概要
縮めて「関帝」と呼ばれることもあり、彼を祀った廟は「関帝廟」と呼ばれる。
三国志の英雄が神として祀られる事は珍しくないが、関羽は最もポピュラーで彼を祭る廟に「武廟」と呼ばれるものがある程。
ちなみに孔子を祭る廟は「文廟」ともいい、二人を祀る「文武廟」という施設が複数存在する。
文人における孔子のポジションを、武人において関羽は占めている。
道教を信じる中国人にとって関帝は人物神の代表格であり、海外の華僑コミュニティにもよく廟が建てられる。
生前、忠義に篤く武勇に優れる人物であった事から軍神として、また算盤や新しい帳簿を発明したという伝説から商業神とされる。
中国においては仏教寺院においても、お寺を守る「伽藍神」として祀られている。
日本でも、大陸から渡来したままの宗風を伝える黄檗宗を中心に関羽が祀られている。
歴代皇帝からの諡号
称号 | 王朝・時代・年代 | 贈った人物 |
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壮繆侯 | 蜀漢/景耀3年(260年) | 劉禅 |
忠恵公 | 北宋/崇寧元年(1102年) | 徽宗 |
崇寧真君 | 北宋/崇寧三年(1104年) | 徽宗 |
武安王 | 北宋/大觀二年(1108年) | 徽宗 |
義勇武安王 | 南宋/宣和五年(1123年) | 徽宗 |
壯繆義勇武安王 | 南宋/建炎二年(1128年) | 高宗 |
壮繆義勇武安英済王 | 南宋/淳熙十四年(1187年) | 孝宗 |
顕霊義勇武安英済王 | 元/天曆元年(1328年) | 文宗 |
協天護國忠義帝 | 明/萬曆十年(1528年) | 神宗 |
三界伏魔大帝神威遠鎮天尊関聖帝君 | 明/萬曆四十二年(1613年) | 神宗 |
真元顯應昭明翼漢天尊 | 明/崇禎三年(1630年) | 思宗 |
忠義神武関聖大帝 | 清/順治九年(1652年) | 世祖 |
山西関夫子 | 清/乾隆元年(1736年) | 高宗 |
忠義神武霊佑仁勇威顕関聖大帝 | 清/道光八年(1828年) | 宣宗 |
忠義神武霊佑仁勇威顕護國保民精誠綏靖関聖大帝 | 清/咸豊五年(1855年) | 文宗 |
忠義神武霊佑仁勇威顕護國保民精誠綏靖翊讚宣德関聖大帝 | 清/光緒五年(1879年) | 徳宗 |
これらは各宗教における呼称の元にもなっている。
各宗教における関羽
道教
北宋の時代、道教信仰と明確に結びつけられる事になる。が、この時点では道教の宗派の一つ「正一教」の教主(頭首)「張天師」である張虚靖(30代目)が、悪さをしていた水蛟(みずち)を退けるために関羽を召喚する、という形であり、神将扱いではあるものの使役される側の立場である。
元帥神(武神)や財神といった側面を発達させながら、道教のパンテオンでの地位を高めていくことになる。
儒教
儒教においては「文衡聖帝」「山西夫子」と呼ばれる。孔子が道教の廟で関羽と共に祀られるように、儒教の廟でも関羽の像が安置される。沖縄の久米至聖廟のように、同じ敷地内で孔子や弟子・後継者たちを祀る「大成廟」、媽祖を祀る「天后廟」、関羽が龍王(個人名は不明)と共に祀られる「天尊廟」を配置する、という形もある。
仏教
荊州で死したのち、当地の玉泉山にて「山の王(山神)」のような存在となっていた関羽が天台宗の開祖・智顗と出会い、関羽が仏教の守護神とされる伝承がある。仏教寺院を守護する「伽藍神」としての関羽は「伽藍関菩薩」とも呼ばれる。
天台宗はで伝教大師最澄によって日本に持ち帰られるが、関羽信仰は継承されず、伽藍神の役割は日本の神々が担う形となった。
日本における関羽信仰の最初の例は最澄の時代から6世紀ほどくだった時代の足利尊氏とされている。なお、尊氏は特に臨済宗系の寺院と縁の深い人物である。禅系の寺院以外だと、日本仏教での関羽信仰はあまり確認されていない。
18世紀頃よりチベットにも関羽信仰が伝わり、西域・中央アジアで尊崇される英雄ケサル王(チベット語では「ゲセル(Gesar)」と発音)とも習合、チベット仏教絵画「タンカ」にも描かれる存在になった。
巫教
朝鮮においては豊臣秀吉による侵攻がきっかけとなって関羽信仰が持ち込まれた。文禄・慶長の役において、明からの援軍が来朝した際、関羽を神として信仰する習慣ももたらされた。
伝承によると関羽の霊が戦場に君臨し、日本からの軍勢を何度も退けたのだという。
朝鮮には「帝」の称号を持つ君主が居なかったため王を超える名で呼ぶことを憚り「関王」の名で廟が建てられた。明の皇帝・神宗(万暦帝)の援助で東廟(東関王廟)、西廟と北廟が建立されている。明の時代に建てられた関王廟は中国と朝鮮の様式を統合した意匠で建てられており、朝鮮半島の伝統宗教(巫教)に基づく宗教儀礼が執り行われてきた。
関羽は「関項将(クワヌジャン)」とも呼ばれる。巫教の宗教施設「巫堂」の守護神であり、儀礼を経て万神(マンシン、巫女)等のシャーマンに憑依する「身代(モムジュ)神」の一柱ともされている。