疑問視されている。
イランの慣習や伝統的なお祭りの由来には、少なからずゾロアスター教の風習が関わっている。
イラン神話とは切っても切れないものであり、イランの大英雄ロスタムの宿敵イスファンディヤール王子はゾロアスター教拡大のために戦う。また、英雄アーラシュのルーツにもなっている。
イスラム教を受容する前のペルシア人本来の民族宗教とも言える宗教であり、アケメネス朝の大王ダレイオス1世はゾロアスター教を信仰していたとされる(ただし、ゾロアスター教より更に古い、ゾロアスター教の原型となった宗教だとも言われる)。
ペルシア人が次々とムスリム化していく中でも、その信仰は細々と守られ続けた。厳格なイスラム共和政を敷くイランの現体制下にあっても、少数派として残ったゾロアスター教徒の信仰は基本的に保護対象となっており、イラン議会にもゾロアスター教徒用の議席が確保されている。
日本での紹介
少なくとも2020年9月現在、日本においては、少なくとも公表・公開されているゾロアスター教寺院は存在しないようである。
愛媛が生んだ明治の奇人「キムタカ」こと木村鷹太郎により、英訳からの重訳であるが、全体を訳した『アヹスタ経』上下巻が発表され「世界聖典全集」シリーズに収められた。
ただし、本人はペルシャ学、ゾロアスター教の専門家ではない。
研究者による原典からの翻訳も存在しており、岡田明憲の『ゾロアスター教 神々への賛歌』『ゾロアスター教の悪魔払い』(平河出版社)、伊藤義教の『原典訳 アヴェスター』(ちくま学芸文庫、当初「筑摩書房 世界古典文学全集 第3 ヴェーダ・アヴェスター」として刊行されたもののアヴェスター部分の書籍化)があるが、これらは抄訳である。
2020年9月、ついに研究者による原典からの全訳書、野田恵剛訳『原典完訳 アヴェスタ ゾロアスター教の聖典』(国書刊行会)が刊行され、SNS上において大きな注目を集めている。
なお、同訳者によるゾロアスター教文献『ブンダヒシュン』の翻訳はネット上で公開されている(参考)。
関連タグ
アフラ・マズダー ズルワーン アムシャ・スプンタ ヤザタ ダエーワ
MAZDA … 日本の自動車メーカー。「マツダ」の名前自体は創業者の名前からだが、スペルはゾロアスター教の最高神「アフラ・マズダー」から来ている。
フリードリヒ・ニーチェ … 「ツァラトゥストラかく語りき」の著者。ツァラトゥストラは教祖・ザラスシュトラのペルシア語での呼称をドイツ語読みしたもの。
外部リンク
- ゾロアスター教(Wikipedia)