概要
世界初の滑腔砲を搭載した戦車であり、ソビエト初の第二世代MBTである。
元々ソビエト軍は50年代から新型戦車(後のT-64)を計画していたが、完成時期が延期することは目に見えていたため本車は開発された。敢えて新機軸を盛り込まず、T-55をベースに新型砲を搭載するという開発手法を取っており、性能こそT-64に劣るものの堅実な設計となっている。
現在は多くの国でT-72に主力の座を譲っているものの、まだまだ現役で活躍している国もある。ウクライナ侵攻で多くの戦車を失っているロシアもその内の一つで、退役したT-62を引っ張り出して近代化改修し投入している模様。
特徴
最大の特徴は115mm滑腔砲の搭載である。
それまでの主力であったT-54、T-55が搭載するD-10 100mmライフル砲は、西側諸国の戦車が使用する90mm砲(アメリカ)や20ポンド砲(イギリス)と対等に撃ち合える性能を有していたが、イギリス製のL7 105mmライフル砲が登場したことで劣勢に立たされることを危惧し、更なる火力向上が図られた。
火力こそ向上したものの、照準器の性能不足で1,500m以遠では命中率が極端に低下する、視認性を低くするためになるべく小型にするソ連戦車の特徴から、居住性のみならず砲弾の装填作業を阻害するなどデメリットも多かった。
派生型
T-62の車体に3M7ドラコーン対戦車ミサイルを搭載した対戦車ミサイル車。
T-62の車体にM-46 130mmカノン砲を搭載した駆逐戦車。
Tiran-6/チラン-6
中東戦争でイスラエルが鹵獲したT-62を自国仕様に改装した戦車。
天馬号/天馬虎
北朝鮮がT-62をライセンス生産した戦車。
暴風号/暴風虎
北朝鮮が天馬号を大幅改良したとする戦車。これのさらなる改良型が先軍号/先軍虎。
戦歴
ソビエト軍には採用されたものの、他のワルシャワ条約機構加盟国の軍には配備されずチェコスロバキアで1973年以降に生産が始まったが1,500輌に止まり、それはエジプトとシリアに売却された。
その車両が第四次中東戦争で運用されたが、ゴラン高原での戦闘では乗員の訓練不足と主砲の傾斜角度の少なさから、イスラエルのショット・カルやマガフにコテンパンにされるという結果に終わった。その内の一台がイスラエルに鹵獲され、アメリカに渡って解析されたという。