「カディル・サキナム・ター(I'm coming, sir.)」
”来たれ、甲虫をかたどりし馬の鎧となるしもべよ”(体表部の古代文字より)
CV:オダギリジョー(ノンクレジット)
概要
物語中盤より登場する、クウガ専用のマシン。作中では後述の役割に由来する「馬の鎧」の名で呼ばれることもあった他、資料や商品展開によっては「バトルゴウラム」の名称が使用されたり、「装甲機」の二つ名が付される場合もある。
超古代の平和民族・リントがその科学技術の粋を集め、戦士クウガのしもべとして作り上げたもので、その姿形はリントから「神の使い」と看做されていた甲虫――より具体的にはクワガタムシを象っており、黒いボディに金の装飾や赤い目、そして巨大な一対の角(顎)が特徴である。
主な機能
その心臓部には、クウガと同様に霊石アマダムが内蔵されており、これがエネルギー源として機能すると同時に、金属成分を取り込み自らの体組織とする働きを持つ。また、背中の翅状の部位を広げての飛行能力や、簡易的な人工知能(現代でいうAI)による自我も備えており、クウガの意思に応じて飛来しこれをサポートする。
飛行時の速度は最高で500km/hにまで達し、さらに折り曲げた状態の前肢にクウガを掴まらせることで、空からの攻撃をも可能とする。もっとも90kgを超えるクウガを持ち上げねばならない都合上、この状態での飛行速度は250km/hにまで低下してしまい、五代自身も「俺を吊り下げるとスピードが落ちるみたいで」との台詞を残している。
そしてゴウラムの持つ最大の役割として、クウガが使用する乗り物へと合体し、その能力を強化するというものが挙げられる。
超古代の戦いにおいては馬と一体化しており、このことから碑文にも「馬の鎧」と記されていたゴウラムであるが、現代においては馬の代わりに、専用バイク(トライチェイサー2000・ビートチェイサー2000)に合体することで、その防御力・突進の威力を向上させたり、走行スピードをアップさせる。
あごの力も強く、グロンギでも一度つかまると簡単には抜け出せないため、クウガがライジングフォームへの変身能力を発現させてからは、主に撃破時に生じる大爆発による被害が少ない場所への移動に多用された。この他にも作中で披露される機会はなかったものの、地中を掘り進んで潜行していく機能や、水中潜航能力などもバイクに付加できるとされる。
一方で、合体時に繰り出す必殺技は体組織を構成する金属成分までもエネルギーに転換・放出してしまうため、使用後は出土時の状態でもあった複数の破片に戻り、バイクの表面から剥がれ落ちてしまう。当然、金属成分を再度補給するまではその活動も停止してしまうが、五代がアマダムに触れることでエネルギーがチャージされ、組織全体が活性化するようになっている。
また、バイクへの合体時にはゴウラム側からの働きにより、融合合体に適した形にバイクの構造までも変化させてしまうため、それに起因してバイクの側に深刻な金属疲労を生じさせることとなる。これは物語後半でのバイクの交代劇にも繋がっており、同時にトライチェイサー2000の後継機として投入されたビートチェイサー2000に、このゴウラムの特性に対応した様々な機能が追加される要因ともなった。
ゴウラムは以上の説明からも分かる通り強力な兵器でもあるため、クウガの「聖なる泉」が枯れ果て凄まじき戦士に変貌した場合、これを感知して自らの力を悪用されないよう自動的に砂となって崩れ去るようになっている。
物語終盤、ライジングビートゴウラムの使用後に体色がくすんだものへと変化したのも、この一種の「安全装置」に関連したものではないかと考えられている。
古代リント語
ゴウラムは、グロンギ語とは異なる独自の言語(古代リント族の言葉(※1))を喋ることもあり、その台詞は五代役のオダギリジョーがアフレコしたものを、音声加工して使用している。
- 「キー・ムー(See you.)」(EPISODE15)
- 「シェンク・ゾー・ター(Let's go, sir.)」(EPISODE15)
- 「カディル・サキナム・ター(I'm coming, sir.)」(EPISODE22、33)
- 「カー・ムー・ソーサディ・ター(Are you all right, sir?)」(EPISODE24)
(※1 以上に引用した台詞からも分かる通り、かな表記した英語を変換したものである)
作中での動向
超古代での戦いの後、土中に眠っていたゴウラムは長い年月を経てバラバラの金属片の状態(※2)となっていたが、物語中盤にて九郎ヶ岳北遺跡からその破片がジャンの参加していた発掘隊によって出土し、さらにこれとほぼ時同じくして五代の脳内にも、ゴウラムと思しき飛行体のヴィジョンが浮かぶなど、復活への予兆が現れ始めることとなる。
この破片は程なくして、ひとりでに結集し複数の塊となったため、合同捜査本部での詳細な調査を要するものとして東京へと輸送される運びとなったが、その途上で破片が収められていたアタッシュケースや、トラックのコンテナといった金属を自ら吸収、そのまま何処ともなく飛び去っていくという挙動を見せた。
破片から転じた飛行体は、飛び去っていった諏訪SAから甲府、そして東京へと移動を続け、その過程で乗用車や給水塔、クレーンなどの様々な大型金属を吸収しつつ自己再生を果たし、最終的にギャリドを追跡中であったクウガと幕張付近にて合流、後述する「馬の鎧」としての能力を発揮してみせたのであった。
これ以降、ゴウラムは科警研にて管理・分析を受けつつ、クウガの意思に応じてその戦いをサポートすることとなり、分析によって得られたデータは後にクウガの新たな専用マシン・ビートチェイサー2000の開発にも役立てられることとなった。
最後の登場となったのは、前述した謎の体色変化が発生し、活動が不活発となったことに言及された際のことであるが、未確認関連の事件が終息を見た後も、依然としてゴウラムは健在であることが作中でも言及されており、このことは五代がダグバとの決戦でアルティメットフォームに変身した際にも、理性や優しさを失わずにいたことの何よりの証左ともなった。
(※2 これに先んじてEPISODE7の時点で、その一つが夏目教授の遺品という形で登場している)
派生作品への登場
同作ではゴウラムそのものではなく、これをモチーフとした「クウガゴウラム」が登場している。ディケイドのファイナルフォームライドにより、クウガ自身がゴウラムに変形した形態であり、同作の劇場版ではその進化形である「アルティメットゴウラム」も披露された。
同作の第40話にて、グランドジオウの繰り出す必殺技「オールトゥエンティタイムブレーク 」発動時に、ペガサスフォームを吊り下げた状態で呼び出された。
TVシリーズから13年後の出来事を描いた同作では、主であるクウガこと五代が行方をくらませたため、出番の来ることのないまま研究室でじっとしている・・・のだが、どうやら人目が無くなるとゴソゴソ動くらしく、時折勝手にポーズや位置が変わったりしていることにも言及されている。
物語終盤では五代がクウガとして帰還したのを受け、かつてのように彼の元に駆け付けており、ビートゴウラムへの合体も行っている。
同作では何故か雑魚敵として登場。攻撃力と守備力が高く、2~3体同時に登場することが多く、多くのプレイヤーを苦しめた。
備考
「巨大でメカニカルなクワガタムシ」という説明だけを聞けば厳つい印象を受けるゴウラムであるが、一方で前述した古代リント語による独特の喋り、休眠状態に入っている際の目蓋を閉じて寝ている様、そして何より主の元へと甲斐甲斐しく駆けつけるところなどから、ファンの一部からは「かわいい」との声も根強く残されていたりする。
放送当時発売された玩具では、通常のバージョンのゴウラム(「ポピニカ DXトライゴウラム」に付属)の他にも、「エンシェントバージョン」と呼ばれる別カラーリング仕様のものが商品化(「ポピニカ DXビートゴウラム」に付属)されている。
黒から灰色へと置き換わったボディを始め、その他の部分も全体的に彩度を落としたカラーリングとされ、「エンシェント(古代)」の名の通り、ホビー雑誌の記事では「破片となって発見された際のカラーリングを再現したもの」と紹介されている。これがTVシリーズにおいても、前述した謎の体色変化が発生した際の姿として登場したことは、既に説明した通りである。
関連タグ
魔像ブロン:『仮面ライダーキバ』の登場キャラクターの一つ。ライダーマシンと合体してその性能を強化させる、という点でゴウラムとの共通項を備えている一方、ゴウラムとは異なり自らの意思で動くことが出来ないという相違点も有している
ゴーラム:『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』に登場する敵怪人の一体。言うまでもなく名称が非常に近似した存在であるが、こちらは複数体が存在する敵側の巨大戦力という扱いである