前後のストーリー
概要
『仮面ライダークウガ』第49話(最終話)のサブタイトル。2001年1月21日放送。
あらすじ
グロンギの王にして、未確認生命体による一連の惨劇の元凶、ン・ダグバ・ゼバとの壮絶な死闘から、3ヶ月が過ぎていた。
警視庁にて、一条がクウガ、もとい未確認生命体第4号とグロンギの戦いの資料写真を眺める。
杉田「長い戦いだったな……」
桜井「第0号を含めて、48体ですもんね」
数々の過酷な戦いを回想する一同。それと同時に、彼等は最後まで己の意志を貫き通し、戦い抜いた五代の偉大さを、改めて痛感していた。
そこへ、松倉本部長が現れる。
松倉「確かに、彼ほどの男はそうはいないだろう。だが……君たちも本当に良く頑張ってくれた! それは誇りにしていいと、私は思っている」
松倉本部長がサムズアップを決める。
一条たちが思わず吹き出しつつ、サムズアップを返す。
松倉「それにしても……彼は今頃……どこで、何をしているんだろうなぁ……。」
窓の外を見上げる一同。
一面の青空が広がっている。
ポレポレ。
クウガのマークの入ったエプロンをつけたおやっさん。
店に奈々が入ってくる。
そこには、実加から送られてきた手紙があった。それによると、実加は希望の高校に進学し、フルートを続けているという。
送られてきた手紙の中には、制服姿の実加が笑顔でサムズアップを決めている写真が入っていた。
そして奈々も、見事オーディションに合格しており、芝居の台本をおやっさんに差し出す。
奈々「受ける時、前に五代さんが言うてたこと思い出してん。『奈々ちゃんの笑顔で、たっくさんの人が笑顔になるって思ったら、やったるでぇって気になるんじゃない』って」
公園。
ひかりの1人息子の冴が、サッカーで遊んでいる。
未確認生命体関連の捜査を終え、長野へ帰る一条は、これまで未確認生命体との戦いを支えてくれた人々に挨拶をしに向かっていた。
未確認生命体にまつわる事件が終息したのもあり、最近は冴との関係も良くなり、明日は遊園地に遊びに行くとのこと。
ひかり「五代くん、何であんなにすぐ冒険に行っちゃったんだろ。……何か、未確認とは関係なく、普通の時の2人のコンビ見てみたかったな……」
ポレポレ。
カウンターに掛けたジャンとおやっさん、奈々が雑談している。
そこへ、五代の恩師、[[神崎先生が訪れる。
以前五代が出した『五代雄介ブレンド』が飲みたくなったようで、五代によると、『タマサブロウさん』という人が作ったオリジナルブレンドが元になったらしい。それに興味を持ったジャン。そこに、おやっさんが……。
おやっさん「飲みたいんなら……できるよ?」
ジャン「え? もしかしてその……タマサブロウさんっていう人、ここへ呼べるんですか?」
おやっさん「そうね。呼びますか?」
ジャン「うん!」
神崎「はい!」
おやっさん「おぉい、タマサブロウさん!」
そして降りてきたのは……………
おやっさん自身だった。そう、『タマサブロウさん』こそ、おやっさんの本名だったのだ。
おやっさん「飾玉三郎です……」
関東医大病院。
椿と一条が、雄介の体を写したレントゲン写真を見つめる。
クウガの秘石「アマダム」の力で、雄介の体内組織は強化され、変貌している。
椿「あいつ……凄すぎるよな……恐らく、『凄まじき戦士』になったあいつの体は……これ以上に変わってたはずだ……それでも、みんなの笑顔のために……戦ってくれた………。」
レントゲン写真を見ながら、五代がこれまでみんなの笑顔の為に耐えてきた苦しみの数々を思い返す二人。
沈黙の後、椿がカーテンを開け、窓を開ける。
まばゆい日の光とそよ風が差しこむ。
椿「まぁただ、世の中救いがなくなったわけじゃないかもな」
椿が懐から封筒を出し、一条に渡す。封筒の中には、蝶野からの手紙が入っていた。それを読み始める一条。そこに、椿が手紙に入っていたというナイフを見せる。
椿「……きっぱり別れたってことだろ? 他人のことなんてどうでもいいと思っていた自分とな。確かに……他人のことなんて考えない方が楽かもしれない。だが、そんな奴らがいたから五代はああなった」
「なぁ。五代は今……笑顔でいると思うか?」
ポレポレ。
一人旅に出かけた五代を思う一同。
おやっさん「あいつ……青空が好きでね。よく言ってました……『青空を見てると、みんなが笑顔になれるような気がする』って……」
ジャン「……なんか、わかる気がします」
神崎「確かに……広く澄んだ青空を見ると、小さな悩みなんか忘れてしまいますよね……」
おやっさん「あいつの親父さん……世界中回って、戦争の写真、撮ってたでしょ? だから、人が笑顔を忘れてしまった時、どれほど多くの悲しみを生むかって知ってたんでしょうねぇ……雄介は、みのりの手紙に『いつかみんなが笑顔になれる日のために』って、いつもそう書いてたそうで……そういうのって忘れないんですよね、不思議と」
ジャン「だから五代さん、『みんな笑顔になるように』って、2000の技を身につけようとしたんですね」
神崎「五代の一番最初の技……ご存知ですよね?」
おやっさんが大きく頷く。
キョトンとする奈々とジャンが、答えに気づく。
奈々・ジャン「笑顔!!」
豊島区内 わかば保育園。
一条が、五代の妹、みのりを訪ねてきていた。
みのり「一条さん……兄が、本当にお世話になりました!」
一条「五代君には、辛い思いばかりさせてしまって……」
みのり「そんなことないですよ!」
一条「え?」
みのり「兄は……信じてやったんですから。いつか……みんなが笑顔になる日が来るって。でも……今度は暫く帰って来ない気がします」
1人の園児が駆け寄ってくる。
園児「ねぇ先生、4号どこ行っちゃったのぉ?」
ここの園児達、いや、殆どの人は知らない。今まで未確認生命体と戦っていた4号の正体が、人々の笑顔を愛する心優しい青年だということを。
園児「やっぱり、いい奴だったんだよね?」
みのり「そうだね……でもね、4号は本当はいちゃいけないって、先生は思ってるの」
園児「どうしてぇ? 0号を倒してくれたのに」
みのり「ん……でも、4号なんていなくてもいい世の中が、一番いいと思うんだ」
産休だった恵子先生が、赤ん坊を抱いて現れる。
たちまち子供たちが駆け寄る。そのうちの1人が、手作りのおまもりを赤ん坊に差し出す。
おまもりには、サムズアップのイラストが。
ポレポレ。
奈々が窓の外を見つめている。
おやっさん「どした……?」
奈々「青空……!」
おやっさん、神崎、ジャンも窓の外の空を見上げる。
奈々「五代さんも見てはるかな……」
城南大学 考古学研究室。
桜子が、古代文字の解読結果を一条に読んで聞かせている。それによると、ゴウラムには、五代が『凄まじき戦士』に変身すると、砂と化して消滅するというシステムがあったという。しかし、ゴウラムは砂になることはなく、残っていた。
そう。凄まじき戦士に変身した後も、五代は自分の中にある優しさを失うことはなかったのだ。また、42号を倒した時に五代が見た『凄まじき戦士』の幻影は、全身が黒かったというのだが、五代が変身した時には姿は変わってもいつもと同じ目をしていたことから、桜子は、五代は憎しみの代わりに自分の優しさを力にして『凄まじき戦士』に変身したと推測する。
桜子「伝説を塗り替えちゃったんですね!憎しみの力に任せるのは簡単だったはずだけど……五代君は優しさで……心の力で最後の最後まで頑張って……頑張れば、願いは叶えられるんですね」
一条が頷く。
2人が窓の外の青空を見つめる。
桜子「今度は私たちが頑張らなきゃ……多分、すごく大変なことだと思うけど……心の力で……五代君、絶対、笑顔を取り戻して帰ってきますよね!」
一条「五代は信じていますからね……世界中のみんなの笑顔を」
そして、どこか、遠い国の、ある砂浜。
海岸の砂浜に寝転がっている青年。海辺で、外国人の子供たち数人が言い争っている。青年がそれに気づき、慌てて鞄を広い、子供たちのほうへ駆け出す。
ジャグリングをして、子供達の争いを止める青年。さっきまで争っていた子供達に、笑顔が戻ってくる。
そして、その青年こそ──。
他でもない、五代雄介だった。
すっかり笑顔を取り戻した子供達にサムズアップを向け、手を振って別れる五代。
そして彼は、再び歩み始める。
世界中の人々、みんなの笑顔のために。
そして……自分自身の笑顔のために──。
君を連れていこう 悲しみのない未来まで
君がくれた笑顔だけ ポケットにしまって
僕は
青空になる
みんなの笑顔に👍️!
余談
最終回にて、悪の親玉との最終決戦を描かず、その後日談を全編通して描写し、しかも殆ど主人公を登場させないというのは、歴代仮面ライダーシリーズでは異例の事態であった。
また、エピローグでの砂浜のシーンにおいては、なんとキューバでの海外ロケという異例の試みが執り行われ、
そうした点からも、『仮面ライダークウガ』は、まさに特撮番組の常識を塗り替え、日本の特撮、ひいてはTVドラマ史に新たな1ページを刻んだ一作と言えるだろう。
ちなみにこの回はエピローグのため、スポンサーに頼み込みCMを無くしたという経緯があるが、各社の担当にも番組の熱心なファンが多かったためにあっさりと許されたとのこと。
関連タグ
雄介→AGITΩ