※注 意 第100部では過去の部のキャラクターも登場します。解説にあたって現在商業連載中の『ニセモノの錬金術師』のネタバレが不可避な点をご了承ください。
概要
杉浦次郎氏がpixiv上で発表した『ニセモノの錬金術師』の続編。
第1部から遠い未来を描いた物語で、3〜99部と銘打たれた作品は現在発表されていないが、多くの読者が間の部の存在しない記憶を幻視した。
基本的に主人公のパラケルススの視点でのみ話が展開した第1部と異なり、複数のパーティーの視点で描かれる群像劇となっている。
流血沙汰が民衆の娯楽となり、第1部では一般的だった錬金術という言葉も忘れ去られ「大昔の人間の技術で作られたすごいもの」と扱われる技術の断絶が起きてるといった荒廃した世界観となっている。
あらすじ
前人未到の巨塔、世界随一のダンジョン・『ゾディアックタワー』。
人々はこの塔で行われる冒険を残酷な見世物ショーとして楽しんでいた。
ある日、塔の魔獣・ミノタウロスの部屋に『報酬』としてタワーに置き去りにされた有翼人を助けに行こうと、冒険者のウルフは妹のマルゴットからせがまれていた。到底レベルが足りないと引き留めようとしたところ、地球から転生したサクヤからパーティーに加わりたいと話しかけられる。
一方、タワーでは前回の『報酬』だったエルフの女を助け出した男が攻略を続けていた。
タワーの最上階。更にその上の天上を目指して……。
冒険者
ウルフ隊
ウルフの性格から到達階層6の弱小パーティー。常に変化を続ける塔のマッピングも行っている。有翼人を助けるため、20階到達を目指す。
・ウルフ・アクスマン
Lv8の術師。面倒見の良いリーダーだが極度の慎重派。それが過ぎて良かれと思ってしたことが時として仲間を傷つけることもある。
元は大きな農家の末の息子だったが、農作業を効率的にするのに求められる魔術等に秀でていなかった事から養子に出されたのでマルゴットとは義理の兄妹。
養子に出された経緯もあって、術師と言っても魔術の威力も高くはない。
実はシスコンで、初めて会ったマルゴットの瞳を何よりも美しい宝石だと感じて以来、彼女を守らなければと思い続けているので、冒険の手助けをするための知識を勉強して身につけた。
他のパーティーの冒険者から舐めた態度を取られているが、それすらも受け入れた上でその知識を以って自他の窮地を切り抜ける。
・マルゴット・アクスマン
Lv12の戦士。
幼少期から憧れていた数々の冒険譚に突き動かされて家を飛び出して冒険者となり、まだ18歳ながら身体にはこれまでの冒険で負ったいくつもの傷跡が刻まれ、それは彼女の誇りであると同時にコンプレックスでもある。
村一番の力持ちだった父親譲りの怪力の持ち主。
ブラコンで義理の兄であるウルフに求愛を続けているが断られ続けている。
・ヴィプケ・フライバーガー
Lv21の魔術師。
213歳の幽体エルフ。常に浮遊している。
高い魔力を有する幽体エルフの中でも、特に優れた魔力を持った一流の魔術師。少女の姿はその魔力で作り上げたもの。
自信家で口の悪い皮肉屋だが、自分が寿命のない存在であるのに対し、短い命でありながら仲間を助ける為なら自分をなげうつことができる人間の輝きに強いあこがれを抱き、自分もそのようになりたいと思っている。
・サクヤ・ヒラサカ
Lv98の地球から転生した異世界人。
ある日、スキルを持ったまま地球に帰還した「血塗れの死神」を名乗る男に数人の人間と妹のアキと共に捕らえられ、生き残った1人だけを帰すという悪趣味なデスゲームに巻き込まれる。
「死神」に聞かされた異世界転生と帰還の方法を基に相手への復讐を宣言しながら自らトラックに跳ねられ、オーパーツを全て集めて地球に戻る事を目的にウルフ隊に入る。
自身の「怒り」を刀身から放つ炎に変化させる『怒髪天』が主な武器で、「死神」への怒りは塔内の広大なフロア一室を焼き尽くす程。
高レベルの理由はその火力を評価されての事だが、それ以外に秀でた能力は持たない至って普通の女の子。
所有するオーパーツは『怒髪天』と『畏丸』、『ワープリング』(ウルフから譲渡)
『謎の男』隊
ある目的で魔獣を「説得」する事による攻略を続ける。塔に入れる最小人数は3人のはずだが、内部で仲間になったドルシラを除けば1人しかいない。
・謎の男
たった1人で塔の攻略を続けるフードの男。
かつての見る影もなく技術の失われた世界と人々に悲観している。
第一質量を深く理解しているため、魔術と錬金術双方の扱いに長け、かつては実現不可能と言われた金属・オリハルコンの錬製もできる。
正体はショゴスと精霊様が一体となったケルスス。彼にとっては姿も名前も借り物であるため、自ら名乗る場面はない。
宇宙は『右手(ライトハンド)』。
右手に触れた相手を1人だけパートナーとし、自分が生きている限り離れることを許さず、先に死ぬこともできなくなる。
彼は実質死なないため、そのパートナーも死ななくなる。解除には相手の同意が必要。
・ドルシラ
前回の『報酬』だったエルフの女。
垂れ耳種(ロップイヤー)と呼ばれる、かつて人間の手で品種改良されたエルフで、体内に魔力を溜め込む器官が発達している一方で自分で使用する為の管をあえて細く造られているため、魔術師達に魔術を使うためのエネルギータンクのような扱いを受けていた。
ケルススのマッサージによって体内に巡らせる魔力の導管が活性化した結果、膨大な魔力を扱えると共に、第一質量を深く理解したケルススと照応した事によって魔術と錬金術を操れるようになった。
今まで塔の外の世界で虐げられ続けたため、助けてくれたケルススに想いを寄せ、彼と共にあることが全ての価値観となっている。
アレックス隊
最高到達階層は70
魔物や生存者からの戦闘による略奪を主目的としたパーティー。
ウルフ曰く冒険者同士の戦いが禁止されてなかったら同時に入塔はしたくない。
・アレックス・ダイナソー
Lv89:戦士。
隻眼でスキンヘッドの大男。
粗暴な性格だが、イスカの仲間に対する攻撃が「義」によって返されている事に目を失いながらもいち早く気がつく冷静な判断力も持つ。
見逃されるのと引き換えに契約した、ロビンの蘇生を期に心境に変化が芽生える。
・パラ・サウロロフス
Lv50:回復師
神官でもあり、女神フローラへの信仰から照応効果で自身の内部にフローラの力を顕現させ、強い霊力を行使する。
・ステゴ・アバルキン Lv51:戦士
・エドモント・ウグルナラク Lv63:戦士
・プテラ・マイナス Lv50:戦士
メジカ隊
最高到達階層は10
お宝集めを主目的としたパーティー。
金目の物を見つける「目」は冒険者の中でも指折り。
・メジカ・トランスピード
Lv33:戦士。
したたかな性格で自分の利益のためにウルフ隊を騙す形でリッチの囮にすることを計画する。
以前も同様のやり方で他のパーティーと揉め事を起こしたようだ。
・カリブー・ディンドン Lv11:戦士
・ジラフ・ネネック Lv9:魔術師
アレフ隊
最高到達階層は53
遺跡調査を主目的としたパーティー。
・アレフ・オリフント
Lv35:魔術師。
地下の最下層の墓所に到達し、失われた知識を発掘しようとしたところをゴールディに咎められる。
それに対して攻撃を加えたことでツユリから墓荒らしと認定される。
・ハイラックス・オリフント
Lv15:斥候。
アレフの孫。リッチであるツユリの出現に対し、最下層から出口の第1階層を目指して逃走を図るが、「怖気」による錯乱から数日間逃げ続けて第8階層にまで到達してしまう。
・マナティ・クレリンコ
Lv17:魔術師。
蘇生したゴールディ達に対し投降をする。
ドレイク隊
反逆者討伐の為に国から派遣されたパーティー。その実力から高い人気をほこるが、この世界においてそれは残虐な振る舞いができるということでもある。
・ドレイク・ワタナベ
魔物の討伐数世界一を誇るほど強く、美形であることから若い女の討伐数も世界一と称される。
彼の子供だけで小さな国が1つ作れるほどだと言うが養育費は支払っているらしい。
冷静な隊のリーダーで状況判断能力に優れ、オーパーツの特性を活かせるよう準備にも余念がない。
現在の世界の一般的な価値観に違わず奴隷(生存者)は見世物にされて当然と考えている。
オーパーツは『不偏の剣』
・レッドキャップ・タケモト
犠牲者の血を拭った事でその名の通り赤く染まった帽子を被った男。
2つのオーパーツで生存者を確実に見つけ、恐怖に陥れていたぶってから血祭りにあげる。
彼の拷問配信には、それを見た塔の残酷ショーの司会者も3回吐いたという。
オーパーツは『狩人の目』と『テラーイーター』
・カイメラ・ササキ
オーパーツの力で様々な生物の身体を自身に貼り付けた怪力の持ち主。その外見と言葉を発さないことから、何を考えてるのか本当にヒトなのかもわからないと言われている。
持ち帰った「獲物」に様々な動物を継ぎはぎし、苦しんでいるのを見るのを楽しむという性癖をサコガシラに暴かれ、許しがたいとみなされた彼によって粛清され、隊で唯一死亡する。
オーパーツは『継ぎはぎお裁縫セット』
塔の住人
・イスカ・ペタン
『生存者(サバイバー)』のリーダーのように振る舞う少女。その姿は欠損した左目を除きノラと生き写しである。
塔の中で生まれ育ったため、外の世界の事は何も知らない。
今までは怯えて隠れ住むしかなかったが、かつて「呪術」そのものと称された彼女達の大母が目覚めたことで本来の戦い方である「義」=呪術を獲得。塔を「生きるもの(サバイバー)の国」とする事を宣言するが、それに伴い扱いが生存者から反逆者(レヴェル)へと変わり、国から報奨が出る討伐対象となってしまう。
「義」の考えに基づき、受けた恩を返し必要以上に相手への攻撃をすることも良しとしない優しい性格の持ち主。
他の仲間にカナリーとロビンがいる。
・大母(おおはは)
奴隷たちの守り神『大悪霊』ノラ・ペタン。
数百年か数千年前の死後、自らを奴隷とした国に報復するために悪霊となって荒らし周り、対抗できる聖職者も他の呪術師もいなくなった結果、呪術と呼ばれる存在そのものとなってしまった。
その後、地下深くの墓所へ封印されると共に夥しい数の生贄の魂と混ざりあったことで弱体化。永い時が経って封印が弱まっても墓所の上に出現した塔を司る女神フローラの影響で復活ができなかったが、攻略を進める謎の男を女神フローラが察知した隙をついて現世に再び現れた。
肉体を持たないため、イスカの身体に間借りしている。
・サコガシラ・ペタン
『偽物の錬金術師』と称され語り継がれる大英雄。かつてのパラケルスス・サコガシラ。
自身の宇宙『好奇』の持つ、強く心惹かれた対象の善悪関係なく、その能力を引き伸ばす特性から、妻のノラを一国を滅ぼす大悪霊に、娘のダリアを『星砕き』にしてしまったことを悔やみ、死を装って塔の地下深くに潜り、誰とも関わり合いにならないように永い時を過ごしてきた。
塔の下から見ていた残酷ショーと悪趣味な観客に心を痛め、タイムマシンで過去の悪人と自分を殺すことで根底からの世直しを計画している。
不眠不休での研究をするため、自身に様々な改造を施す事で寿命を克服。身体中に施した術式や魔法陣に魔力を流す事による『自動操縦』に加え、魔術や呪術の取得もしているため高い戦闘能力を得ている。
「ペタン」を名乗るのはこのような経緯があったから……
かは定かではない。
・『星砕き』のダリア
サコガシラとノラの娘。
過去に城を吹き飛ばした跡地にダリア湖として名を残しているが、サコガシラの『好奇』の影響で星を砕くまでに至った。
・アサリナのダリア
サコガシラとノラの娘となった「ダリア」のコピーの内、鏡の世界のアサリナ村に住むダリアで特に幼児性が強い。自分が誰かの「コピー」である事に耐えられない。
サコガシラに強くなつき、共にタイムマシンで過去に戻ることで2人きりの家族になることを夢見ている。
・アリシアのローズ
アサリナのダリアを探していたローズ。
彼女の抱える孤独感を知り、それに寄り添おうとするが……
・ツユリ
強力な死霊術師が死してなお自我を保った不死の最高位(アンデッドキング)・リッチ。
包まれた者の精神を恐慌状態にさせる「怖気」の範囲は塔の外周にまで及び、触れた相手の生命を奪う「死の雲(デスクラウド)」を巧みに操り攻撃だけでなく防御にも使う。
墓荒らしをどこまでも追い回し、嬲り殺す「弱いものいじめ」に唯一の快楽を見出しているが、それ以外のことをせずにあまりにも永い時をぼんやりとすごしたためバカになっている。
・ダークナイト
強力な死霊。「ダチのダチ」であるツユリの行動には頭を痛めているが見捨てることができない。
戦闘慣れしているため、ツユリを見逃してもらう見返りとしてサクヤに『怒髪天』を振るう際のアドバイスを伝える。
・ゴールディ
鏡の世界の住人たちのまとめ役。
ツユリのコピーだが、永い時を経て精神が魔物同然となっているオリジナルには頭を痛めている。
・エブリン
サコガシラの造ったゴーレム型タイムマシン。
単眼の猫のような姿をしている。
実は1部でも名前が登場している。
天上の存在
エーテルの満ちた、時間の流れ方にもほとんど意味がない空間の存在。
顔のついた太陽を通して下界を眺めてきた。
・偽なる神
かつて地球から弾き出され、この「ニセモノの世界」を作り上げた創造主であるエーテルの集合体。
世界の住人が独り立ちする「子離れ」を望みながらも、現在の住人達の様を醜く気持ち悪いと感じ続けていた。ケルススが天上の座に挑むのを機に、人型の姿を人々の前に見せるとその勝負を受け、ケルススが敗北すれば世界を新たに作り直すことを下界へ宣言する。
『言葉』にするだけでそれが実現する言霊を操る。
・ヘルメス・トリスメギストス
人間に錬金術を授けた始祖エルフ。
かつてパラケルススとショゴス(ケルスス)によって身体を回復されたココ。
「家族」であった彼らへの想いは今でも持ち合わせており、欠けた片耳とギザギザの歯はその現れ。
・アレウス
人間に魔術を授けた始祖エルフ。争いと狂乱の神。
転生してきた地球人に2つのオーパーツ(スキル)を与え、各オーパーツに宿っていたアレウスの「本体」。分霊とは別人格で天上の座でマルゴットと戦う。
・バルカン・ポッド
全ての天の国の武具の作製者の始祖エルフ。炎と鍛冶の神。
「神」に遠く及ばない自分に負けるようでは、挑戦する資格もないとして選定者の役割を名乗り、天空の座の入口でサクヤの前に立ちはだかる。
第2部では錬金術協会の達人(アデプト)として地上にいた。
・デメテル・テスモポロス
神の言葉が届き切らぬところへ掟を届ける役目を持つ。
『神の言葉が記された本』を読み上げることで、擬似的に神の言葉同様に言霊に力を与えられる。
・リロイ
ミノタウロスの間に捕らえられていた有翼人。
本来は天の使いで歴史の記録などを任された存在。
人の言葉は話せないが、ヴィプケの霊糸を介して意思疎通が可能。
・アレウスの分霊
『ワープリング』に宿る分霊。
『力』の中という特等席で能力の所持者のバトルを見てきたが、あまりにも永い時が過ぎて最近は飽きてきたと言う。
ウルフから冒険者になることを勧められ、自分が囚われた『ワープリング』の破壊を待ち望む。
その他
・血塗れの死神
異世界から地球に舞い戻ってきた転生者。
全ての能力を集めた特典でそのままの状態で帰還した。
「日の光の元で使う」または「力を知る他者が日光に当たる」事で、その力が失われることから、夜間に捕えた人間を悪趣味なデスゲームに巻き込みストレス発散をしていた。
サクヤにとって妹と自分の人生を狂わせた仇。
・ヒラサカ・アキ
サクヤの妹。
「死神」のデスゲームに巻き込まれ、生き延びるために男性を手にかけてしまう。
サクヤが異世界へと転生する為にトラックへ身を投げたことで最後の1人として生き残る。
サクヤにとってその存在は地球に戻る最大の目的であり、『怒髪天』の炎すら消し去る安らぎの象徴でもある。
・司会者
巨大モニターで塔内部の映像を中継する管理組合の1人。
1つ目のローブを身にまとい、残酷なショーを面白おかしく煽り立てるように実況する。
その露悪趣味から、サクヤはたとえ自分が称賛されるような内容でも見たくないと嫌悪感を示している。
用語
・ゾディアックタワー
およそ100年前、奴隷同士を戦わせる闘技場を増築させた結果誕生したと伝わる塔。
塔自身が構造を変えて成長をし続けるため、正確な内部構造を把握している人間は誰もいない。現在は200階層あると考えられている。
塔の中には様々なモンスターの他、12体の不死のボス魔獣がおり、最上階まで到達した人間は居ない。
入場には最低3人のパーティーが必要。その際に支給されたワームスライムが見た映像は塔の管理組合のスクリーンに送られ、面白いものであれば本放送として中継されることもあり、家庭用のスクリーンで特定の冒険者の映像を楽しむファンもいる。
挑戦する冒険者の目的は内部にある宝を求める者、かつての技術を伝える『遺物』を探す者と様々だが、人々は魔獣と戦う冒険者、そしてなぶりものにされる生贄として放たれた奴隷たちの流す血をなによりもの娯楽として見ている。一方で冒険者同士の戦いは禁じられている。
断じてゾルディックタワーではない。
・女神フローラ
ゾディアックタワーに住まう女神。
冒険者がおおよそ死なずにすむ探索階層を示すレベル(推奨階層)の啓示などの恩恵をもたらし、内部で死亡した冒険者の魂をしばらくその場に留めて蘇生すら可能にする。
塔に入る冒険者はみなフローラに誓いを立て、それを破る事はできない。
血の流れを伴う本気の戦いを何よりも好み尊ぶ。
ジェミニとの戦いで謎の男がフードの下から覗かせた顔を見て「我が父の偽物」と詰り、ドルシラの魂共々消し飛ばさんとするほどの激しい敵意を見せるが……?
・不死の魔獣
塔のボスクラスの魔獣。全12体。各部屋には黄道十二星座のマークが記されている。
倒すことは可能だが3日ほどで復活を遂げ、その度に『祝福』という新たなランダムスキルを獲得する。
レベルが当てにならないほど強く、安心できる攻略には「魔獣のいる階層×5レベル」ほどの人材が3人は必要とされる。
しかし、上階に進むのに倒す必要はなく、それが可能なパーティーにとっては『報酬』が割に合わないため、残酷なショーが止められることはない。
人を憎み人と争いあうように造られている。
・生存者(サバイバー)
残酷な見世物ショーのために塔に入れられた奴隷たちの内、魔物や冒険者から生き延びたコミュニティ。
傷つける事が視聴者を喜ばせるショーとなるため人間扱いされておらず、冒険者からは身を隠すことが多い。
反抗的な発言があれば『反逆者(レヴェル)』とみなされるようで、国から報酬が出る討伐対象となる。
もっとも、泣かせる、怒らせる事でも報酬が出ることから、それはより多くの人に残酷ショーの参加を促す目的でもあるようだ。
・『場違いな遺物』(オーパーツ)
現在の人間には作れない過去のすごい技術で作られたものを『遺物(アーティファクト)』と呼ぶが、それを上回る力を持つアイテム。第一部でいうスキル。
すごい力を持つ反面、一つのことしかできないため相手に能力がバレると対策されることもある。
第一部のように相手から奪う他に各地のダンジョンに隠されてるのを入手することも可能。その際にアレウスの残留思念が語りかけてくるのも同様だが、今作ではひどくヨボヨボになっている。
冒険者たちの間で存在が語られているためか、入手すると老人(アレウス)が語りかけてくる事をウルフは伝聞で知っていた。
オーパーツ
・業物『怒髪天』
そのままでは何も切れないナマクラ刀。
持ち主の怒りの力に応じて刀身から炎を吹き上げ刀の切れ味と持ち主の能力を底上げする。
活用するにはアンガーコントロールが求められ、サクヤは発動には「死神」への復讐心を、鎮めるのには妹との思い出を使用している。
・業物『畏丸』
通常時はナマクラ刀。
所有者の恐れの感情に応じて武器と所有者の能力が上昇する。
上がる能力は恐れの質に依存する。
「恐れ」は生物の生存に根差した感情であるため、『怒髪天』が糧とする「怒り」以上に戦闘状態の維持が困難。
・ワープリング
一度行った場所であれば一瞬で移動ができる指輪。
手に持ったものも一緒に瞬間移動させられるが、距離など移動に使う力に応じて『ワープ酔い』が激しくなる。1人が酔わずに移動できるのは10m程。
念ずることで体内に出し入れが可能。
・ライフストッカー
箱につながったコードの先の黒い針を人体に刺すと命を吸い始め3分ほどで苦しみのない死を与える。白い針を刺すと命が注入されて生き返ることができるが、魂や肉体の損傷度では失敗するか通常より多くの命が必要になる。
ストックできる命は255まで。
塔内部では死亡後も魂が留まるため、冒険者はこれによる蘇生が可能。
死体を蘇生可能な状態まで整える蘇生師という仕事の人間が所有している。
蘇生にかかる金額は死体の状態で変動する。
・狩人の目
生物・無生物問わず〝ターゲット〟を思い浮かべながら目を凝らすと、その対象とタイムリミットが表示される。
時間はおよそ能力の使用者がターゲットにたどり着くまでにかかる時間で、そのタイムリミットまでにタッチができないと、能力の使用者は時間に応じたダメージを受ける。
能力を使用するとタッチするまで解除はできない。タイムリミットは能力の使用者の体感時間なので、時間を歪められても影響はない。
・継ぎはぎお裁縫セット
念ずると手から出てくるお裁縫セット。これを使うと、どんなものでもくっつけることができる。
・テラーイーター
周囲にいる者の「恐怖心」により武器の切れ味と所有者の身体能力が増すナイフ。
付与効果として『怖気(小)』
・不偏の剣
持ち主とそれに敵対する者たちの戦闘能力は均等になる(32体まで)。
ただし、剣が与えられる力には限度があり、身体能力以外は判定されない。
ドレイクは常時12人の屈強な戦士と敵対する事で、他の相手と敵対した時の戦闘能力を底上げしている。
・魔法剣ハッピーくん
持ってるとどんな状況でも幸福感に満たされる。
・業物『凪』
平常心でいればいるほど持ち主の身体能力と武器の威力があがる。属性は冷気。
不死の魔獣
・アリエス(♈️)
第一の不死の魔獣。金毛の羊。
広大な草原の部屋に100体(オス10メス90)存在し、「全てのアリエスを目視で数えきった者は眠りに落ち、部屋を出るまで目覚めることはない」という固有能力を持つ。メスは普通の羊の姿をしているが、オスは縦に複数並んだ目と横に裂けた口を持つ化物のような姿をしている。羊と言っても雑食性で、眠りに落ちた冒険者は食べられてしまうこともある。
メスは気性が大人しく多くの冒険者に乳を搾られる搾乳所が室内に設置され、好戦的なオスも力比べに勝てば毛皮を刈らせてくれるだけでなく、殺せばその肉は地上ではありえないくらい美味く精がつく。
第一階層ということもあって対策がなされた魔獣で、部屋も補給地点のような扱いをされている。
それでもメスだけになると乳を出さなくなり、何よりも肉を得るために殺せばそれだけ頭数が減り、「全頭を目視で数えきる」条件を満たしやすくなると同時に全滅させることが困難になるため、室内には殲滅用ゴーレムが備え付けられている。
・ミノタウロス(♉)
第20階層のボスで第二の魔獣。
ウルフ隊にとっては今回の冒険の目的であるラスボス。
知性を感じさせない獰猛な性質で、女を犯す事しか考えておらず、その対象は生きてなくても構わない。
下半身の動きは鈍重ながら、斧を振るう上半身の攻撃は素早い。
『報酬』の障害として前回はエルフの、今回は有翼人の前に立ちはだかる。
・ジェミニ(♊)
女の姿をした第三の魔獣。
相手と瓜二つの姿になることで能力の模倣と共に照応効果を発生させてジェミニが受けたのと同じダメージが返ってくるため、むやみに傷つけられなくなる。
更に自身は死んでも甦り、その事に躊躇もないのでノーリスクでの自爆戦法まで可能としている。
暴走したドルシラの魔術からフードの男に助けられた事で塔が始まって以来の「敗北」を認める。
・レオ(♌)
獅子頭人身の魔獣。
力こそ至上とする、戦いを重んじる武闘派。
魔力量こそ人並みながら、ずば抜けた筋肉密度によって純粋に戦闘力が高い。巧みな剣技でケルススと激闘を繰り広げるが、共にドルシラに制圧される。
作者からのお願い
現実のトラックに
ぶつかっても異世界にはいけないので
トラックにぶつからないでください。
第2部や『神引きのモナーク』の描写ではあらゆる時代において始祖エルフ・カロンが運転するトラックにはねられる必要があると思われる。