解説
アニメ『機動戦士ガンダム』のノベライズ。著者は『1stガンダム』の監督の富野由悠季。
初版は1979年に朝日ソノラマから発売され、現在は角川スニーカー文庫に引き継がれている。全3巻。
アニメ同様、地球連邦軍とジオン軍との戦争を描いた物語ではあるが、ストーリーはオリジナルであり原作との共通点はほぼ無い。特に終盤は衝撃的な展開を迎える。
主な相違点
- 主人公のアムロ・レイが最初から地球連邦軍で訓練を受けているパイロット(後発の作品だとシロー・アマダやシン・アスカに近い)で民間人ではない。その煽りを受けて、フラウ・ボゥ以外のホワイトベースクルーはほぼ全員最初から軍属になっている。
- しかも序盤から上官にぶん殴られている。親父にもぶたれたことないのに!のセリフも無し。
- アムロの年齢が19歳(原作では15歳)とされており性格も大人びている。反対にセイラ・マスはドジ呼ばわりされるなど未熟さが目立つ。
- 全体的にモビルスーツが小さめで、ガンダムの大きさが「16m」と明言されている(原作では18m)。
- 核爆発が直撃し、山を吹き飛ばすほどの爆風を至近距離で受け、2km吹っ飛んで家を押し潰しても傷一つ付かないなどガンダムの装甲が原作以上に凄い。ウィングゼロかよ。
- ホワイトベースに相当する宇宙戦艦が「ペガサス」という名前。テキサスコロニーで大破し、以降は2号艦「ペガサスジュニア」に搭乗する。
- そのペガサスが一度も地球に降下しないまま一年戦争が終わる。従ってマチルダさんはチョイ役、ウッディさんや黒い三連星は登場しない。
- 一年戦争終結の日付もアニメより引き延ばされている。
- ガンタンク、グフ、陸戦ドム、ゲルググ、水陸両用機などが全く登場しない。ガウに至っては宇宙空母という設定。
- というかジオン軍のモビルスーツはザクとリック・ドムしか登場しない。
- リック・ドムが高性能化しており、携行兵器がビームバズーカとビームサーベルとなっている(原作は物理兵器のバズーカとヒートサーベル)。
- 当然、ギャンも一切登場しないので、マ・クベは序盤で母艦が沈められ早々に退場。
- シャアも早々にシャア専用ザクが破壊され(アニメでは一度も撃墜されなかった)、最終決戦ではジオングではなくシャア専用リック・ドムに乗っている。
- 血気にはやるガルマ・ザビをシャアが止めようとする。そしてガルマは死亡。ザビ家への復讐心よりガルマへの友情が勝るシャアは、ガルマを守れなかった事を悔やむ。謀らないのか!シャア!!
- グフが出ないため、リュウ・ホセイの死因が全く異なる。ランバ・ラルはキシリア・ザビの親衛隊で、MSには一切乗らず、アムロとの面識すら無い。
- ラルの奥さんであるクラウレ・ハモンはギレンの元愛人。
- その他、死亡するはずのキャラが最後まで生き残ったりすることも多い。
- ララァ・スンはかなり早い段階でエルメスを撃墜され戦死。中盤以降は話数削減のせいでアニメに出られなかったジオンの女性兵クスコ・アルがライバルキャラ(エルメス2号機パイロット)として登場する。
- RX-78-2がララァを撃墜した際の爆発に巻き込まれて半壊してしまい、アムロはG3ガンダムに乗り替える事になる。
- シャリア・ブルがやたら強く、ストーリー上重要な役割を担う。
- ニュータイプがアニメより遥かに多く登場し、テレパシーのようなやり取りが頻繁に行われる。
- 中盤でフラウ・ボゥが軍を辞める。
- スレッガーはペガサスの砲撃手でありGファイター(出てこない)にもコア・ブースターにも乗らない。
- アムロとセイラが相思相愛の恋人になったうえ、肉体関係も持つ。
- 性描写が多く、「戦場のお守りとして恋人の陰毛を携帯する」という生々しい風習まで明記されている。これを怠っていたアムロはブライトに叱られた。
- セイラに「金髪さん」という愛称がある。アムロはサイド7で名も知らぬ医学生だったセイラをそう呼んで密かに想いを寄せていた。そして恋人同士になってからは2人きりの時、セイラをそう呼んでいる。
- ソロモンを無視して連邦がア・バオア・クーを攻める。ドズル・ザビのビグ・ザムはアムロ1人にあっさり沈められてしまう。
- 終盤でジオン兵のルロイ・ギリアムによる誤射に巻き込まれてガンダムが撃墜され、アムロがまさかの戦死。以後、ニュータイプに目覚めたカイ・シデンが事実上の主役に。また前座のようにハヤトの搭乗するガンキャノンもシャアに撃ち落とされる。
- ソーラ・レイがとんでもない所を狙う。
- アムロの死を目の当たりにしたシャアがペガサスジュニアに投降。キシリア・ザビも同調し、クーデターを企てサイド3に殴り込む。そして逃走するギレン・ザビを討伐。直後にシャアは文字通り、手のひらを返してキシリアを殺害。
- デギン・ソド・ザビは和平工作をしないおかげでザビ家で唯一生き残った。
- 終戦により新たに建国されたジオン共和国にペガサスジュニアが鹵獲され、クルーの半数がジオン国籍を得る。
などという、原作ファンからしたら信じられないような内容になっている(本来一巻のみで終わるはずが、編集部の後押しで続刊された)。
本作独自の設定はお祭りゲームなどに流用されることがあったが、原作との整合性がとりにくいことから範囲は非常に限定的である。
なお、冨野監督の作品であり、同じ角川スニーカー文庫で発売された小説『密会 アムロとララァ』はあくまでアニメ版の番外編であり、本作との繋がりはない。無論『機動戦士Zガンダム』以降の小説版とも繋がりは無い(『小説版Z』では、はっきりと『小説版1st』の続編ではないと書いてある。当初『Ζガンダム』との整合化作業を試みようとしたが、過去の自分を否定することになるとして断念した。)
関連項目
ブライト・ノア セイラ・マス カイ・シデン フラウ・ボゥ ハヤト・コバヤシ レビル
ザク リック・ドム ビグ・ザム シャア専用ザク ブラウ・ブロ
ギレン・ザビ デギン・ソド・ザビ ミネバ・ザビ ドズル・ザビ ガルマ・ザビ ジーン デニム ランバ・ラル マ・クベ
機動武闘伝Gガンダム(小説版):こちらも内容がアニメと全く違う角川スニーカー文庫のガンダムノベライズ。本作のあとがきでも小説版1stに関する記載がある。