シャア専用ザク
しゃあせんようざく
「見せてもらおうか、連邦軍のMSの性能とやらを。」
型式番号MS-06S。末尾のSは指揮官用を意味する。映像としての初出はアニメ『機動戦士ガンダム』だが、S型として設定が追加されたのはムック『ガンダムセンチュリー』からである。
ザクⅡF型を元に指揮官やエースパイロット用に推力を30%増し、脚部内燃料タンクを拡張するなど細部が改修された機体である。通信能力を強化するためのブレードアンテナが標準で装備されているのも特徴のひとつ。
ただしその機動性ゆえに制御が難しくなっており、推進剤の消費量は増加分のそれを上回り稼働時間も短くなっている。
その機動性の強化に重点を置いたコンセプトから高機動型ザクⅡに至るまでの過渡期にある機体とも考えられている。
指揮官機はパーソナルカラーに塗装することを許されており、その中で特に有名なのが、シャア・アズナブル少佐が搭乗した機体である。
シャア専用機は「赤い彗星」の名の通り全身を朝焼けをイメージした(『THE ORIGIN』での設定)赤系統のカラーで塗装している。
またTHE ORIGINではシャア機の特徴として両鎖骨部に「R6キット」の一つである30mmバルカン砲を装備している。そのため正式な型番としては「MS-06S/R6」になるものと思われる。
TV版第2話で初登場。
シャア・アズナブルは、その類稀な操縦能力でザクIIの性能を限界まで引き出し、一般機(F型)と指揮官機の違いがあるとはいえ、「通常の3倍のスピード」と恐れられたほどの速さで専用機を乗りこなした。
サイド7を出港したホワイトベースのガンダムに強襲をかけたものの、一撃でザクを葬るビームライフルの威力に戦慄し撤退。
以降も宇宙要塞ルナツーへの航路や目的地であるルナツーでも襲撃を仕掛けた他、地球への降下中を襲いホワイトベースの降下航路を連邦軍本部のある南米ジャブローから自軍の勢力下にある北米へねじ曲げるといった離れ業も見せた。
第10話においてニューヤークでガルマを謀殺して以降登場せず、以後の消息は不明。一説によればシャアが今回の失態の責任を問われ左遷された際に、宇宙攻撃軍の預かりである本機はファルメル共々没収されたとも言われている。
漫画『機動戦士ガンダム フラナガン・ブーン戦記』においてはガルマの婚約者イセリナ・エッシェンバッハの仇討ち失敗による戦死後までは足取りが確認でき、ガルマ戦死の責任を糾弾するフラナガン・ブーンに決闘を挑まれ、相手のザク・マリンタイプの土俵である海中においてもその技量の高さを見せつけ、これを一蹴している。
シャアの搭乗した機体の中で、続編も含めて全く損傷しなかったのはこのシャア専用ザクだけである。ただし、ザクの武装ではガンダムに大きな損傷を与えることもできなかった(ヒートホークなどは直撃であればガンダムに致命傷を与えられる武装ではあるが、シャアはその好機に恵まれなかった)。
漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ではオデッサ作戦前にガンダムと決闘を行うために再登場。連邦軍側のMS隊を壊滅させ、ガンダムとの一騎打ちに持ち込むが、頭部を破壊されて海中に転落し、シャアは脱出したためそのまま放棄された。
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』およびOVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO』では、まだ赤い彗星の通り名を頂戴する以前のシャア・アズナブル中尉がルウム戦役にて5隻の戦艦を沈める活躍「シャアの五艘跳び」が描かれている。
ガンダムの実写版ゲームにしてニュータイプ専用と悪名高い『GUNDAM0079TheWarForEARTH』にも当然登場している。同作では大気圏突入時の戦いでガンダムの片足を破壊した他、クライマックスでガンタンクを不意打ちしてホワイトベースの格納庫に殴り込み、そこでハイパーバズーカを奪ってパイロットのいないガンキャノンを破壊するもガンダムとの戦いで右腕を切断されてそのまま撤退した。
短編OVA『GUNDAM EVOLVE』ではクワトロ・バジーナと名前を変えエゥーゴに入隊したシャアがリック・ディアスのシミュレーションで遭遇した仮想敵機として登場、メカニックによれば当時のモノとほとんど変わらないデータだったとか。
このザクに惨敗してしまったクワトロは機嫌を損ねてアーガマに向けて実弾を放ってシミュレーション用の観測プローブを破壊、挙句の果てに始末書まで一度握り潰すといった大人げない暴挙に出た。
いくら昔の自分に負けたからって…
MS-05 ザクⅠ(シャア・アズナブル機)(THE ORIGIN版)
漫画・アニメ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』に登場。
ガルマと共にサラミス級宇宙巡洋艦とジオン自治共和国籍の輸送艦の衝突事故により生じたデブリの回収に出たシャアが、彼から回収作業に従事しているモビルワーカーの開発計画の真の目的を聞き、その情報を以て地上でのモビルワーカーの操縦経験などをダシにドズルに受領を直談判して手に入れたシャア初のMS。
シャアと黒い三連星の受領したザクⅠは初期量産型で、後発の機体にあるふくらはぎ外装の裾の後ろ側の丸い切り欠きが無く、ランドセルにハンガーユニットが付いている等形状が少々異なっている。
(正史の宇宙世紀では特に外見的差異は無いものの主に教導隊に配備された初期生産型がMS-05A、本格的な量産・実戦配備がされた後期生産型がMS-05Bとされているが、初期生産型と後期生産型の外見が差別化された『THE ORIGIN』での型式番号は両者共にMS-05で統一されている)。
この時点から赤い塗装は施されているものの、性能としてはザクⅠそのもの。それでもMSを甘く見ていた地球連邦軍に脅威を感じさせるには充分なポテンシャルを持っていた。
MS初の軍事衝突となる「スミス海の戦い」では、ミノフスキー博士の亡命を図った装甲車の奪還と護衛のガンキャノン最初期型の排除に動いていたランバ・ラル、黒い三連星とは対照的にその場からはあまり動かず主に対空戦闘をこなしていた。
MS-05S シャア専用ザクⅠ(THE ORIGIN版)
アニメ版『THE ORIGIN』に登場。原作漫画には登場しない。
「スミス海の戦い」で戦果を挙げたシャアが新たに受領したザクⅠで、肩部装甲やランドセルに本体の供給が間に合っていないザクⅡのパーツの先行配備品を取り付けた急場しのぎの性能向上型。
ザクⅡのランドセルを搭載したことで下部にベルト給弾式ザクマシンガン用の弾倉が取り付けられるようになっている。
カラーリングもザクⅠの面影が強かったものから胸部中央ブロックが黒く塗られ、ふくらはぎのレッドが薄くなるなど後のザクⅡに通ずる配色となっている。
急場しのぎということもあってか一年戦争開戦後初期の戦いであるフォン・ブラウン宙域戦に投入されて以降、ザクⅡの生産ラインが安定してからは足早にシャア専用ザクⅡに乗り換えられている。
正史の宇宙世紀作品においてゲラート・シュマイザーなどが搭乗しているMS-05Sとの関連性は不明。
MS-06R-1A シャア専用高機動型ザクⅡ(ククルス・ドアンの島版)
映画『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』に登場しているが、世界観を共有しているとされる『THE ORIGIN』の原作漫画には登場しない。
THE ORIGIN版の特徴であった鎖骨部のR6キットはS型から引き続き装備されているが、それを除けば外見上は何の変哲もないR-1A型。
ドアンのザクⅡにガンダム諸共崖下に突き落とされ気を失ったアムロが見た、過去の記憶がフラッシュバックする悪夢の中で、大気圏突入をするホワイトベースに取り付き損ねたガンダムにマシンガンを浴びせていた。
立ち絵を起こすために3Dモデルこそ用意されていたが、劇中では手描き作画だったためそれが用いられることはなかった。
正面からの作画かつ1カットのみ登場で、脚が見えるのもカメラが引いてからだったため、一瞬の出番の中でこれが高機動型と認識するのは事前情報なしではかなりの難易度を誇る。
AMX-011S シャア専用ザクⅢ改
小説・アニメ『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』に登場。
紆余曲折あって結局本来の主が乗ることはなくアクシズに死蔵されていた、シャア用の塗装とチューニングが施されたザクⅢ改。
詳細はザクⅢ改を参照。
当初S型と明示されたパーソナルカラーの機体はシャア専用機しか存在しなかったが、MSV-Rにて多数のパーソナルカラー機が設定された。
シャア以外に著名なパイロットとして黒い三連星が挙げられる他、たった3機しか実戦配備されなかった高機動型ザクⅡ後期型のパイロットとして知られるジョニー・ライデン、ロバート・ギリアム、ギャビー・ハザードの3人全てがこの機体の搭乗経験があったとされる。
本来は指揮官用として生産されており頭部ブレードアンテナが標準装備されている当機ではあるが、黒い三連星では他の搭乗機の例に漏れず小隊単位で運用されていることもあってか、ブレードアンテナを備え付けてあるのは隊長機であるガイア機のみとなっている。また、オルテガ機はランドセルに予備弾倉を収納するコンテナが増設されている。
他に漫画『機動戦士ガンダム バンディエラ』の主人公ユーリー・コーベル中尉が駆る左利き用に改修された(肩部装備が右側にスパイクアーマーのみ)薄紅色のMS-06LeザクⅡは模型作例では本機種をベースに製作されている(劇中では足裏やランドセルなどにJ型の意匠が見られるが、宇宙で使われているためその線はまずありえない)。
ガンダムを代表する敵役であるため立体化の機会も多く、1/144では旧キット「ベストメカコレクション」、FG、HGUC、RG、HG THE ORIGIN、リバイブ版HGUCで、1/100では旧キット、MG、MG Ver. 2.0で、1/72ではメカニックモデル、1/60では旧キットとPG、1/48ではメガサイズモデル、厳密にはガンプラには属さないが1/12では組み立てキットとしてHYPER HYBRID MODELが発売されている。
基本的に量産型ザクの成型色を変更してアンテナを付けるだけで商品として成立するので量産型ザクと共に商品化されていることが多いが、メカニックモデルについてはシャア専用ザクのみ、旧HGでは量産型ザクのみの発売で終わっている。
初代MG以降、いくつかのブランドではスラスターを強化したという設定を踏襲してランドセルや脚部を量産型とは差別化することが増えたが、アプローチの方法はブランドによってまちまちである。
初代MGではランドセルのスラスターが大型化し、脛側に開口部ができ小型スラスターが2対追加、ふくらはぎ左右の開口部2対から覗く小型スラスターも開口部一つあたり1基から2基ずつになっている。
PG、FGではランドセル外装にバルジが追加、ふくらはぎに装甲で覆われたスラスターが2基ずつ追加された。
MG Ver. 2.0、RG、メガサイズモデルではランドセルメインスラスターのすぐ上に角型のサブスラスターが、下には推力偏向用のパドルが追加され、ふくらはぎ左右に2対あったサブスラスターは中央に3対目が追加された。
後述のHGUCリバイブ版では量産型ではMG Ver. 2.0のJ型のようにオミットされていたランドセル上の開口部に小型スラスターが2基追加されており、下部のメインスラスターの取り付け位置を浅くしより露出させることでノズルを大きく見せている。
元の映像作品におけるシャア専用機は赤と言うには些か薄い色をしており、ローズピンクをメインに胴体がワインレッド(ローズピンクがサーモンピンク、ワインレッドが小豆色とも)という配色で成り立っている。ただし旧HGUCではワインレッドではなく茶色、HG THE ORIGIN版では赤の色合いがかなり濃くなっている等、キットによっては細かな差も見られる。
ただいずれにしても「真紅の稲妻」の異名を取る赤の他人、ジョニー・ライデンの搭乗していたザクⅡS型以降の機体に用いられている赤よりは鮮明さに劣るというのが大方の見解の模様。
1/144旧キットでは「ベストメカコレクション」以外にも、アンケート企画で使われた限定品であるザクマインレイヤーのリデコ品も存在した。
マインレイヤー自体が量産型ザクのリメイクを意図したキットではあるが、公式な既存キットのリメイクはこれが最初である。
HG THE ORIGINではブランドのトップバッターとして2015年に登場。
THE ORIGIN特有の緻密なディテールと、KPS(強化ポリスチレン)製のフレーム構造による広い可動域を併せ持っている。
付属品はMS用バズーカA2型、MS用対艦ライフルASR-78、ヒート・ホーク(展開状態と携帯状態の2形態)の3種類。
その拡張性も凄まじく、後に発売される初期量産型のC型系列やザクⅠ系列のみならず、MSDも含め全てのHG THE ORIGINのジオン系MSにそのフレーム構造が流用されている。
2019年にはMS用マシンガン2種(ドラムマガジン式とベルト給弾式)にファルメル隊のマーキングシールが追加された「赤い彗星Ver.」が発売された。
HGUCでは2015年にリバイブされたガンダムに対し長らくリニューアルキットが存在しなかった(THE ORIGINはパラレルワールドなのでHGUCのナンバリングから外されている)が、2020年にリバイブ版が発売された。
本体はABS・ポリキャップレスの新規造形だが、武装と一部手首を高機動型ザクから流用しており、肩部シールドのダボ穴はTHE ORIGIN版MS用バズーカA2型の弾倉(=バリスティックウエポンズのファンネルポッド)と規格を共有している。
また、スカートはスタンダードな分割式の硬質パーツとアニメ劇中の「歪む」可動を再現し、脚の可動域が広がる軟質パーツの選択式。更に前腕のロール軸により初代MG、PGに続き1/144では初めて所謂『ガワラ曲げ』が再現可能になっている。
ただし、軟質パーツの場合腰部に武器を付けることができないためそこだけ注意。
その他MG Ver. 2.0ではシャア専用機の他に成型色変更品としてジョニー・ライデン機と黒い三連星仕様が過去にプレミアムバンダイ限定で発売されていた。
SDのガンプラも複数発売されている。
BB戦士では最初期に「ザックン」としてラインナップされた後、5機セットの「シャア専用MSコレクション」に含まれる形でジョニー=ライデン ザクⅡの成型色変更モデルが登場。さらにリアルBB戦士「ザクⅡS型」として新規キットが発売された。このキットは同時期に発売されたF型のリデコ品だが、ショルダーアーマーが大型化され、新たにビーム・バズーカが付属する。
BB戦士以外のSDとしてはSDCSにラインナップされている他、変わり種としてはゲキタマンが、「プラモデル形式の組立式玩具」としてはSDガンダム ターンフラッシュが存在する。
SDガンダムフルカラーシリーズにラインナップ。 ポージングが固定されたモデルとなっている。※現在、入手困難。
なお外伝作品においては、ガンダムシリーズ最初のライバル機ながら、それほど際立った活躍には恵まれていない。
以下はシャア専用ザクをモチーフとしたキャラ。
最初のインパクトが強かったからか、「シャアといえば当機」というイメージは強い。
シャアを演じた池田秀一氏は朝日新聞にて「お台場のガンダムについてどう思われますか」と尋ねられた際、冗談めかして「おれの演じたシャアのシャア専用ザクも1/1スケールで展示してほしいね」と答えたことがある。
スーパーロボット大戦シリーズでも何度か登場している。初登場は『第2次スーパーロボット大戦』。
『スーパーロボット大戦F完結編』では初めて味方ユニットとして使用可能になった。
一部作品ではザクⅡ改の色変え(もしくはそれに角を付けたもの)という使い回しグラフィックになっている(SFC版『第3次スーパーロボット大戦』など(PS版『コンプリートボックス』では角付きの新規グラになっている))。
当然ながら通常はシャアが搭乗するが、『COMPACT2』では無敵鋼人ダイターン3の搭乗人物、コマンダー・ベンメルの「ベンメルコレクション」として無人機に改造されて登場する。条件を満たすと、宇宙に送られて修理される。このデータを引き継げば、第2部以降に高機動型ザクとして登場する。リメイク版の『IMPACT』では特定の条件を踏むことで、バーニィで奪取することができる(その後、他のガンダムキャラでの乗り換えが可能になる)。
『α』では隠し条件を満たすことで一時的にジュドー・アーシタが搭乗可能となる。
2021年6月15日には、中の人繋がりで赤井秀一専用ザクⅡ(赤井専用カラー)がガンプラとしてリリースされる事になった。これは劇場版閃光のハサウェイと劇場版名探偵コナンの公式コラボで実現したもの。逆にシャアザクカラーとして登場したのは江戸川コナンである。
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