機体データ
型式番号 | MS-11 |
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所属 | |
開発 | 小惑星ペズン秘密研究所 |
生産形態 |
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全高 | 18.2m |
本体重量 | 59.1t |
出力 | 1,440kW |
推力 | 64,800kg |
装甲材質 | 超硬スチール合金 |
携行武装 |
概要
一年戦争末期、ザクⅡの総合性能の向上を図りジオン公国軍の軍事計画「ペズン計画」に則り小惑星基地「ペズン」で開発されたモビルスーツ(MS)。
ザクⅡをベースとされているが、採用された新技術によって別次元の性能を誇る事から、新たにMS-11の型式番号を割り当てられている。なお、MS-11のナンバーは本来ゲルググに割り当てられるものであったが、開発が難航した為に本機へ番号を譲った経緯を持つ。
外装についてはザクⅡと一致する箇所はほぼ存在せず、ショルダーアーマーはスパイクが取り払われ鋭利な形状になったものが両肩に配されている。
ランドセルは下部のメインスラスターが角型になり、後方に新たにスラスターが付いた新型のものとなっており、コンパクトながらその総推力は高機動型ザクさえ凌駕するものとなっている。
また本機最大の特徴として、G-3ガンダムなど一部のフィールド・モーター採用機にしか施されていなかったマグネット・コーティング処理もされている点が挙げられる。
マグネット・コーティングは機体の関節駆動システムが、地球連邦軍で主流とされるフィールド・モーターでのみ効果を発揮する技術であるため、本機の関節駆動システムにフィールド・モーターが採用されている可能性が高い。
それ故にその機体構造や出自などに高い秘匿性を持つ機体とされる(この辺りを断言した資料は少なく、マグネットコーティング等の技術がどこから来たものかも不明)。
そのためなのか、一年戦争時代のザク系列機の多くに見られる流体パルスシステム特有の動力パイプが脚部に存在せず、その脚部のシルエットも幾分か連邦機に近いスマートなものになっている。
資料によっては様々な新技術とあることからこれ以外の技術が投入された可能性もある。
フルスペックで運用した場合、一般的な兵士ではまともに操縦出来ない程の運動性・機動性を発揮するとされ、運用の際にはパイロットに合わせてリミッターを設けている。
ザク系列機特有の生産性を維持しつつ機動力と火力の両立を実現しトータルではゲルググに劣らない機体だが開発が戦争末期であった事もあり、機体は試作段階あるいは試作機が数機作られた段階で終戦を迎えたため数機が実戦投入された程度となっている。
一年戦争終結後、本機を接収した地球連邦軍がその高性能に着目し量産、オーガスタ研究所等に配備され、連邦軍の次世代モビルスーツ開発の礎となった(ハイザック等のベースとなったとする資料もある)。
この際、コクピットを全天周囲モニター・リニアシートに換装されるなどの近代化改修が施され、連邦規格の武装を装備して実戦にも投入されている。
機動戦士ガンダムTHE ORIGIN MSD版
MSD版においては前述のフィールド・モーターの採用が明言された。
こちらでは急ピッチで開発が進められるが完成せずザクⅡの装備などを流用したテストタイプがキシリア部隊に配備されるにとどまったとされる。ただし、実際には一機完成しておりヴァシリー機として運用された。
バックパックの角型スラスターがザクⅡ同様に椀型2基のものが基本となっており(ガンプラ用なのか角型のものもある)、各部のデザインも多少のアレンジが加わっている。
また、運用が可能だったとされながら設定としてやや浮いていたビーム兵器に関しても具体的な設定が行われている。
武装
ブルパップガン
本機用の実弾武器。MSD版ではグリップの位置などが修正され名称も『4連装マシンガン』となっている。
大型ヒート・ホーク
本機専用の実体武器で刃や加熱するためのジェネレーターが大型化しているためザクⅡなどが使う通常のものより一回り程度大きい。前述の通りビーム兵器の運用も可能だが作戦によって変えるほか、後述の指揮官用機では機体出力の安定のためあえて採用している。
MSD版では通常のアクト・ザクの時点で2本装備。キシリア部隊では通常のヒート・ホークも使用している。
ビームライフル
後にハイザックやマラサイが使用するものに酷似したビームライフル。
銃下部のEパックにあたる部分は『カードビルダー』ではエネルギーCAPのメガ粒子蓄積ユニットで銃の全長を短くすることに成功したとされる。
なお、『ギレンの野望』シリーズ登場時にもビームライフルを装備しているが形状が異なっており、後述するB-CLUB版ガレージキットでのみ立体化されている。
ビームライフル/ザク・マシンガン改
連邦において使用された際に装備。どちらもハイザックが使用したものと同形。
ザクマシンガン改については『カードビルダー』では初期型としている。
MSD版ではビームライフルの形状が似ている理由については連邦がジオンの装備を取り入れた結果となった。
ビームサーベル
ビーム兵器が運用可能という設定から一部ゲーム作品で使用している。連邦のものに近いグリップが短いタイプであり、同時代のジオンMSではゲルググMなどが使うものに似ている。
連邦で量産された機体も所持しているという資料もある。
MSD版ではグリップがゲルググの使用するビームサーベル(ビームナギナタ)と同型状になっている。ただしビーム発生部が片方のみになっている。リアアーマーに二本装備可能。
ROBOT魂ではマウント位置などMSD版を意識したものになっているが、グリップはマラサイのものに似た長めのタイプになっている。
シールド
マレット機がゲルググと同形のものを使用。MSD版でもヴァシリー機が使用している。
前述のようにややこしい部分があるが概ね本機専用と思われる各武装と異なり唯一流用と思われる。
関連動画
パーソナルカスタム
マレット・サンギーヌ機
中距離から近接格闘戦にまで主眼を置いたカスタムが施された機体。
頭部に指揮官用ブレードアンテナを増設し、基本武装のビームライフルとゲルググと同型のシールド、二本の大型ヒート・ホークを携行している。
紫に塗装され、ショルダーアーマーの二重装甲化や胸部前面全体を覆う増加装甲といった装甲と機体出力を強化した改造が施されている。
機体出力を安定させて高出力高機動の戦闘を常に行うため格闘兵装をビーム兵器ではなくヒート方式に変更。攻撃力を補うために2本同時使用している。
『機動戦士ガンダムバトルオペレーション2』では「指揮官仕様」とされる。
キシリア部隊仕様
機動戦士ガンダムTHE ORIGIN MSDに登場。形式番号YMS-11。
ぺズン計画を主導した突撃機動軍司令官キシリア・ザビ中将直属の親衛隊専用機。
機体のカラーリングは黒で頭部には所属部隊を示す鶏冠「クレスト」が付いている。配備当時は専用のスラスター及び融合炉の供給が間に合っておらず、ビーム兵器の類は装備されていない。また、両肩及びランドセルはザクⅡのものを転用している。
上記の経緯からテストタイプではないかとも推測されている(後に通常のアクト・ザクの方でテストタイプと明言された)。
試作機を表す型式番号の「Y」の頭文字は後年発見された本機の資料から暫定的に付けられたものとされている。
ヴァシリー・ボッシュ機
MSD版『ククルス・ドアンの島』に登場。
通常のアクト・ザクであるがMSD版の設定では実質専用機。
MSD版に設定された装備を一通り揃えており、マレット機同様ゲルググタイプのシールドも装備している。肩やシールドには部隊マークがある。
バリエーション
アクト・ザク・ラーⅡ・アクア
メカニックデザイン企画『A.O.Ζ Re-Boot』に登場。
型式番号MS-11+ARΖ-124HBⅡM。連邦による接収後にティターンズ主導のTR計画の中で考案されたバリエーション機。
水中用強化Gパーツ「ガンダムTR-6[アクア・ハンブラビⅡ]」と合体したアクア・ジムの後継となる水中戦対応仕様。
- アクア・ハンブラビⅡ
型式番号ARΖ-124HBⅡM。「万能化換装システム」に基づく設計により肩と股間さえショルダー・ユニットとサブアームで掴めればモビルスーツを選ばず合体し水中適性を付与できるという特徴を持っており、その一例としてジムⅡ・ラーⅡ・アクアと共に装着例が紹介された。ただMS本体の防水性や耐圧性に対する言及は無く、本機がどの程度の水深まで耐えられるかなどは不明。
ザク・マシーナリー
漫画『機動戦士ガンダム ヴァルプルギス』に登場。
型式番号MS-11R。ハマーン・カーンを名乗る彼女と瓜二つの容姿をした女性が率いるネオ・ジオン軍残党部隊の主力MS。
型番や脚部形状などからアクト・ザクとの繋がりが窺える。
前日譚となる『機動戦士ガンダム ヴァルプルギスEVE』で詳細が明らかとなり、アナハイム・エレクトロニクスが発言力の強化を目的にアクト・ザクを機代化改修しネオ・ジオン残党セラーナに格安で売り込んだ機体であることが判明した。
- ザク・マシーナリー(エルナルド・バト専用機)
漫画『ヴァルプルギス』に登場。
型式番号MS-11RS。自称ハマーンの親衛隊のエルナルド・バトのパーソナルカスタム機。百式を意識したフレキシブル・バインダーとカラーリングが用いられており、マラサイのようなヘルメットタイプの頭部をした狙撃仕様となっている。
アクト・ハイザック
型式番号RMS-106AN。
ゲーム『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』に登場。
ハイザックに可変MAの中距離支援やアクト・ザクと連携を目的とする改良を行った機体。マグネットコーティングが施すために内部の構造を刷新しており、ザクに対するアクト・ザクのようにハイザックの形をした別の機体とも言える。
劇中での活躍
『機動戦士Ζガンダム』劇中では、ロザミア・バダム中尉の搭乗するギャプランの随伴としてベースジャバー3機に2機ずつ搭乗する形で6機が登場、共にアウドムラに追いすがったがガンダムMk-Ⅱと百式に殆どを撃墜されている。
一年戦争中に開発された機体であるが、本格運用が開始されたのが一年戦争後、それも連邦軍によって接収された後という珍しい機体。しかもショックアブソーバー性能の高いリニアシートの恩恵でアクト・ザク本来の運動性が発揮しやすくなっているという皮肉なおまけまでついている。
また宇宙世紀0090年にネオ・ジオンが運用していたマイナーバージョンも存在する。
『宇宙、閃光の果てに…』におけるマレット・サンギーヌ機
試作機のうちグラナダ基地に配備された機体がグラナダ特戦隊の隊長、マレット・サンギーヌの乗機として実戦投入されたもの。
地球連邦軍のサラブレッド隊と交戦するも、ガンダム4号機のメガ・ビームランチャーを受けて撤退を余儀なくされた。(この際マレットも顔に大怪我を負った)
その後、ア・バオア・クー陥落の報と共にグラナダに展開したジオン軍も停戦に至ったが、マレットは停戦を受け入れず、本機のリミッターを解除。同時に自身も副作用で人格崩壊がある投薬で無理矢理身体を強化し、ガンダム5号機に襲い掛かる。
アクト・ザク本来の戦闘力でガンダムのみならず、止めようとした友軍や連邦軍までも無差別に攻撃しながら戦い続けたが、最終的にガンダム5号機によって撃破された。
媒体によってはメガ・ビームランチャーでそのままマレットごと撃破される。
通常のアクト・ザクになっていることもある。
『ククルス・ドアンの島』におけるヴァシリー・ボッシュ機
MSDに登場するモビルスーツ各種が登場する機動戦士ガンダムTHE ORIGINのスピンオフ漫画、『ククルス・ドアンの島』に登場。
ククルス・ドアン特務少尉の部下だったヴァシリー・ボッシュ准尉がドアンの実兄ヤッ・デルマ中佐指揮下で受領し、ア・バオア・クーでの最終決戦時に搭乗。
地球連邦軍のヘビーガンダム相手に死闘を繰り広げた。
ガンプラ及び立体物
MS-X自体がガンプラ化でお蔵入りしたものの、B-CLUBにて『ギレンの野望』登場時のものがガレージキットとして立体化されたもの(武装に『ギレン~』登場時のビームライフルが付属し、現在のマラサイ等に酷似したものと異なる)が存在し、完成品フィギュアとして『ジオノグラフィ』にてザクフリッパーとの選択式のもの(アクト・ザクとしてはザク・マシンガン改が武装として付属)が発売されたことがある。2019年においてはROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.としてMS-X版(ただしククルス・ドアンの島を紹介していたり前述のビームサーベルなど商品のコンセプト上独自の解釈もある)が魂ウェブ商店限定で発売、2020年3月発送となっている。
ガンプラとしては1/144スケールでHGTHE ORIGINのMSDにてキシリア部隊仕様が一般販売された後に、通常のものがプレミアムバンダイ限定で発売された。
キシリア部隊仕様は武装に専用大型ヒートホーク2つと4連装ブルパップマシンガンの他、従来のザクⅡと同型のヒートホークも付属している。
通常のアクト・ザクはビームサーベル2つとビームライフルも追加されており、他に肩部装甲、ランドセル、クレストの無い頭部が新規造形となっている。ビームサーベルの刃は一年戦争のHGとしては珍しいヒートサーベルのような寸胴で成型されている。また、ランドセル下部のスラスターは丸型2基と角型1基の選択式となっているため角型を採用すればMS-X版に近いものにもできる。
なおMSD版にはない『宇宙、閃光の果てに…』のマレット機は発売されていない。
余談
- ビーム兵器の変遷
本機はビーム兵器が運用可能という設定は存在していたが特にどのような武器を使うかの設定はなかった(宇宙世紀の作品、特に外伝等では武器のみ設定が存在しないというケース自体は割とある)。
そのため、本機がビームライフルを装備していたのはアニメ『機動戦士Ζガンダム』が初出となる。
この作品でアクト・ザクは先述の通り連邦軍所属機であり、ハイザックやマラサイと共に運用されていたために、メガ粒子の弾となる縮退寸前のミノフスキー粒子を封入したエネルギーCAPを弾倉のように扱えるEパック式ビームライフルといった装備も共用化されていた。
しかし後年、本機が登場する一年戦争を扱ったゲーム作品で、『機動戦士Ζガンダム』登場時のビームライフルのデザインがそのままアクト・ザクのものとして登場した(Ζの描写や設定をそのまま流用されたと考えられる)。
アクト・ザクのロールアウト当時はゲルググ用のビームライフルが実用段階に入ったばかりであり、ミノフスキー粒子はまだビームライフル内蔵のエネルギーCAPに直接充填している時代、Eパック式のビームライフルが実用化されるのは戦後の筈であるため時期的な矛盾が生じてしまっているのである。
前述のようにたまたま似た形状になっているとしたものがあるくらいでこの辺りの事情は分かっていない。
『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN MSD』版ではジオンが独自に開発したビームライフルに設定が練り直されて、戦後のハイザックと同型のビームライフルはこれを取り入れたものと解釈している。ただし、ハイザックのビームライフルには元々ガンダムなどの携行型ビーム兵器を開発したボウワ社製のビームライフルという設定が存在する。この事からMSDの設定を合わせると同社が本機のビームライフルを参考に自社で改良したビームライフルを連邦軍に納品していたという形となる。
ただし、MSD版はORIGINという別時空を利用し設定の整理が行われているのでMSD版ハイザックなどの設定がないため整合性はわかっていない(MSD版との設定を逆輸入、混在させるケースはあるが今のところアクト・ザクに関してはROBOT魂以外で起きていないためビームライフルの設定は触れられていない)。
なお、似た例としては百式などが使用するEパック式ビームライフルを一年戦争時点でジムスナイパーⅡが使用している。アクト・ザクとは違い食玩等で明確に繋がりがあるとするものもある。
ビームサーベルも前述のように複数のタイプがあるが設定として起こされているのはMSD版のみ。
- マグネットコーティングの出自
TVアニメ『機動戦士ガンダム』の没プロットによればフラナガン機関が新開発した技術として登場、それをテム・レイがジオン軍から奪ってガンダムはパワーアップするが、追手の銃撃で出来た傷が原因でテムは事切れる……と言うもので、本機のマグネットコーティングも『ジオン側の新技術』の流れを組んだものだが、本放送ではマグネットコーティングの出自が地球連邦の技師モスク・ハンが開発したものとして設定されている。さらに、駆動系の設定がされた際に地球連邦軍はフィールドモーターでジオン公国軍は流体パルスとされ、マグネットコーティングはフィールドモーター用の技術となっている。
また、本機の本放送登場が没になったことでMS-Xのペズン計画出自になり、マグネットコーティングもその計画で開発されたことに変化している。