概要
藤子・F・不二雄原作の漫画・アニメ作品『ドラえもん』に登場するひみつ道具。及び同作品のエピソードの一つ。TCプラス5巻収録。
ドラえもんとのび太、ジャイアンとスネ夫が、互いに同じひみつ道具を利用して対立し合うというエピソードで、ファンの間ではラストの展開が非常に恐ろしいことで度々話題に挙げられている。
ひみつ道具としての解説
「ペンシル・ミサイル」(メイン画像左)はその名の通り鉛筆型のミサイルで、これをあらかじめ設置しておけば、付属のボタンを押すといつでも敵を攻撃することが出来る。その威力は命中した人間が黒焦げになって倒れてしまうほど。
「自動しかえしレーダー」(メイン画像右)はペンシル・ミサイルに取り付けておくと、空中に怪しい物が飛んで来ると素早くキャッチし、自動的にミサイルが発射されるようになる。仮に相手が同じミサイルで攻撃してきた場合、こちらのミサイルも自動で発射される。
エピソードとしての解説
いつものようにジャイアンとスネ夫に虐められたのび太。彼から泣きつかれたドラえもんは、いつでも敵を攻撃することが出来る「ペンシル・ミサイル」を取り出す。のび太は早速庭にミサイルを設置し、ジャイアンとスネ夫の所へ向かい彼らに対しミサイルを発射すると、2人は黒焦げになってしまった。
仕返しに成功したのび太はさらに増長して「ミサイルを沢山セットしておいて、ジャイアンとスネ夫が悪さをした時にミサイルを発射すれば、町は平和になるぞ!」と考え、野比家に戻る。ドラえもんはちょうど昼寝をしていた為、のび太はこっそり「四次元ポケット」から大量のミサイルを持ち出し、庭にセットする。この時、余ったミサイルは置きっ放しにした。
その後もジャイアンとスネ夫が他のクラスメイトに意地悪をする度にミサイルを発射するのび太だったが、途中でスネ夫が「これはのび太の仕業では?」と考え、野比家に向かうとのび太が設置していたミサイルを発見する。
スネ夫は先程のび太が置きっ放しにしたミサイルを奪い取り、裏山のあちこちに設置する。その後、のび太がミサイルでジャイアンを攻撃しようとした際、スネ夫がのび太に対してミサイルを放ち、今度はのび太が黒焦げになってしまった。
立場が逆転して自分が標的にされてしまうのび太から事情を聴いたドラえもんは「自動しかえしレーダー」を取り出し、のび太が設置したミサイルにレーダーを取り付けていく。しかしジャイアンとスネ夫がドラえもん達の行動を覗き見していた為、ジャイアン達はドラえもんが置きっ放しにしたレーダーを奪い取り、裏山に設置されたミサイルに取り付けていく。
そしてドラえもんはのび太を連れてジャイアン達の所に行き「ボタンを押さない方が良い。こっちからもミサイルが降りかかるぞ!」と警告する。しかしジャイアンとスネ夫も「そっちこそボタンを捨てろ!レーダーはこっちにも付いているんだ!」と抵抗する。
のび太とスネ夫がお互いに「卑怯だぞ!」と言い合う中、ドラえもんはこの状況がどれほど危険なのかを察し、のび太達に「どっちが先に攻撃しても、お互い無事では済まない」と説明する。
ドラえもん達は「くだらない喧嘩はやめよう」という結論に至り、ミサイルの発射ボタンを川に捨て、4人で仲良く遊ぶことにした。無事に仲直りし、空き地で野球を始めるのだった。
・・・が、それで話は終わらなかった。
ジャイアンが打ち上げた野球ボールを自動しかえしレーダーがキャッチしてしまったのである。
更に、ボールの動きをキャッチしたのはドラえもんとのび太、ジャイアンとスネ夫がそれぞれ取り付けたレーダー全てである。ドラえもん達は上空から合計25発のミサイルが迫って来ていることに一切気付かず、そのまま笑顔で遊び続けるのだった…。
「合計25発のミサイルが迫ってくる・・・」
その後この4人がどうなったのかは、本人達を除いて誰もいない・・・。
余談
このエピソードは連載当時の世界情勢、すなわち冷戦がどれほど恐ろしい状況であるかを、主な読者層である子供達にも理解しやすい形で描かれており、同時に恐怖を煽るラストになっている。
作中でドラえもん達がペンシル・ミサイルにより対立していた状況は相互確証破壊と言っても差し支えない。相互確証破壊とは、互いに強力な破壊兵器を持っている状態であれば、こちらが攻撃すると当然相手から報復を受ける。その為、どちらも報復を恐れる為に互いを攻撃しなくなり、非常に危うい均衡状態の平和が訪れる。この状況が相互確証破壊であり、作中のドラえもん達はまさに相互確証破壊をそのまま体現していると言えるだろう。
また、このエピソードは大山のぶ代版及び水田わさび版アニメでそれぞれ映像化されている。前者は原作におけるラストの続きが描かれており、降り注ぐミサイルが大爆発を起こし、ドラえもん達が遊んでいた場所にきのこ雲が吹き上がる最終戦争状態という凄まじい展開になっている。
当然ながら黒焦げになってしまったドラえもん達だが、(自分のことを棚に上げた)のび太達3人が「ドラえもんがこんな道具を出すからだ!」と怒り出し、ドラえもんが追いかけ回されるオチになっている。
後者は原作通りの展開だが、サブタイトルが「しかえしミサイルが飛んできた」という名称に変更されており、ペンシル・ミサイルの名称も「おしおきミサイル」に変更されている。
それだけでなく、原作における川にボタンを捨てるという行為が不法投棄を連想させる為か、ボタンは川ではなく「ブラックホールゴミ箱」(水田版アニメオリジナルひみつ道具。この中に捨てた物は二度と取り出せない)に捨てるという展開にアレンジされている。ラストシーンは原作と同じだが、こちらは楽しく遊んでいる場面が笑い声をそのままに真っ白になっていくところで終わっており、より恐怖を煽る最後になっている。
また、ミサイルの性能が原作及び大山版より強化されており、ドラえもん曰く「ミサイルは避けたり撃ち落とすことは出来ない」とのことで、無敵砲台を彷彿とさせる危険極まりない代物である。何でそんな危険な物を未来デパートは普通に売ってるんだ・・・。
『ドラえもん』を題材としたゲーム作品『アニマル惑星伝説』にも登場する。この作品ではボスに対して一方的に攻撃出来る武器になっている。
また、『緑の巨人伝DS』にも登場する。この作品では攻撃力は高いが、使用中はドラえもん及びのび太(操作キャラクター)が一切身動きが取れないというハイリスクハイリターンな武器になっている。
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