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概要編集

天然痘ウイルス(ポックスウイルス科)に似た「エムポックスウイルス」による感染症。かつては「サル痘」や「サルポックス症」と呼ばれていた(名称変更の理由については余談の項を参照)。

ウイルスは1958年にヨーロッパのサルから発見され、1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)でヒトでの初めの感染が確認された。


コンゴ盆地型(クレードⅠおよびⅠb)と西アフリカ型(クレードⅡおよびⅡb)の2系統に分類されており、致死率はクレードⅠが10%、クレードⅡが1%となっている。


感染経路編集

アフリカに生息するリスなどの齧歯類をはじめ、サルやウサギなどウイルスを保有する動物との接触によりヒトに感染する。

また、感染した人や動物の皮膚の病変・体液・血液との接触(性的接触を含む。)、患者との接近した対面での飛沫への長時間の曝露、患者が使用した寝具等との接触等によっても感染する。

皮疹の痂皮をエアロゾル化することで空気感染させた動物実験の報告があるものの、実際に空気感染を起こした事例は確認されていない。

※厚労省ホームページより引用


潜伏期間と症状編集

ウイルスの潜伏期間は通常7日〜14日間で、潜伏期間の後、発熱頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1日〜5日間ほど続き、その後発疹が出る。


治療法編集

基本的には対症療法となっているが、欧米では「テコビリマット」と呼ばれる飲み薬が治療薬として承認されており、日本でも同薬を用いた特定臨床研究が実施されている(ただし日本では未承認)。


ワクチン編集

天然痘ワクチンの接種(種痘)が効果的とされており、その発症予防効果は85%と見積もられている。

こうした高い発症予防効果に加え、後述した世界的感染拡大も相まって、2022年8月2日に厚生労働省はエムポックスの発症予防に天然痘ワクチンを使用することを正式に承認した。

なお、日本ではかつて天然痘ワクチンの接種義務があったものの、1976年を境に接種は実施されていないため、45歳以下の世代は十分な抗体を持っていない可能性が非常に高いとされている。


エムポックスの世界的流行編集

2022年~2023年の世界的流行編集

2022年には欧米などを中心にエムポックス(クレードⅡ)の感染が拡大し、WHO世界保健機関)は7月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

そして7月25日、東京都において日本で初めての感染者が確認された。2023年から日本国内においてエムポックスの感染者が増加しており、2020年から流行して現在もなお流行を繰り返しているCOVID-19の存在もあって不安視されていたが、同年に世界レベルでの封じ込めに成功した。


2024年~の世界的流行編集

2024年にはゴンゴ民主共和国を中心にエムポックス(クレードⅠ)の感染者が増加し、スウェーデンやタイなどにも感染が拡大している。今回流行しているのは致死率・重症化率の高いクレードⅠの中でも従来型とは異なる新型(クレードⅠb)であることも考慮し、WHOは8月14日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。

なお、現時点で日本国内では感染者は確認されていない。


余談編集

前述したようにこのウイルスが世界で最初に発見されたのはサルであったためこのような名称となっているが、本当の自然宿主はげっ歯類(ねずみ・リスなど)である。

また、この感染症の世界的感染拡大に伴いかつて使用されていた「サル痘」という名称は差別的との批判も強まったため、これを受けてWHOは2022年11月に現在の名称に変更することを決定した。


関連タグ編集

四類感染症 サル痘


参考リンク編集

厚生労働省ホームページ「エムポックスについて」

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