このこまとは、『ななどなどなど』に登場する宮前このみと玉村小町のカップリング。
初めて作中で二人の絡みが見られたのは、2巻のバレーボール回。これは宮前このみの初登場回でもある。
宮前このみ自らが打ったサーブが小町の顔面にヒットし、心配して声をかけたかと思いきや「……人にマウントとって喜んでるのは相変わらずなんだね」と過去に何かあったかのような発言をする。しかし小町はこのみを知らず、知らない人に説教されてただ怖い思いをするだけであった。
自分のことを忘れた小町に対し、ショックを受けるこのみ。果たして本当に彼女は小町の知り合いなのか? はたまた勝手に小町と古い付き合いであると誤認し、知らない人に説教するヤバい女なのか? その真相は4話先の補習回で明かされるのだった。
私たちの出会いなんですけど〜
「やっと思い出してくれた?」
「あっ」
「ワイロ作戦が成功した唯一の人間!!!」
このみと小町の、本当の出会いは小3のとき。宮前という名字が「宮でん」の「前」で家来にぴったり、という理由から家来に任命しようとする。このみも最初こそ断るも、500円玉を差し出され欲に負けたのだった。
家来という名のパシリにされるこのみ。友達らしいことをしたい。その想いは叶わぬまま、その後すぐに転校することになった。
「私をさんざん家来扱いしといて新しい友情育んでるとか、幸せになれると思わないでよね」
幼少期の恨みが窺える発言で、ここだけ見れば小町も読者も、このみは小町を嫌ってると思うだろう。しかし、小3から今に続くまでこのみの心には、幼い小町のある言葉が残り続けていた。
「あなた転校が多くてなかなかお友達ができないらしいじゃない」
「わたくしの家来になればさみしい思いをせずにすみますわよ」
このみは作中の描写から、小3から今のいままで友達らしい友達がいないことがわかる。いわゆるぼっちなのだ。このみは転校後、小町が陰キャ姫と呼ばれ始めたのを聞いていた。つまり、小町も学校になじめずぼっちなのだろうと、このみは想像していた。しかしフタを開けてみれば、小町のまわりにはすでにななど、吉岡るる、高山萌がいた。
「(私を差し置いて他の友達作るなんて超むかつくもん)」
小3のわずかな期間、姫と家来の関係だったこのみと小町。あのときの思い出は良くも悪くも、このみの中に存在し続けていた。
ぼっちで陰キャ同士。気持ちがわかるのは私だけ。なのに私と違って、友達に囲まれている。
「小町が友達になりたいぐらいのリア充」を目指し、今度こそ「対等な友達」になるため、今日も頑張る宮前このみであった。
一緒にしないでほしいんですけど〜
補習回でこのみのきつい発言を受けたせいか、小町はこのみとはちあうと露骨に嫌な反応を見せる。しかし、ぼっちで陰キャ同士という性質。過去の自分の境遇に近いこのみに対して、何か思うところもあるようだ。
例えばこのみが「いいよね小町ちゃんは、なんにもしなくても優しい人が周りにいてさ」「私なんか…これでも結構頑張ってるのに…」と弱音を吐くと、「(あなただってきっかけがあれば…)」と心のなかで優しそうに、過去の自分と重ねる台詞がある。(もちろん絶対に声には出さないが……。)
これはバレーボール練習回で、「わたしなら報われない努力をしている人間を見たら自然と笑みがこぼれてしまうけど……」と発言していた小町からは想像できないだろう。体育祭を経て成長した小町だからこそ、なかなか報われないこのみに対して最悪な笑みをこぼさず済んだのだった。
また、小町以外の文化祭メンバーが、小町に隠れて集合していたのを見つけた際には、このみと小町両方とも「悪口大会」だと勘違いしていた。
陰キャらしいネガティブな想像をするところも、似たもの同士である。
そろそろ家来呼びやめてよね
小町は幼少期のなごりから、このみを家来と呼んでいる。それに対し、このみは小町にちゃんと名前で呼ばれたいという描写が見られる。どうやら彼女のなかでは、500円を返済すると家来呼び卒業との認識らしい。
それに対して小町は間違った下の名前で呼び、このみを怒らせている。何度も呼び間違えるため、もはや二人のお決まりとなっている。
名前呼びに関しては4巻収録予定のお話、このこまバレンタインデー回で掘り下げられている。このこま好きには読んでほしい回だ。
余談なんですけど〜
補習回の扉絵は「麦わら帽子にワンピースを着た小町が、ひまわりを持ち、このみと向き合う」という絵になっている。
ひまわりの花言葉は「私はあなただけを見つめる」。
しかし、小町は正面にいるこのみを見つめず、目をそらしている。
このみは背中だけ描かれていて顔が見えない。なので、小町を見つめているかどうかはわからない。ただ、小町に会うために編入までしてきた彼女の気持ちを想像すれば……
「私はあなただけを見つめる」は、ひまわりの花言葉の一つだ。ひまわりの花言葉は他にもあり、本数によっても変わる。小町が持っている本数は3本。その花言葉は「愛の告白」だ。
たしかに小町は物理的に見つめてはいない。いないが、これは一体……
3巻とらのあな特典、チェキ風イラストカードでは、文化祭でメイド服を着た小町とこのみのツーショットが拝める。手でハートの片方を作り、小町と合わせようとするこのみと、ふつうにいいねポーズをする小町は、例の有名な写真を彷彿とさせる。