「五条家との関係修復との契機として彼を後押しする声も少なくない」
概要
禪院家の術師部隊「炳」の一員で、特別1級呪術師。
人物像
御三家である禪院家の幹部の一人。直毘人の遺言を伝達する際には、直哉・扇と共に立ち会う事が指定されており、直哉が当主になった場合には、財産の運用に扇または甚壱の承諾が必要であるともされていたなど、家の中でも重要な立ち位置にいた事が窺える。
ツンツンに跳ねた長髪に太い眉、筋骨隆々とした体躯に無精髭を生やした野性的な外見の男性。額には大きな傷痕がある。禪院家を出奔した禪院甚爾（伏黒甚爾）の兄なのだが、容姿は殆ど似ていない。一方で、甥にあたる伏黒恵とは父親の甚爾より髪質が近しいかもしれない。
基本的にはやや鬱々とした印象を与える人物であり、寡黙である（喋らないという訳でない）。行動の基本は家の政治的な立ち位置や動向を最優先しており、他の御三家や総監部などとの立場・勢力争いに気を向けている。また、下部組織との関係はかなり深く、躯倶留隊の隊員達からは慕われている。対して隊長の信朗は、指示を出す際に「後で甚壱にドヤされんのは隊長の俺」などと愚痴を溢すなど、直接責任を追及される立場なのもあって甚壱には一歩引いた態度をしている。
直哉からは「（当主になるには）顔がアカンわ」「甚爾くんと逆なら良かったのになあ」と貶されており、この事からファンからは「ブサイク」という愛称で呼ばれるようになった。
しかし、逆に言えば基本は実力至上主義である直哉ですら、貶なす場所が顔しか見い出せなかったくらいには、その実力を内心認めていたようである（実際に、この場面で直哉は扇の事は「パッとせえへん」、自分の兄達の事は「皆ポンコツ」とばっさり切り捨てているのに対して、甚壱の事だけは一拍考えた上で顔を貶している）。
一方で、彼の方も直哉を当主の器とは思っていないようで、「伏黒恵はオマエより幾分まし」と直哉に率直に言っている。ただし、直哉の方もそれに対して「アアッ」とキレ気味に返事を返したもののそれだけであり、このような軽口を流せる程度には両者の関係は比較的悪くないと言える。
活躍
当主である禪院直毘人が死亡した後に、フルダテが遺言状を開示する際に禪院直哉、禪院扇と共に集合した。その際に遅れて現れた直哉に挑発されて殴り掛かる。しかし、次期当主として伏黒恵が選ばれた事を通達されると、その場では特に異議を唱える事もなく引いた。
しかし、その裏では自分達が禪院家の財産を引き継ぐ為に行動を起こしていた。合法的（あくまで呪術界基準）に伏黒を抹殺する為に、扇から提案された「上層部へのカモフラージュの為に、伏黒に加えて真希・真依にも五条悟解放を企てた罪人の濡れ衣を着せ、実の親である扇が真希・真依を殺す」という提案に乗る。扇による真希・真依の始末の経緯を先走った為に、当初は蚊帳の外だった直哉に説明しながら直哉と共に待機していたところ、覚醒した真希に当の扇が敗れて逆に殺された事を知って驚愕する。
扇の死と真希の造反を知った禪院家は、総力を挙げてこれに対処しようとするが、覚醒した真希の前に禪院家の戦闘員達は為す術なく斃れていき、甚壱も「炳」の隊員達と連携して真希に挑む。禪院蘭太の術式で真希の動きを止めている間に、自身も術式を発動して潰そうとするも、躱されたのか効かなかったのか真希は無傷であり、直後に一瞬で首を切断されて殺され、生首は庭の池に投げ捨てられた。
戦闘能力
拳打と関連した術式を持っており、素手での肉弾戦を得意としている。また、作中では同じ部隊の隊員達と連携をとって真希と対峙しており、集団戦や指揮官としての技量もある模様。
具体的な戦闘描写はあまり多くないものの、それでもその戦闘力は下記の通り「炳」の中でも明らかに抜けており、直哉ですら認めざるを得ない程の高い実力がある事がはっきりと分かる。
術式
正式名称を含めた詳細は不明だが、拳を構えると同時に背後に巨大な拳がいくつも形成され、振り下ろすとその拳も墜落する。背後に浮かぶ拳の動きは本人の拳と連動している模様。
対象のみならず広範囲を押し潰す事が可能であり、作中では周囲の屋敷を破壊し、地面にはクレーターが形成される程の攻撃力を見せていた。その破壊力・攻撃範囲は作中で登場した1級呪術師の中でも抜きん出ており、作中描写だけなら五条悟の“茈”や石流龍の“グラニテブラスト”に次ぐレベルである。
余談
- 伏黒達の殺害を画策していた事が明らかになった事で、ネット上では「心もブサイク」「心ブサイク」とまで言われる事になってしまった（まあ反論のしようがない評価だが）。150話で発動した術式も正式名称が不明なので「ブサイクメテオ」と呼称されている。
- ただし、直哉は「顔がアカンわ」と言っただけでブサイクと断言した訳ではなく、実際に彼の外見は男らしい彫りの深い顔とも言えるものなので、別にブサイクと言う程でもない。
- 一応彼を擁護すると、伏黒自身は禪院家との繋がりが薄く、積極的に禪院家の内情には深く関わって来なかった事を思えば、全財産を伏黒が相続する事に拒否感を覚える事自体は自然な感情である。伏黒殺害計画の件に関しても、伏黒が虎杖の蔵匿を行っていた事を考えれば、禪院家でなくとも呪術師として殺害を考慮に入れて行動する点は致し方ないとも言える。
- また、同じ炳に属する蘭太が真希との交戦時に重傷を負った際には、動揺して彼を気にかけていた事や、蘭太自身も甚壱を信頼している言動が多い事からも、決して血も涙もない外道という訳ではない。実際、17巻で判明した躯倶留隊からの評価値は5.0点満点中4.8点。彼等の話を聞いた限りだとスイカを差し入れたり筋肉を褒めたり等、隊員とは結構頻繁に交流していたらしい。
- 尤も、特に罪状が確定もしていない真希と真依の殺害まで含んだ奸計に加担した点は擁護のしようがなく（真希はまだしも真依は少なくともこの時点では、五条の件でも虎杖の件でも完全に濡れ衣である）、その結果死亡したのは自業自得としか言いようがない。
- しかも、上記の蘭太を含む他の面子は誰も扇の計画等は知らされていなかったので、結局は甚壱を慕っていた蘭太も躯倶留隊の隊員達も、甚壱らが家の財産を得る為に起こした下らない姦計のせいで命を落とす結果となってしまった。そういった意味でも甚壱は擁護しようがない戦犯の一人である。
