概要
2013年に講談社キャラクター文庫から発売された『小説仮面ライダーシリーズ』の1冊。作者はTV本編のメインライターも務めた荒川稔久。
特撮番組『仮面ライダークウガ』の正当続編であり、TV本編の13年後を描いている。ちなみに当初はクウガの続編とされていた仮面ライダーアギトは登場せず、繋がりも一切示唆されていない。
この為、現在ではTV本編のクウガとアギトは完全に別作品として扱われている事が改めて描かれたと言える(そもそもアギトがクウガの続編とされていたのはあくまで初期の設定であり、アギト本編の方も序盤以降はクウガを匂わせる要素は一切無くなっている)。
全体的にTV本編を見事に再現した緊迫感に満ちたグロンギ追跡劇と、自由闊達としたTV本編でお馴染みの既存の「クウガ」キャラ達の13年後の姿が見どころであり、当時のTV本編のクウガの作風や空気感を見事に再現した内容は、ファンからも正当続編として非常に評価が高い。
時事ネタなどが多いのも特徴であり、東日本大震災や原発事故など現実世界と同じ事件が起きていた事が言及されるなど、「TV本編の13年後の世界」である事が殊更に強調されている。
登場人物
TV本編からの登場人物
一条薫:本作の主人公。今年で37歳になるが、本人の希望もあって未だに警視庁の第一線で活躍する敏腕刑事。だが機械には弱い。
おやっさんに「コートのハンサムさん」と称された容貌も健在であるが、未だ女性の影が見えない為に、周囲からあらぬ噂を立てられる事も。実加にも少なからず好意を寄せられている。
卓越した推理力と真っ直ぐな正義感、そして相変わらずの不死身っぷりで新たなゲゲルの真相を追っていくが、その渦中にちらつく「白い二号」の存在に、再び五代を戦いに巻き込んでしまったのかと葛藤する。
実は13年前の最終決戦後、周囲にとある嘘をついていた事が判明した。
夏目実加:TV本編にも複数回登場した、かつてン・ダグバ・ゼバに殺害された夏目教授の遺児。本作の事実上のヒロインに相当する。
現在27歳で、一条の部下(厳密には杉田の部下だが)として配属された女性刑事。童顔で15、6歳くらいに見える外見との事で、本人曰く中学生の頃から2cmしか身長が伸びていないらしい。
明るく頭脳明晰で、スマートフォンなどを巧みに使いこなし一条を驚嘆させるが、父親の一件もありグロンギには凄まじい敵意を向ける。
実は、彼女には物語の核心に迫るある秘密が隠されている。
杉田守道:未確認生命体対策本部で一条の同僚であった刑事で、現在は捜査一課特殊犯捜査第四係の係長。
ハゲが進行している為に、潔くスキンヘッドにした。また健康診断で引っかかったらしく、「酒は焼酎にしろ」と娘の葉月に苦言を呈されたらしい。
未確認生命体が関わっているとされる事件を追っており、一条と実加を招聘して臨時のグロンギ対策チームを結成する。またかつての仲間たちにも応援を頼むなど、縁の下で事件解決に尽力する。
榎田ひかり:科警研の女性科学者で、13年後もその明るさと天才的な才能は健在。
当時小学生だった息子の冴は現在大学生になっており、「鉄ちゃんでアニオタでミリオタ」との事。
本編同様に、新たに出現したグロンギに対して毒物の分析や有効な新型神経断裂弾の開発などを行う。
沢渡桜子:かつて超古代文明の碑文を解読し、五代達の戦いを支え続けた才女。
13年前から未だ継続中である超古代文明の研究の傍ら、母校である城南大学の准教授として教鞭を執っている。雄介の帰りを今なお誰よりも強く待ち続けている人物の一人で、大学のセキュリティが厳しくなったらしく、「もう窓から入ってこないように」五代に伝えて欲しいと一条に言付けた。
九朗ヶ岳の棺とは異なる「闇の棺」の存在を示唆する碑文の発見、さらには大学に保管されているゴウラムの異変などから、新たなグロンギの復活を危惧する。
椿秀一:関東医大病院に勤務する司法解剖専門医。一条の友人で年齢は39歳。
本作でも医学の知見で一条達の捜査に協力するが、ある事情からTV本編の時のような遺体の解剖調査は思うように行えなかった。また、本作では一条との出会いについても掘り下げられている。
13年経っても桜子への想いは変わらず、アプローチをしているが中々進展は無い模様。
おやっさん(飾玉三郎):「まもなく還暦を迎える」らしいが、変わらず喫茶「ポレポレ」のマスターをしている。カレーとコーヒーの美味さはまだ上がるようだ。
古すぎるオヤジギャグや趣味のスクラップ帳も健在で、本作ではポレポレの前身が明治二十二年創業の「飾食堂」である事が明かされた。また、伽部凛の熱烈なファン。
四方みのり(五代みのり):五代雄介の妹で、二年前に「元プロレスラーの整体師」なる人物と結婚し姓が変わった。名字の読みは「しかた」。
二ヶ月前に第一子の「雄之介」が誕生しており、現在は子連れでポレポレの手伝いをしている。
ラ・バルバ・デ:ご存じバラのタトゥの女(=未確認生命体B-1号)。
かつて一条に狙撃されて海に没したが、大方のファンの予想通り生き延びており、13年の時を経て更にその妖しさを増している。そして本作でも怪人態は見せてくれなかった。
本作では「闇の棺」に封印されていたグロンギを解き放った張本人であり、一条と実加に「最後のプレイヤー」について「黒の金のクウガでも勝てるかどうかだ」と警告した。
五代雄介:ご存じ2000の技を持ち夢を追う男。そしてお馴染みの仮面ライダークウガ。
13年前の最終決戦の決着後に姿を消してから未だ行方不明のまま。しかし劇中で出現する「白い二号」の存在から、一条からは帰ってきているのではと考えられている。
劇中では、TV版最終回「雄介」のEDで見せたどこか遠い国の海岸での光景が一条の夢の中の出来事である可能性が示唆されている。ちなみに夢の中の五代は、髭を生やしたワイルドなスタイルになっており、現実におけるオダギリジョーのビジュアルを意識した形となっている。
本作からの登場人物
自社のバルブが使われたカプセルの使用者が次々と死亡した事故で容疑者となっていた矢先、何者かによって惨殺されるが…。
伽部凛:作中世界の日本で人気急騰中の新進気鋭のアイドル歌手。
老若男女から愛され国民的な人気を誇る。おやっさんもファンの一人。
名字と名を入れ替えると、とある言葉が浮かび上がる。
郷原忠幸:国土交通省副大臣。一条とは元々面識がある。
その甘いマスクと大鉈を振るう豪快な政治方針で、36歳の若さで副大臣となった人物。
未確認生命体に対する特措法を改正し、本作での未確認事件の捜査を難しくした張本人である。
超古代の戦士:クウガの称号を与えられたもう一人の超古代のリントの戦士。
TV本編の古代の戦士よりも先にクウガとなった人物であり、日本の歴史上における最初の「戦士」である。かつてプロトタイプのアークルを使ってクウガ・プロトタイプに変身し、「闇の棺」に数体のグロンギを封印した後、とある理由から自ら命を絶った。
その後、彼の遺体は「闇の棺」に葬られ祀られていたのだが、作中で「闇の棺」と彼の遺体が発見された際には、何故か彼と共に葬られていた筈のアークルが無くなっており...。
用語
闇の棺
九郎ヶ岳遺跡(「光の棺」)と対になる、より小規模な遺跡。
夏目教授は生前この存在を予見して論文に記していたが、その論文が未発表のままであった為に長らくその存在は知られていなかった(ある人物が意図的に論文と遺跡を隠していた)。
超古代のリントは、その存在について「闇の棺も大いなる光の棺と等しく守らねばならない。闇の棺を忘れてはならない」と、闇の棺の危険性について記している。
クウガ・プロトタイプ
超古代の戦士が変身していたプロトタイプのクウガ。
本作「仮面ライダークウガ」における事実上の2号ライダーにあたるのだが、プロトタイプなので製造順的にはこちらが1号ライダーになる。外見は本編のクウガとほぼ同じだが、グローイングフォーム以外のフォームでも本編のクウガの同じフォームに比べて角が小さいのが特徴。
本編のクウガ同様アークルで変身するのだが、実はこのプロトタイプのアークルにはある重大な欠点が存在している。しかし、その事を知らずにアークルはある人物に持ち出されていた。
リオネル
成徳薬品から数種類が販売されている栄養ドリンク。
飲めば立ち所に身体に活力が沸いて笑顔になるなど即効性が強く、子供でも飲める為に空前のヒット商品となった。政治家である郷原も飲んでいるなどかなり大々的に広まっているらしい。
シークレット・シグナル
伽部凛のデビューシングル。
デビュー前に事務所が試験的に発売したインディーズ版と、それが予想以上にヒットした為に改めて大手レーベルから発売されたメジャー版が存在し、それぞれ歌詞やアレンジが異なる。
余談
劇中の発言や地の文などでペガッサ星人やゴジラが登場している為、クウガ世界では『ウルトラセブン』や『ゴジラ』など特撮番組や特撮映画が放送されている模様(TV本編では「マシュランボー」が放送されていた事が確認できる)。
ちなみに作者の荒川氏は、帰ってきたウルトラマンの大ファンとしても知られている。
さらに阿部定事件、東日本大震災、原発事故なども過去に発生した事になっており、赤いトラクターで有名な小林旭などの芸能人までも存在している。
2018年にひらかたパークで行われた仮面ライダービルドのヒーローショーにクウガが客演し、スマッシュのみを殺すゲゲルを行う怪人が登場している。
その最中にバルバが「ゲラグもライオも殺された」という台詞がある事から、バルバが生存している事が(半公式だが)確認できる。まあ倒された描写もないので生存自体は当たり前だが。