概要
回転する羽により空気を前方に送り出し、涼を与える装置。その歴史は意外に古く、明治時代中期にはすでに芝浦製作所(東芝の前身)によって日本で発売されていた。
エアコンの普及した現在でも、夏の風物詩として知られる。エアコンと組み合わせることで大きな効果が得られ、USB接続の小型のものから3万円オーバーの高級機まで、多種多様の扇風機が売り出されている。東日本大震災後の節電ブーム時にはよく売れて、扇風機の良さを再発見した人も多い。
似た製品に、部屋の空気を満遍なく循環させるのが目的の「サーキュレーター」、天井取り付け式の「シーリングファン」、窓枠取付の「ウインドファン」と呼ばれる物もある。
風量の多段階調整と消費電力削減を図った「DC扇風機」とよばれる扇風機もある。これは、ファンモーターが従来のコンデンサー式単相誘導モーターからインバータ制御の同期モーターになっており、コンデンサー式単相誘導モーターでは困難だった微風の送風や風量の多段階調節が可能となっている。
エアコンとの比較
部屋全体の温度を下げることが可能なエアコンに比べると、扇風機は冷房能力・範囲ともにエアコンに大きく劣る。
扇風機の風を受けて涼しく感じるのは「体温より低温の空気がより多く当たるため体熱が奪われやすくなる」ことが第一であり(仮に気温が体温より高ければ逆効果である)、それに加えて「汗の気化熱」である。つまり、扇風機自体に気温を下げる能力はない。風により今ある熱気がどこか他へ移動するというだけで、代わりに入ってくる空気も暑ければ温度はそのままである。
一方で以下の利点がある。
- 電気料金が安い……1基あたり通常のサイズのものの消費電力は約50W、対する冷房は700Wほど
- 初期投資が安い……一般的なものなら1万円もあれば十分いいものが買える
- 環境に優しい……冷媒などを用いないため。そもそも冷房は熱気を余所に捨てているので、排熱先は逆に暑くなる。ヒートアイランド現象の原因の一つである
このほか、一般的なものであれば手に持って運べる、設置場所を選ばない、サーキュレーターや衣類乾燥機の代わりにもなる、外に向けて焼き肉などの煙やにおいの排出など、工夫次第で涼をとる以外の使い方も出来る。
いかにエアコンも進化し続けていようが、現在でも利点は多い。
種類・様式
- 一般的なタイプ
昭和時代の愛称
注)この時代の扇風機はコンデンサの絶縁低下、モーター巻線のレアショートを起こしている可能性があるので、もし物置などから出てきてもすぐプラグをコンセントに刺さないで一度点検修理して安全を確かめてください。(使用中であっても普段より回転が遅い場合、上記故障が発生しています。)最悪発火等の重大事故になります。
東芝:花シリーズ(毎年意匠が異なる扇風機に花の名前を付け販促した) 4枚羽根で他社3枚羽根と差別化し、鉄道車両の扇風機にも採用された。
日立:さわ風(扇風機全般に使われた) 鉄道車両の扇風機としても使われた。
三菱:鉄道車両の扇風機でも使われた。
富士電機製造:詩風(一般用) 鉄道他用に直流の扇風機も製造。
上記4社は車両のモーターや制御機器として有名で扇風機も採用されやすかったし、長寿命であった。 国鉄時代オフシーズンは下のようなカバーがかぶせられた。
冷房電車の初期でも扇風機が活躍したがラインデリア(家庭のエアコンの送風方式と同じ)に順次置き換わった。
松下電器:松風
シャープ:ちどり
サンヨー:Red Motor 樹脂でモーターや首振り機構が覆われてしまい、カラーテレビのブラックシャーシとともに一般の方にはイメージがわかなかった。
ホリエ:すず風
いずれも家庭用はコンデンサモーター(単相で回転界磁を作るため)を使用している。なおON-OFFのみの安価なものは隈取モーターを使用している。
- 羽の無いタイプ
ダイソン社の「エアマルチプライアー」
- バルミューダ製
そよ風の扇風機こと「グリーンファン」。
機構は二重反転プロペラ(同軸反転)だが、それと異なり回転軸は重ならないようになっている。
余談など
- 年少者は風に当たりながら、「あ゛~」と声を出して遊ぶ。一部の大人は、「ワレワレハ~、ウチュウジンダ~」と喋りたくなる性質がある。その正体は、ミステリアンかも知れない。ミステロンと似ているが、別の異星人である。
- 「風を切る」ことから、野球においてよく三振する打者の比喩としても用いられる。
- 『怪盗レーニャ』には、ずばり扇風機という名前のキャラクターが登場する。声は三澤紗千香が担当。「婦警のっち」のスカートをめくる習性があり、電源がなくてものっちがいる場所に必ず現れる。