概要
1977年10月3日~1980年10月6日まで放送。現時点では最長放送記録を誇り、本作の存在が現在のアニメ版ルパン三世を形作った。
PART4制作・放映以前は、公式でも「新ルパン三世」とされ(選り抜き形式のVHS・βビデオソフトでは実際にそう商標がつけられていた)、「新ル」と略されることもあった。なお本シリーズ放映に合わせて原作も新たに『新ルパン三世』が連載されたため、紛らわしいが、昔からのファンにとっては「新ルパン三世」と言えば通常こちらを指す。
なお、本シリーズでは十三代目石川五エ門には通して「五右ェ門」表記である。
PART2に向けて
再放送によって放映当時よりも爆発的な人気を博したルパン三世PART1。それを受けてファンの要望に答える形で5年後より製作・放送開始。
放送にあたり、前作がやはり放映当時は失敗としかいいようのない成績を叩き出したことは見過ごされなかった。そこで読売テレビから交代した日本テレビ側から多く注文が出され、レギュラー声優の一部変更もこの中に入っている。
前作では回によっては登場しないキャラが居たが、本作では現在においてルパンファミリー+銭形として知られる5人を主軸とすることを打ち出しており、声優出演がなくとも必ず1シーン入ることとなった(ただし実際はごく僅かながら不二子や五エ門が一切登場しない回があるが)。本作の影響でルパンのレギュラーメンバーは完全に定着したと言っていい。
「前作の続編と思って作るな」という命令もあったが、本作の第1話は前作第1話と関係のあるエピソードであり、厳密にはPART1と一応世界観的には続いていることを匂わせている。
作風
こうした施策の多くは子供向けとしての意向が強く、作風も前作後半のコミカルな内容をさらに加速していった。ルパンは前作よりもヒロイックかつ義賊的になったが、ルパン役の山田康雄はこの変化を快く思わなかったようである。
しかしこれらはエピソードによりけりで、PART1を思わせるハードボイルドな回や、コメディ要素薄めのエピソードもある。実はモンキー・パンチ原作を基にしている回もある。
概ね子供向けということはそれだけ万人受けするマイルドな作品ということであり、快活に見ることが出来る活劇として非常に高い人気を得た。最高視聴率は第67話「ルパンの大西遊記」の30.5%。「ハードボイルドっぽさを持ったテレビ向けアニメ」という意味では、本作が金字塔と言ってもいいくらい。
キャスト
本作の開始にあたり、制作局から五エ門と不二子の声優を変えるよう厳命があり、二名だけ変更されている。理由は当時のインタビュー等においては「それぞれのキャラクターイメージが変わったため」と説明されている。変更理由についてキャスト達はよく知らなかったようで、五右エ門役の井上真樹夫は「行動のわからない危険な男から優男にイメージチェンジしたからだろう」と推察、くしくも当時のインタビューと同じ考察を行っている。
主題歌
本作ではアレンジ違いのルパン三世のテーマが4種類OPとして使用されている。
- オープニングテーマ1「ルパン三世のテーマ」
第1話-第26話まで使用された。ルパンを代表するテーマ曲の元祖。
当時のアニメとしては珍しい歌唱なしの楽曲であり、その後のルパンミュージックの基本を作り上げた。前作とは異なりレギュラーキャストはこのOPの時点でキャラクターとともに表示される。
- オープニングテーマ2「ルパン三世のテーマ(ヴォーカル・バージョン)」
第27話-第51話まで使用されたPART2唯一の歌唱ソング。歌唱担当はビートマジック・ジュニア(藤原喜久雄)既存のテーマに歌詞を付けつつ、男声に合わせるためトーンをやや下げたバージョン。歌詞は一般公募をしたもののまともなものが集まらず、結局プロがまとめたものが使用された。
- オープニングテーマ3「ルパン三世'79」
第52話-第103話までと複製人間で使用された、非常に有名なバージョン。後のPS2ゲーム版でも流用される程の人気楽曲である。放送のステレオ化に伴い2話程度ながら効果音版が存在する。
- オープニングテーマ4「ルパン三世'80」
第104話-第155話(最終回)まで使用された、最も落ち着いたアダルティなアレンジのバージョン。映像もこれまでのハードボイルド風のアクション重視のそれと比べると陰影を多用したアメコミ風味のものとなっている。
その他
シリーズ全体への影響
総話数はダントツの155話に登った。次点はPARTIIIの全50話、それ以外は1クールか2クール(全12話~24話)と考えると異例の長寿番組である。
これは前作とのブランクの間に人々の意識が時代によって変化したからと言える。
前作のアニメルパンは「大人向け」を目指したが、「アニメは子供が見るものという一般認識の壁は崩せなかった」……ということが失敗の原因の一つとなった。アニメとはせいぜい小学生で卒業するもの(「小学生ですら恥ずかしい」という声があったくらいである)であり、宣伝もまるっきりしなかったのも仇となっている。
しかし本作の前後で意識にやや変化が起きた、その中でも大きかったのは宇宙戦艦ヤマトのヒットで、このアニメブームが起きた流れで、大人にも(おおっぴらではないが)アニメを見るという選択肢や文化が自然と生まれた。
皮肉にも大人向けを狙って失敗したルパンは、子供向けを狙ったことで幅広い視聴層を得ることになったのである。
人気を受けて『ルパンVS複製人間』と『カリオストロの城』が劇場製作されている。今ではあまり意識されていないが、この二作はPART2放送中に公開された作品であるため、言わばPART2の劇場版である。
『ルパン三世のテーマ』が初めて使われたのも本シリーズで、このシリーズだけで4バージョンが誕生している。
先の通り本作品の成功はルパン三世のアニメに大きな影響を残しており、特にTVスペシャルの多くは本作のノリの影響下にある物と言っていい部分が多い。つまり良く言えば明朗快気で見やすい作品だが、裏を返せばあくまで子供向け・ファミリー向けの作品特有の毒気の薄さは否めない。
このため原作ルパン・大隅ルパン派からは本作を邪道とする声もある。しかし現在でもルパンが親しまれる作品となったのは、このシリーズの功績が非常に大きいことは間違いない。
モンキー面
実はルパンがモンキー面と呼ばれる様になったのは本作以降。もともと、PART1ではルパンは「容姿端麗」とされており、本シリーズでも当初はその流れを受けていた。しかしシリーズが第2クールに入る辺りから、目が小さくなり、頭が縦に長く円くなり、もみ上げが目立つ、現在のイメージの顔に変化していく。
この変化は、OPで見て取れる。
この頃になると、不二子には「お猿さん」とよく言われるようになり、挙げ句には銭形にまで「そのしゃくれたモンキー面が容姿端麗かよ!」(第44話)とまで言われてしまう。
ただし、終盤期に参加した、宮崎駿・高畑勲が当時所属していたテレコムアニメーション制作回は、頑としてこれを受け入れず、PART1に近い顔で描かれた。
ステレオ試験放送
1980年から、当時まだ試験放送中だった音声多重放送によるステレオ放送が実施された。音声多重放送の正式運用は本シリーズ終了後の1982年からなので、かなり冒険的なものだった。
当時は一般に「アニメ≒子供向け番組」というものが社会的な認識だったため、アニメでは他に例はなかった。加えて、業界内ではアニメは「安価なコンテンツ」と認識されていたため、コスト圧縮の必要もあった。これらの理由から1982年の郵政省令に伴う音声多重放送の正式運用後も、ルパン三世自身(PART3)も含めてアニメのステレオ放送は1980年代末期までほぼ皆無だった。
すべての制作回がステレオ制作されたわけではなく、OPが『ルパン三世'79』の時期のステレオ回は、OPに効果音が入っているため判別できる。
以前に存在したNTV系列17時30分からの再放送アニメ枠では、ステレオ音源は使われずモノラルトラックのみの送信であった(アナログ時代の音声多重放送は基本テレビチャンネルの割当周波数とは別の周波数で送出していた)。
これはモノラルトラックが16mmシネフィルムの光学音声トラックに記録されているのだが、ステレオ音源は別の、放送局用磁気VTRテープを使った専用の音源テープで記録されており、放送時はシネフィルムと音源テープを同期させる必要があり、必然的にマンパワーを要する為。
ビデオソフト化の際は、アナログ磁気テープ時代は、ステレオ回はVHS・βともHi-Fiステレオ収録で発売された。
しかし、磁気テープの音声マスターが劣化したのか(シネフィルムに比べて、1980年頃の磁気テープは耐久性が劣る)、もしくはマスターテープが喪失されてしまったのか、その後発売されたDVD・BDで発売されているデジタルリマスター版は、モノラル音声のみ収録となっている。……と、Wikipediaには書かれているのだが、実際には北米版ソフトにはステレオトラックで収録されており、どこから出てきたか解らないデマの可能性が高い(Wikipediaにはこうした事実誤認の記事が結構多い。他には三河島事故など)。
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