概要
その名は主要成分であるリンを意味するphosphorusと、ギリシャ語ので葉を意味するphullonに由来し、後者は強い劈開性(一定の方向に割れやすい性質)を表している。和名は直訳の燐葉石。モース硬度は3.5。黄銅鉱やトリフィライトなど、他の鉱物と結びついた形で採掘されることが多い。
青みを帯びた緑色が美しいが、通常はインクルージョンを多く含むため透明性が低い。また大きな結晶は稀にしか産出せず、低い硬度と劈開性がネックとなって加工が難しいこともあり、大半は原石のまま保持される。
主産地であったボリビアの鉱床からは、色味の濃い美しい結晶が多く採れたが、1950年代で産出が止まってしまった。現在市場に出回っているもののうち、高品質のものはほぼ還流品(所有者が売却した品)である。
宝石の条件には美しさや希少性の他、資産としての不朽性が含まれるが、フォスフォフィライトはその脆さゆえ、1ランク下の貴石として分類される。
その性質上、耐久性が要求されるジュエリーには不向きであり、ルース(裸石)としてのカットはもっぱらコレクター用に行われる。
2017年に開催されたTASAKIとアニメ宝石の国とのコラボイベントでは、キャラクターとして登場する宝石・貴石を使用したジュエリーが制作、販売された。
その中でも主人公のフォスフォフィライトは上記の理由から324万円ととびきり高額であったが、この機を逃さなかったコレクターにより即日売約済みとなったことでも話題となった。
『宝石の国』の登場人物としてのフォスフォフィライト
硬度 | 三半 |
---|---|
靭性 | 最下級 |
担当 | 博物誌編纂係 |
愛称 | フォス |
一人称 | 僕 |
モデルとなった鉱石 | 燐葉石(りんようせき) |
声優 | 黒沢ともよ |
主人公。
素直な性格であり、思ったことはためらわず口にする。
事あるごとに戦闘に出たがるが、硬度が低いゆえに割れやすく一際脆い身体であり、さらに月人好みの薄荷色とあって戦闘には向いていない。
口と度胸だけは一人前であるが、何をさせても不器用で自ら役立たずと言うこともある。なかなか仕事が決まらずにいたが、第一話にて博物誌を編むという仕事を与えられる。
博物誌作成の任を受け博識なシンシャに手伝いを求めた際、シンシャの心中を知り有意義な仕事を見つけてあげたいと思うようになる。
宝石たちの中では最年少であり末っ子と称されることも。第十話の時点で三百歳になった。
特性
宝石たちの中でも硬度が低く、戦闘に向いていないフォスだが、それと引き換えにある特殊な性質を持っていた。
それは、他の鉱物との親和性が高く失った部位を別の物質で補填しやすいという特性である。
この特性が故に、幸が不幸かフォスは欠損した部位を補填する事で、以前には無かった能力を手に入れる事ができるようになる。
その一方で、宝石そのものの特性として、自分の一部を失うと記憶を失うと言う特性が存在しており、フォスが別の物質で自身の身体を補填すると言う事は、今までの自分の記憶も失うと言うリスクも抱えている。
この性質上『フォスフォフィライト』と呼ばれるキャラクターは物語が進むにつれて様々な意味で変化していくため、画像検索するときはネタバレ注意。
その変化については関連タグ以降で解説。
関連イラスト
関連動画
関連タグ
アメシスト ボルツ ゴースト・クォーツ カンゴーム ラピス・ラズリ
ロードオブヴァーミリオンⅣ:コラボカードとして参戦する。
フォスの変容(ネタバレ注意)
- 原作2巻・アニメ5話~
両脚を失い、アドミラビリス族から提供されたアゲートと貝殻を合わせた新たな足を得て俊足となった。
最初は速すぎて制御がきかなかったが、それは何とか解決したらしい。
- 原作3巻・アニメ9話~
冬の間、アンタークと冬の仕事をすることになるが、その最中に両腕を失い、間に合わせとして金と白金の合金を代わりに付けたところ、柔軟性から自由自在に伸縮・変形させることが可能な腕を得る。
合金は体内にも入り込んでいるため体格も大きくなったが、重い合金を取り入れたため先述した俊敏さは無くなり、合金と擦れて元の身体が少しずつ擦り減るようになってしまう。
アンタークとの離別後は彼を意識して自ら髪を短くしており、切った髪は合金を操ることによって磨り減っていく体の補填にも用いている。
外見が派手になったことで、足には再度白粉を塗るようになった。
これ以降天真爛漫な性格や表情は鳴りを潜め、精神的にも不安定さが目立ち始める。
※以下未アニメ化範囲
- 原作7巻~
カンゴームを庇うため頭部を月人に奪われた結果、昏睡状態になってしまう。
ラピス・ラズリの頭を、新たな頭部としてフォスに繋げられた。
ラピスの頭を持ったことで、物事を細かく分析できるようになる。
フォスフォフィライトとしての自我を保っているものの、ラピスに似た言動や思考をするようにもなった(実際、カンゴームはフォスの髪を触る仕草からラピスの面影を感じている)。
髪型は長髪、ポニーテールから最終的に短髪に落ち着く。
- 原作8巻~
左目に人工真珠が埋め込まれる。
その左目は暗いところでは光るらしく、イエローはエグイと言っていた。
月で作られた剣と服を身にまとう。
- 原作10巻
単身で地上へ降りた際に地上の宝石達によって粉々に砕かれ、シンシャの提案によりバラバラの場所へ隠される。
220年後、金剛によって復元される。
- 原作11巻~
度重なる体の破損を合成宝石で補った。
この際、エクメアの命令により生き埋めにされていた200年の記憶を重点的に修復される。
前の段階ではギリギリで持ちこたえていた精神もついに発狂状態にあり、外見も鋭い突起で構成された異形と化す。
頭は大きく破損し、背中や首などから棘や光背の形をした合金が漏れている。
- 原作12巻~
地上に残った宝石たちとの最終決戦の末、シンシャによって精製された大量の水銀を取り込み、更なる変異を遂げる。
その姿は、怪物然とした以前の姿よりもかつて人間と呼ばれた古代生物に近くなっていた。
そして、金剛の右目を取り込んだ事で金剛の記憶を引き継ぐことになり、そのインストールが完了するまでの一万年間を地上で一人孤独に過ごすことになる。
- 原作12巻・97話~
一万年後、金剛の記憶の引き継ぎが完了した姿。
金剛の記憶に出てきたアユム博士から「渡ったら橋は燃やして」の言葉と共に姿を現した。
もはや宝石を連想させる固さや輝きといった要素は消え去り、白い彫刻を思わせる姿となっている。
ドレスを身に纏ったような姿に後光のような輪がついている。顔には感情の変化により、不思議な模様ができる。
余談
テセウスの船
特性の項目でも少し触れたが、フォスは自身の姿が変異していく度に、少しずつ以前の記憶を失っている。
特に頭部は宝石の中でも記憶が大量に蓄積された部位であり、これを失う事は、宝石の中からかなり多くの記憶が失われることを意味する事が作中で明言されている。
その為、頭部を失って以降のフォスは頭部に残されていたラピス・ラズリの記憶と意識に人格が大きく影響され、思考や性格面で大きな変化を遂げる事になった。
また本誌版の93話では、彼は手足を失う前の自分の顔を幻視しながら、それを自分であると認識できないほどに記憶が欠落していた。単行本版ではこの部分が変更され、手からすり抜けた綿毛を踏みつけ「何か 思い出せそうだったのに」と呟くという、綿毛が頭についていた1話の頃の自分を曖昧にすら思い出せない、孤独と記憶の混濁が強められた描写になっている。
それらの事実から、読者からはこの状態のフォスをフォスと言って良いのか?という声が相次いで聞かれる。
また、この一連の流れがかの有名な説話であるテセウスの船に類似している事から、度々フォスの身の上に例えられている。
仏教の七宝
フォスが失った部位は何らかの形で必ず補填されるが、それらの物質は仏教において特に高貴とされる七つの宝・七宝で構成されると言われる。七宝に数えられる宝は二種類あるとされ、その内訳は以下の通りである。
無量寿経 | 金 | 銀 | 瑠璃 | 玻璃 | 瑪瑙 | 硨磲(シャコ) | 珊瑚 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
法華経 | 金 | 銀 | 瑠璃 | 瑪瑙 | 硨磲 | 真珠 | 玫瑰 |
この内、玻璃はガラスのこととされ、玫瑰は詳細は不明ながらも赤い宝石のこととされる。作中でのフォスの変遷は、恐らくはこの両方の経典を参考にしたと思われる。
推測される詳細はこちら。
- 玻璃:壊れやすいフォスフォフィライト自身
- 瑠璃:ラピス・ラズリの頭部
- 金、銀:合金(金と白金)の両腕
- 硨磲、瑪瑙:アドミラビリス族の貝殻とアゲートの両脚
- 真珠:月で造られた合成真珠
- 玫瑰:シンシャから受けた大量の水銀
詳細は不明だが、仏教の七宝を揃える事で、宝石が人間になっていく様子を表しているのかもしれない。