概要
アメリカ海兵隊(英語:United States Marine Corps, USMC)とは、アメリカ軍(連邦軍)のひとつを成す軍事組織。
独立戦争以来の歴史があり、本来海兵隊は海軍の配下にある組織であるものの、この組織に関しては独立した軍として意識されているとされるが、実は1798年に連邦議会で可決された『Act for establishing and organizing a Marine Corps』という法律に基づく、感覚だけではない法的根拠をもって陸海軍(法律が可決された当時は陸海軍しかなかった)とは別に組織されて現在まで続いており、アメリカ海兵隊のことを正式に『Marine Corps』と呼ぶのは、この法律の題名に由来している。
現在ではMAGOF(Marine Air Ground Operation Force、海空陸任務部隊)として、陸海空軍すべての領域の装備を使用し、自前であらゆる任務を遂行できる能力を有している。
アメリカ軍の中では唯一本土防衛を任務に含まず、侵攻・上陸作戦を専門とする緊急展開部隊として位置付けられている。そのため揚陸艦・戦車・支援用の戦闘機・戦闘ヘリコプターなどを擁する大所帯となっている。ちなみに、事務方・コック・将軍に至るまですべての海兵がライフルマンとなっているが、衛生兵など一部は海軍任せである。
主に最前線で戦う部隊であり、最初に敵と交戦する部隊である。
アメリカ合衆国が独立して最初の宣戦布告を交わした正式な対外戦争では、7人の海兵隊員が現地で500人の志願者を集めて4,000人の敵を相手に戦って勝利したというこの御方もビックリの記録がある。この一件は海兵隊初の海外派遣での勝利ということもあって海兵隊讃歌の歌詞に反映され、現在に伝えられている。
1945年2月の「硫黄島での戦い」では敵前強行上陸で戦死者を501名も出し、1日の戦闘によって生じた戦死者数としては、海兵隊創設以来2011年までのあいだにおいて最大である。硫黄島擂鉢山に星条旗が掲げられた日は、後日「アメリカ海兵隊記念日」に制定されている。
沿岸警備隊を含めたアメリカ軍を構成する6軍では3番目に小さく、最高位の軍人を統合参謀本部の構成員として送り込む5軍のなかでは最小の組織でもある。
なお、ほかの軍種と違って大統領直属の部隊であり、議会の承認なしでの動員が可能である。大統領の搭乗するヘリコプターを運航しており、その際のコールサインは「マリーンワン」である。また儀仗も海兵隊の任務となっており、大統領の行くところにはつねに海兵隊員の姿もある。
新兵訓練キャンプはパリス・アイランド(サウスカロライナ州パリス・アイランド)とキャンプ・ペンデルトン(カルフォルニア州サンディエゴ)の東西の2箇所にあり、ミシシッピー河を境に東側の出身者はパリス・アイランドに、西側の出身者はサンディエゴに送られる(なお、女性兵士はパリス・アイランドへと送られる)。
ちなみに、サンディエゴには『悪魔の丘』と呼ばれる急な坂道がある事から、パリス・アイランド出身者を「坂を免除された者たち」と、田舎のパリス・アイランドに対してサンディエゴの近くにハリウッドがあることからキャンプ・ペンデルトン出身者を「めかし屋ども」と互いにからかっている。
沿革
1775年11月10日に大陸会議が大陸海兵隊の設置を承認し、1783年4月に大陸海兵隊が解散したのち、1798年7月11日に連邦議会が海兵隊の設置を承認して現在に至る。
創設から朝鮮戦争までにかけては、海上の艦艇から揚陸艇や水陸両用車などに分乗して出撃し、敵の待ち受ける海岸線に上陸するような水陸両用作戦が任務の主体であったものの、ベトナム戦争以降、とりわけ冷戦が終了して非対称戦が主流になると、緊急展開能力と自己完結性を備えた「第2の陸軍」的な組織として運用されるようになる。
2020年代に入り、中国やロシアといった修正主義国家の軍事的影響力が増すようになると、新たに『フォースデザイン2030』と呼ばれる転換策を打ち出している。この方針は、多次元領域で活動する正規軍の活動に対抗するために立案された編成と作戦の大規模な変換であり、敵の勢力圏内にある島嶼(とうしょ)部に散開して地対艦ミサイルによる封鎖網を築き上げるなど、主にアメリカ海軍との連携に主眼を置いたものとなっている。
関連イラスト
関連動画
アメリカ海兵隊広報CM『A Nation's Call』(2018年2月)
アメリカ海兵隊広報CM『Full Circle』(2021年11月)
アメリカ海兵隊讃歌(The Marines' Hymn)
関連タグ
ジェームズ・マティス V-22(オスプレイ) AV-8B F35 M1エイブラムス
別名・表記ゆれ
- USMC
- マリンコ:Marine Corpsを英語読みをすると海兵の死体となってしまうのでフランス語風発音から。
- ジャーヘッド:所謂GIカットやブルードレスの襟がポットの蓋に見えることから。
- レザーネック:支給されていた黒い皮製のカラーから。日焼けによって革のように硬くなった皮膚という説もある。
- デビルドッグ:1918年にフランスを支援したアメリカ海兵隊第5海兵連隊第2大隊51中隊の勇敢さを例えた言葉から。
- イエローレッグ:陸軍では廃止されたアンクルブーツのレギンスから。
- グラント:不満を意味するスラングで、転じて文句が出るほど重い荷物を持つ歩兵。