概要
炭素を含む物質の不完全燃焼で発生する。
高温下では不均一化といって炭素と二酸化炭素に分かれる。二酸化炭素と異なり一酸化炭素は酸素原子が1つ足りないため可燃性であり、また水に溶けない。
高温下で金属と反応すると金属カルボニルと呼ばれる物質を作る。
これらは有毒な物質であるがこれらのなかで群を抜いて有毒なものがニッケルと反応したテトラカルボニルニッケルと呼ばれる物質である。これは常温下でも発生し、(77~117℃で最も発生しやすくなるが、一酸化炭素の分圧が低い環境下では他の反応が支配的)非常に毒性が高いため、作業環境下の許容濃度も0.001ppm(一酸化炭素の場合50ppm)と非常に小さな値に規定されている。あまりの毒性から未だに臭いが不明(嗅いだらすぐ死んでしまうため)。
そのため、ステンレスなどニッケルを含む合金でパイプを作って一酸化炭素の輸送・供給といったことをしようものならどういう事が起こるかはお察しください。
ちなみにテトラカルボニルニッケル含む金属カルボニルは可燃性の物質である。
製法
工業製法
コークス(蒸し焼きにして硫黄や樹脂分を除去した石炭)と水を高熱下で反応させる。このとき温度は800℃以上であることが必要。実際には1000℃程度で行われる。
C + H₂O ⇆ CO + H₂
実験室での製法
HCOOH → CO + H₂O
用途
- 鮮魚の切り身の見栄えをよくする。(鮮度を見誤り食中毒の原因になるため1994年以降は食品衛生法で禁止されている。)
- 合成化学用の原料
- 都市ガス(石炭ガスに含まれていたが、ガス漏れ時に一酸化炭素中毒を起こすため現在はすべて天然ガスに代替されている。ちなみにガス屋さんがボンベで持ってくるガスはプロパンガス)
- 木炭自動車(戦時中の必要物資統制がされていた時代に、木炭から木炭ガスと呼ばれる一酸化炭素と水素の混合物を発生させ燃料として走らせていたバスなどの車両。木炭ガス発生装置の操作が難しい上に出力が低く、更にエンジンの焼きつきも起きやすい。しかもガス漏れによる一酸化炭素中毒も発生したため、終戦後必要物資の統制がなくなるとともに歴史資料としての保存車を除き姿を消した。ちなみにバスだけでなくトラックなどに木炭ガス発生装置を架装するケースもあった。第一次世界大戦時の欧州でも使用されており、第二次世界大戦では日本だけでなく大戦末期のドイツでも使用されたほか、北朝鮮では燃料事情が悪く現在でも使用されている模様。)
毒性
赤血球内のヘモグロビンと非常に化合しやすい(酸素の約250倍 )また、ヘモグロビンから酸素を放出しにくくなるため血液の酸素運搬能力が下がり、中毒症状を起こす。
1時間当たり500ppmの暴露で症状(風邪の症状に似ているため対処が遅れやすい)が現れ始め、1000ppmでは顕著な症状、1500ppmの暴露で死にいたる。
症状が風邪に似ているため自覚しづらく、意識があっても徐々に体の自由が利かなくなり一酸化炭素中毒を疑うころには昏睡状態に陥り、そのまま呼吸により一酸化炭素を吸い続けてしまい、呼吸や心機能が抑制されて死亡する。また高濃度の一酸化炭素を吸った場合は自覚症状なしに昏睡状態に陥る。
治療
純酸素吸入を施す。それでも不十分な場合は高圧タンク内に患者をいれ酸素吸入を施す高圧酸素療法が必要となる。また、一酸化炭素は脳に蓄積する性質があるのでこの治療は数日から数十日にわたる治療となる。脳への蓄積度合いによっては組織が壊死し、後遺障害を残すことがある。脳の部位によっては回復しない後遺障害もある。