概要
アニメ版機動武闘伝Gガンダムの脚本を多く手掛けた五武冬史こと鈴木良武が著した作品。角川スニーカー文庫より出版された。発動の章、流動の章、綺羅の章の順で全3巻発売。
「ガンダムの常識を覆したGガンダムなら、Gガンの小説版もまた本編の常識を覆すべきだ」という考え方のもと、あえて逆行する設定を盛り込んだうえで制作された。
そのコンセプト通り、設定は宇宙世紀でもやらないようなガンダムノベライズの中でも屈指とすら言えるダークなSFへと変化。世界観もかなり黒いものが渦巻くものとなっている。
特色
本作は原則として技名は叫ばないし、正々堂々とガンダムファイトを申し込むような場面も少ない。ニンジャ以上に作法などあったものではない。
やや誇張した言い回しになるが、シナリオ上はドモン以外は実質みんな敵というとんでもない人物相関図となる。他国の人間はもれなく全員敵で、揃ってドモンを殺しにやってくるわ、身内は身内で都合が悪くなると刺客を仕向けるという後の『超級』の先駆けのようなことをやらかすわで、とにかく作中にろくな奴がない。相棒のレインすら一筋縄ではいかない程。
超人的な設定も薄れ、ドモンは初っ端から軍人に制圧されるなど身体能力も比較的現実的なものに落とされている。
こんなんだからドモンも原作に輪をかけて暴走しやすく、「ワハハハ! 死ねぇーーっ!!」などという原作では絶対に言いそうにない台詞をポンポン吐く。
一方で東方不敗は本編と同じく敵対する間柄となるが、実はデビルガンダムを利用した人類抹殺を企てながらも、内心は人々を虐殺するという選択そのものに葛藤していた。これに加えて目に入れても痛くない、実の息子のように可愛がっていた愛弟子であるドモンと憎しみ合う羽目となり(これは本編でも苦しい胸中が滲み出たシーンがあるが、本作程ではない)、苦しみぬいたあげくに精神を病んで目的を見失ってしまう。
精神崩壊後は、愛弟子を孫のように溺愛する好々爺のような有様になり、可愛い弟子のために命を擲つという、本編を知っているとより胸が引き裂かれるような場面も存在する。
アニメ版との主な違い
- アニメ版では各国のガンダムファイターが大会優勝を目指す話だが、小説版ではガンダムファイトの誕生により仕事を失った軍人やガンダムファイトを廃止して軍備復活を目論む一部の軍部の暗躍を阻止する話となっている。
- シュバルツやアレンビーなど、番組中盤から後半にかけて登場する一部レギュラーが未登場。またシャッフル同盟も存在しない。
- ドモンのライバルであるチボデー、ジョルジュ、サイ・サイシー、アルゴの4人は廃止派の軍部の命令で刺客として登場する。
- ネオジャパンのガンダムファイト委員会のカラトが廃止派の回し者として登場。ネオジャパンの権力者のオーギン首相とは対立の立場を取っている。
- ドモンがネオジャパンからの支援を受けられないのでゴッドガンダムが小説版では登場せず。最後までシャイニングガンダム(※1)のままでデビルガンダムまで戦い続ける。
- モビルファイター(小説版ではモビルスーツ)は競技用なため通常兵器には勝てない、さらにMFは重量が1万tという超重量である。
- ラスボスであるデビルガンダム(※2)はアニメ版では地球を再生させるために造られたが、小説版では廃止派を誘き出すために単に強い兵器として造られている。後にドモンの為に造られた兵器であったことが明らかにされた。
(※1)ちなみに小説版のシャイニングガンダムにはスーパーモードはおろかバトルモードがない。よって表紙絵ではノーマルモードでシャイニングフィンガーを放つシャイニングガンダムの姿が見られる。最終的には石破天驚拳を放つ。
(※2)アニメ版では脅威だった三大理論の機能が搭載されていないので機体の性能が常識レベルまで下がったが、一応強いワンオフ機という扱いで競技用モビルファイター相手なら一捻りできる性能だが、巨大な軍事力を持つ正規軍がその気になれば潰せる。つまり人類抹殺など夢物語である。
アニメ版のキャラクターとの違い
前述の通り小説版のドモンは訓練を受けた軍人に負けたり、負の感情に呑まれて暴走し相手を殺し掛けたりとにかく心身ともに弱い面が強調している。
物語全般に渡って戦いでは満身創痍になりつつも、毎度の如く奇跡の大逆転や横槍のお陰で生き続けている悪運の持ち主。
ドモンが家出ではなく父・ライゾウから強制的に東方不敗へ弟子入りさせられる。ちなみに修行の場所はギアナ高地ではなくヒマラヤ。
シャイニングフィンガーは親指、人差し指、中指の三本指で放つ必殺技に変更され、生身でも繰り出すことが出来る。
医者兼ネオジャパンの首相秘書。ドモンとは地球で初めて出会う。
ドモン曰くかなりの美貌の持ち主で戦闘員をパンチやキックで倒していることからかなり強い。
性格はかなり冷たい。しかし本心は自分が傷つくことを恐れて相手との関わりを避けようとする臆病者。
小説版のオリジナルキャラクターの一人、スギハラ少尉とは元恋人関係。
- 東方不敗(マスター・アジア)
アニメ版と同じく自然を守る為に人類粛清派としててデビルガンダムと共に地上都市を破壊行動を起こす。終盤では自己矛盾により精神と記憶が錯乱していくが、デビルガンダムの鋏爪に挟まれたシャイニングガンダムを助けるためにデビルガンダムを裏切るが結局倒される。最後は死の目前で正気に戻った東方不敗はドモンに看取られて息を引き取った。
ちなみに東方不敗の「流派東方不敗」は小説版では源流を辿ると釈尊を護る弟子たちが編み出したインド拳法へ辿り着くという小説版の独自の設定となっている。
奥義「石破天驚拳」は大地の力を借りて放つことで驚異の破壊力だが、宇宙で放つと威力が落ちる。
愛機のマスターガンダムは羽の部分が赤から銀色にカラー変更されている。
栗色の長髪にグレーの瞳に変更。
生身のドモンをマックスターで暗殺しようとした挙句、負けそうになると人質を取るなど卑怯な行動に出るがドモンにボコボコにされて敗北する。
その後はファイターの地位を追われた彼は倉庫街で落ちぶれ果てていたが、終盤では急ごしらえで修繕したマックスターで登場している。
性格はアニメ版とは変わらないが、ファイターを殺傷する恐れがあるコックピットへの攻撃をするなど相手を殺す事に躊躇いが無い。拳法についてはかなりの博識。
拳法を超えた超拳の一つ「多身神足通」という超速の足捌きで相手を翻弄する技を所持。
ドモンに敗れた後はドモンの事を尊敬し「兄貴」と呼ぶようになる。その後、祖国を裏切ったサイ・サイシーはデビルガンダムを倒す為にチボデー、ジョルジュなどに助けを頼んだ。
ドラゴンガンダムの両手の龍が赤色にカラー変更。またサイ・サイシーは他の面子に比べて一番本編要素が強くなる。
肩まで流した金色の長髪に金モールに肩章と胸飾りがついたクラシカルな赤い軍服に変更され首に白のマフラーを巻いている。
性格はアニメ版とはあまり変わらないが刺客で有ることに変わりはない。
終盤ではサイ・サイシーとの勝負では勝ったが、ドモンの為に役に立てない事に悔しがるサイ・サイシーに人間として負けたジョルジュはデビルガンダムの破壊する協力者として登場する。
ネオロシアの犯罪者の中で極刑を科せられた重罪人が送り込まれる極寒の環境に置かれたシベリアの地下刑務所で生き延びた死刑囚として登場。
東方不敗もびっくりな化け物として規格外の強キャラとして描かれており、石破天驚拳を何発も喰らってボロボロになったボルトガンダムでマスターガンダムを抑えるというとんでもないチートキャラとなっている。
ボルトガンダムの両肩にはハンマーが二基装備しており、二つのグラビトンハンマーを巧みに操る。
関連項目
Gガンダム ノベライズ 俺の知ってるのと違う ハートフルボッコ
小説版ガンダム:元祖アニメと全く内容が違うノベライズ。