概要
風車の形状は一般的なプロペラ型以外に、ダリウス型、サボニウス型など、様々な形状のものがある。
特徴
風がふく場所であれば発電でき、何も排出しない。このため、CO2等を排出する火力発電に代わるクリーンエネルギー(再生可能エネルギー)として期待されている。
風力の変換効率は高い(40%)のだが、風力や風向きは大きく変化するので効率は自然条件に大きく左右される。風が吹かない場合は発電できないのはもちろんだが、台風などの強風下では風車や発電機の破損を招く恐れがあるのでブレードの角度(ピッチ)を変えて速度を抑制し、さらに強い風が吹くと保護のために発電を休止してやり過ごす。
風力発電に使う風車は風のエネルギーを効果的に吸収し、突風をそよ風に変える「防風効果」が期待できる。背の低い防風林の中に背の高い風車を立てて防風効果を高めたり、飛行機の着陸を困難にする横風対策として飛行場に設置する研究も行われている。反面、自衛隊や在日米軍のレーダーなどに悪影響を及ぼす可能性があり、2024年に防衛省の警戒管制レーダー施設周辺の陸上風車の設置が規制されている。
国際エネルギー機関(IEA)は2050年までに風力発電が太陽光発電と併せて主流の電力源になると予測している(ESA)。
日本政府は、地球温暖化対策・エネルギー安全保障のため、洋上風力発電を普及させる意向を示している(ロイター通信)。その一歩として、再エネ海域利用法が改正されている(経済産業省)。
アメリカでは太陽光発電とともに最も安い電力源となっている(Yale Climate Connections)。
風力発電と災害
日本の大型風車は50m、小型風車は37.5mまでの風速に耐えられるようになっているが、千葉県内の各地で風速50m超えを記録した2019年の台風15号のような大型台風の襲来を想定すると、これでも不安がある。そもそも、日本では送配電を(風速40mまでしか耐えられない)電柱に依存しているため、風車が無事でも発電設備としては機能しなくなることも考えられる。
また、豪雪地帯では積雪により風車や発電機が破損するケースがあるため、対策が課題となっている。
環境問題
風力発電のプロモーション動画はBGMが入っていることが多いため無音のような印象を与えるが、実際には音がする。聞こえる音のほか、人間には感知できない超低周波音も発生している。陸上風力発電から300m離れた位置に立つと、35-45デシベル(会話の大きさと同じレベル)の音を聞くことになる(米国エネルギー省)。
「風車病」として風車からの低周波音・超低周波音による振動による健康被害を訴える人もいるが、研究で実際に示されたことはない(Science Feedback)。
太陽光発電所や水力発電所(ダム)にも言えることだが、地球環境のため、CO2の排出を減らすためという名目の元、大規模な風力発電所などを建設するために森林が削られ野生動物の住処が奪われる事もある。
洋上・陸上問わず鳥類に害を与える可能性や、洋上では鯨類や鰭脚類などの海洋生物に悪影響を与える可能性も指摘されている。
これらの問題点から、風力発電に反対する運動や団体も存在する。
ただし、鳥の死亡数については、いくつかの研究で風力発電より火力発電のほうが多いことが指摘されている(MIT Climate、Science Feedback)。
また、風力発電がクジラをはじめとする海洋生物に害を与えるという言説についても証拠はない(NOAA)。
新しい風力発電装置
上述の環境問題や自然災害に配慮した改良型の風力発電施設の開発も進んでいる。台風常襲地の沖縄県の離島ではあまりにも強風による風車の損傷・倒壊が多発したことから、沖縄電力は強風に備えて倒れるようになっている可倒式風車を導入している。地球温暖化の煽りで本土でも上記の台風15号のような大型台風の被害が増えている状況を考えると、今後は沖縄以外でも可倒式風車の導入が進むかもしれない。
他にも、台風のような強風時にも発電することができる風車(風速50m超えはさすがに無理だが...)や、低周波音を減らしたり、バードストライク対策を施した風車(例: 鳥が風車の存在を視認できるデザインにする、人工知能で鳥の接近を検知し、風車の電源を一時的に落とす)などが続々開発されている。
主な風力発電メーカー
風力発電メーカー大手として挙げられるのがヴェスタス(デンマーク)、ゴールドウィンド(中国)、エンビジョン(中国)である。かつては三菱重工業や日立製作所などの日系メーカーも製造を行っていたが、参入が遅かったこともありいずれも撤退している。
中国では、当局の補助金など影響により2020年代から急速に普及が進んでおり、同時に中国メーカー同士の価格競争により価格破壊が起きている。そのため、風力発電に強みを持つ欧米諸国では警戒感が高まっている。